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ウガンダの「SNS税」が議論を呼ぶ
7月に入り、興味深いニュースが飛び込んできた。アフリカのウガンダで、SNS利用に対する課税が始まったのだ。BBCの報道によると、いわゆる「SNS税」の対象は、FacebookやTwitterなどのソーシャル・メディア。SNS利用者は1日あたり約5.7円を払わなければならない。
政府が税金を課す目的は、一般的に税収増加を狙うこともあれば、何らかの政策実行手段のこともある。ウガンダのヨウェリ・ムセベニ首相が「ソーシャル・メディアがゴシップを広めている」と主張していることから、このSNS税には後者の目的も含まれるはずだ。
しかし、インターネットやSNSの利用率が低そうなウガンダで、SNS税に効果などあるのだろうか。
そこで、米国の調査機関Pew Research Centerから出されたレポートをみてみよう。調査対象にウガンダは含まれていないが、さまざまな先進国と発展途上国のデータから、発展途上国でSNSユーザーが急速に増えていることが読み取れた。
世界のインターネット利用率
発展途上国で増えるインターネット利用
まず、インターネットとスマートフォンがどれだけ利用されているか確認する。
「『インターネットをときどき使う』または『スマートフォンを持っている』」と答えた人の割合を新興国および発展途上国19か国で集計し、中央値を求めたところ、2013年から2014年は42%、2015年から2016年は50%、2017年から2018年は64%と、着実に上昇している。一方、先進国17か国の中央値は、2015年から2016年が86%、2017年から2018年は87%で、飽和状態にある。
全体的には、先進国が伸び悩み、発展途上国が成長した影響で、両者の差は小さくなってきた。
サハラ砂漠以南は空白地帯
世界的にはインターネットを使う人が順調に増えているが、利用率は地域によって大きく異なる。傾向としては、北米、欧州、アジアの一部地域の利用率が高く、それ以外の地域が低い。特に、サハラ砂漠以南のアフリカ各国は、極端に利用率が低い。
インターネットは豊かさの証し
各国の経済状況を条件にして利用率をプロットすると、貧富の差と技術に対するアクセシビリティの関係が浮き彫りになる。国民1人当たりのGDPを横軸、「『インターネットをときどき使う』または『スマートフォンを持っている』」人の割合を縦軸にしたグラフで、豊かな国ほど利用率が高い傾向にある、という結果が得られた。
世界のSNS利用率
発展途上国の人はSNS好き
次に、先進国17カ国と発展途上国19か国のSNS利用率をみる。先進国の利用率は、2015年から2016年が61%、2017年から2018年が60%と、わずかながら低下した。これに対し発展途上国は、2013年から2014年が34%、2015年から2016年が38%、2017年から2018年が53%と、先進国に迫る勢いで拡大している。
SNS利用率は、インターネット利用率に比べて先進国と発展途上国の差が少ない。つまり、インターネット利用者に限ると、発展途上国のSNS利用率は比較的高いことになる。
先進国のSNS利用率は意外と低い
SNS利用率を国別にみると、インターネット利用率と同じく地域差が表面化する。全体として、中東、北米、ロシア、オーストラリア、中国、韓国、南米の一部が高い。中東のヨルダンはSNS利用率が75%だが、インターネット利用者に限るとSNS利用率は94%もある。同じような傾向は、フィリピン、インドネシア、レバノン、チュニジアでもみられる。
意外なのは、先進国のSNS利用率が必ずしも高くないことだ。たとえば、日本は39%、ドイツは40%にとどまっており、インターネット利用率が比較的高いことを考えると、SNSを利用する人の割合が極端に低い。
SNS利用率でわかる若者の多い国、少ない国
最後に、各国のSNS利用率を年代別でみたところ、予想通り若いほど利用率が高い、という結果だった。
たとえば、日本のSNS利用率は、18歳から36歳が82%、37歳以上が26%。ドイツは、前者が74%、後者が27%。両国の中央年齢はいずれも47歳であり、若者が少ない。そのため、若者のSNS利用率が高くても、全体として日本39%、ドイツ40%という低いSNS利用率になったのだろう。
では中央年齢が若い国はどうだろう。中央年齢が31歳のレバノンは、18歳から36歳が90%、37歳以上が56%、全体だと72%。同23歳のヨルダンは、前者が79%、後者が71%、全体だと75%。やはり、若者の多い国は全体的にSNS利用率が高い。
SNSの利用状況からは、将来活躍する若い層の有無が見えてきそうだ。