スペキュラティブデザインとは?「問題提起するデザイン」で未来を考える

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RCAの教授であるアンソニー・ダンによって提唱された「スペキュラティブデザイン」。スペキュラティブデザインは問題解決ではなく「問題を提起するデザイン」です。本記事ではその作品や類似概念について詳しく解説します。

スペキュラティブデザインとは?「問題提起するデザイン」で未来を考える

「スペキュラティブ」と「デザイン」

新しい発想の形として注目を集めているスペキュラティブデザイン

「スペキュラティブ」とは日本語で「思索する・推測する」という意味であり、スペキュラティブデザインは「未来について考えるきっかけを提供する」ことを目的としています。

近年デザインのあり方は多様化しており、スペキュラティブデザインもデザインのあり方を模索する中で形作られてきました。以下ではそんなスペキュラティブデザインについて詳しく解説します。

スペキュラティブデザインとは?

そもそもスペキュラティブデザインは、どのように形作られてきたのでしょうか。

スペキュラティブデザインの提唱者は?

スペキュラティブデザインのを提唱したのは、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで教授を務めるアンソニー・ダンです。

1994年同じくスペキュラティブデザインを提唱したフィオナ・レイビーとダン・アンド・レイビーを設立し、97年には博士号を取得、ニューヨーク近代美術館など世界各地の展覧会で作品を発表しています。

スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること
アンソニー・ダン (著), フィオーナ・レイビー (著), 久保田 晃弘 (監修), 千葉 敏生 (翻訳)
¥ 3,240

「デザインと聞くとほとんどの人は問題解決のためのデザインを思い浮かべる」

上記は著書の中でアンソニー・ダンが語った言葉です。

ダンは人口過剰や水不足、気候変動といった問題は解決不能であり、人々の価値観や信念を変えることが最良の手段であると説いています。スペキュラティブデザインはそうした「人々の目を未来に向けさせるためのデザイン」なのです。

スペキュラティブデザインの作品と作者紹介

以下ではスペキュラティブデザインの具体的な作品と作者について解説します。

Wi-Fi無料開放/Superflux

Superfluxはテクノロジーの限界に挑んだ作品を制作することで知られるデザインスタジオです。共同設立者であるアナブ・ジェインは、スペキュラティブデザインのプロジェクトとして「Wi-Fi無料開放」を行ったことで知られています。

ジェインは自宅のWi-Fiが壊れてしまったため、隣人に回線を使われてしまい、回線速度が遅くなるという問題に悩まされていました。その後ジェインは「逆にWi-Fiを無料で開放したらどうなるだろう」と考え、自宅の前に「Wi-Fi無料開放中」と書いた椅子を置いてみました。すると住民たちが集まり、近隣住民同士がコミュニケーションを取るようになったといいます。

今ではスターバックスなどが無料Wi-Fiのサービスを行っていますが、ジェインがこのプロジェクトを行ったのは10年前の事であり、Wi-Fiがまだ街で解放されていなかった時代に「Wi-Fiが無料開放される未来があっていいのでは」という大変斬新な提案でした。

人工臓器「Shenu」/Takram

Takramは東京とロンドンをベースに新しいデザインプロジェクトを発表し続けているデザイン・イノベーション・ファームです。

そんなTakramによって発表された人工臓器「Shenu」は人工臓器を人体に取り入れ、生命維持に必要な最低限のキャンディーを摂取することで1日32ミリリットルの水分で生活できるというものです。

この作品は100年以上先の荒廃した地球を想定しており、安全に飲める水の量が限られた世界で人間が生き残るためのアイデアとして考えられたものです。

「I wanna deliver a dolphin…」/長谷川愛

長谷川愛は東京とボストンを中心に世界中でアートとデザインの活動を行っているアーティストです。

スペキュラティブデザインの作品として発表された「I wanna deliver a dolphin…」は食糧不足と人口増加問題を解決する手段として絶滅危惧種を代理出産し、子どもを産みたいという欲求とおいしいものを食べたいという欲求を満たすというものです。

長谷川はこの作品を通して人間は体内で育てた動物を食べ物として消費できるのか、という問いを投げかけています。