細田守監督「未来のミライ」には、ジブリの背景美が受け継がれていた

最終更新日: 公開日:

記事の情報は2018-07-16時点のものです。

細田守監督作品「未来のミライ」がいよいよ本日公開。第71回カンヌ国際映画祭・監督週間で上映され、公開前から国内外でも注目を集める作品だが、その見どころはストーリーだけではない。真っ青な空、切なくなるような夕日など、背景の美しさに見る人は目を奪われる。「未来のミライ」で背景美術を手掛けるのは、スタジオジブリで手描きによる技術を磨いてきた制作チームだ。本記事では、そのチームを率いる美術監督髙松洋平氏にお話を伺い、作品について、自身の働き方についてなど語っていただいた。
細田守監督「未来のミライ」には、ジブリの背景美が受け継がれていた

アニメーションにおける背景美術の重要性

本日、細田守監督の「未来のミライ」が公開となった。前作より3年、ファン待望の新作は「過去と未来をつなぐ、家族と命の物語」である。

甘えん坊の4歳の男の子「くんちゃん」と、未来からやってきた妹の「ミライちゃん」が出会い、時をこえた冒険の旅に出る。そこで少しずつ成長するくんちゃんの姿と、はじめて知る「家族の愛」をテーマに、ストーリーは進んでいく。

©2018スタジオ地図

そしてその世界観を作るうえで大きな役割を果たしているのが、背景画だ。印象的な真っ青な空、切なくなるような夕日、木漏れ日、ぬくもりのある部屋。主人公の世界に、見る人を引き込んでくれる。

「エヴァンゲリオン」シリーズ監督の庵野氏は、7月に行われた対談の中で「背景美術がその作品の世界観を決める」と語っている。華々しいヒット作の裏には、その世界を作る背景美術の存在は欠かせないものなのだ。

本記事では「未来のミライ」で美術監督を務める、でほぎゃらりー髙松洋平氏からお話を伺った。スタジオジブリ時代、多くのヒット作で背景美術を担当してきた人物である。

所属する「でほぎゃらりー」の生い立ちとともに紹介する。

スタジオジブリの背景を多く描いてきた髙松氏

髙松氏は、2001年にスタジオジブリ入社後、「猫の恩返し」、「ギブリーズ episode2」、「ハウルの動く城」、「ゲド戦記」、「崖の上のポニョ」、「借りぐらしのアリエッティ」、「かぐや姫の物語」で背景を担当。「コクリコ坂から」では共同美術監督を務め、「思い出のマーニー」では美術を担当した。

細田守監督作品では2012年の「おおかみこどもの雨と雪」で背景を、2015年に「バケモノの子」で美術監督として参加し、今回の「未来のミライ」でも共同で美術監督を務めているトップクリエイターの一人だ。

※残念ながら顔出しはNGとのことで、髙松氏の作業風景をお見せいただきました。

「でほぎゃらりー」は宮崎駿監督の引退から生まれた

髙松氏が所属する「でほぎゃらりー」 は、その多くがスタジオジブリ出身の美術家である。

宮崎駿監督が長編アニメーションからの引退を表明した際、スタジオジブリの制作チームも解散することが決まった。しかしスタジオジブリで正社員だったレベルの高い描き手を、そのまま抱えられるような会社は当時のアニメ―ション業界にはなかったという。

そこで受け皿となる会社を作り、その技術を守ろうと考えたのが、ジブリから退職しスタジオポノックを設立した 西村義明氏だった。

西村氏は ドワンゴ代表取締役会長 川上量生氏、カラー 代表取締役社長 庵野秀明氏へ協力を求め、2015年7月に背景美術スタジオ「でほぎゃらりー」という会社が誕生した。スタジオジブリから受け継いだ手描きの世界にこだわり、技術をつないでいる。