長時間労働は働き方改革で減らせるか?現状の問題点や残業対策を解説

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記事の情報は2018-07-10時点のものです。

政府が牽引する「働き方改革」は、長時間労働の問題を解消できるのでしょうか。現状の問題点や政府が行なっている対策を踏まえ、1人ひとりが今からできる働き方改革を解説していきます。
長時間労働は働き方改革で減らせるか?現状の問題点や残業対策を解説

働き方改革で長時間労働が減らせるか?

KAROSHI(過労死)という英単語ができるほど、日本の長時間労働による弊害は問題視されています。長時間労働の問題是正のために、政府は「働き方改革」を標榜し、解決のための施策を行っています。しかし、この取り組みは未だ十分とはいえず、さらなる発展が期待されています。

長時間労働が問題となった背景

そもそも長時間労働はどうして発生するのでしょうか。その背景を3つに分けて解説していきます。

職場の雰囲気

日本企業にはまだまだ「帰りづらい職場」があります。「みんなが仕事をしているから」「上司が帰らないから」など、自分の仕事が終わっていても、帰れない雰囲気が醸成されています。このような職場の雰囲気が長時間労働につながっています。

残業の捉え方

日本企業の、遅くまで残業している社員を「頑張っている」と捉え、残業を奨励する雰囲気・風潮も問題です。こういった雰囲気もまた、社員の長時間労働につながります。

多すぎる仕事量

「仕事量が多すぎる」ことも日本で長時間労働が耐えない要因の1つです。定時で終わる仕事量ではなく、残業前提の仕事量となっているため、長時間労働につながってしまいます。
 

政府の主導の「働き方改革」とは

過労死やうつ病などさまざまな問題が起こる要因にもなっている長時間労働ですが、政府はこの問題に対してどのように取り組もうとしているのでしょうか。

長時間労働是正

働き方改革でもっとも重要とされているのが、長時間労働の是正です。日本はOECD加盟諸国の中でも長時間労働が多い現状となっています。この問題に対して、政府が行おうとしているのが「労働時間に対する上限規制」です。主なものとしては「時間外労働は月45時間、年で360時間まで」という規制があります。こういった対策により長時間労働の是正を実現しようとしています。

36協定

36協定とは、企業と働く側の代表である労働組合が労使間で取り決める残業実施の合意です。36協定は労働基準法第36条に規定され、労働者に時間外勤務をさせる場合は、この協定に基づいた36協定届を労働基準監督署に届ける義務があります。ちなみにやむを得ない事情などで協定での上限時間を超える場合のために、「特別条項」付きの36協定を結ぶこともありますが、これにも適用上限が明確に定められています。

高度プロフェッショナル制度

ホワイトカラーエグゼンプションや残業代ゼロ制度などとも呼ばれる高度プロフェッショナル制度は、残業代ゼロ法案とも呼ばれるとおり、年収1075万円以上の一定の業種の労働者を労働基準法による労働時間の規制の対象外にします。これにより「成果を出せば短時間労働だけで帰ることが可能」などにより柔軟な働き方が可能になります。一方で、「労働者に際限なく残業をさせ、過労死につながる」といった問題も指摘されています。

長時間労働是正のために個人ができること

政府が行おうとしている長時間労働の対策や、その問題点について見てきました。以下では、政府の施策とは別に、個人や各企業でできる対策を解説していきます。

労働時間の上限規制

会社員の場合は、個人で労働時間を調整するのは難しいとは思いますが、企業ベースであれば上限時間を独自に設けることも可能です。就業規則などで、所定労働時間を独自に定めて、より低い上限値を設け、決めた時間を過ぎれば残業はしないなどといった対策も有効です。

休憩の取得

休憩は疲れた体と心をリフレッシュさせ、仕事の効率をアップさせるためにも非常に有効です。休まずやるよりも休んで集中してやったほうが結果として生産性が向上します。仕事の効率の向上は、長時間労働の削減にもつながるので、始業から終業までに一定時間以上の休憩を取るように心がけましょう。

集中する時間を設ける

人間が集中できる時間は、大人でもせいぜい45-50分と言われています。そう考えると、集中する時間と休憩をうまく組み合わせて、リフレッシュをしつつ仕事の効率アップを実現することが非常に重要であるといえます。

働き方改革は個人の意識から

長時間労働が続けば、心身の健康の喪失やワークライフバランスの喪失を引き起こします。
もちろん企業側にとっても、「不要な人件費の支払が発生する」「労働力の喪失」などさまざななデメリットがあり、双方にとってメリットのあるものではありません。

「働き方改革」は一定の効果がありますが、まだまだ解決すべき問題があります。

そこで、私たちが自分でできる働き方改革が大切となります。たとえば、今回説明したような「定期的に休憩をとること」や「集中する時間を作ること」は、個人の生産性を高めると同時に、不要な残業を防ぎワークライフバランスを実現します。そして、これらの個人で行える対策は、生産性の向上や、残業代コストの軽減など、企業にとっても多くのメリットがあります。自分の意識から変えていくことで日本の働き方を一新していきましょう。

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