ビジネスの世界においてリーダーシップは重要な要素です。組織として結果を出すためには優れたリーダーシップが必要です。リーダーシップは唯一最適なスタイルはありません。時代の変遷とともに有力なリーダーシップ論も変化し、リーダーシップ論の中には状況に合わせて求められるリーダーシップが違うという理論もあります。
本記事ではリーダーシップ論のひとつであるPM理論について説明します。
PM理論とは
PM理論は心理学者の三隅二不二氏によって提唱されたリーダーシップ論です。その特徴は、リーダーに必要な要素をP機能とM機能の2つに分類して、さらにその強弱によってリーダーを4つのパターンに分類します。学術的に誕生した理論ですがシンプルなので実際のビジネスの場でも利用しやすい理論です。
ちなみに、PM理論のようにリーダーシップを2つの要素に分解して考える理論としては「マネジリアル・グリッド理論」があります。
目標達成機能(P機能)
PM理論はリーダーに必要な要素をP機能とM機能の2つとしています。このうちP機能とは、P機能=Performance機能=目標達成機能です。これは、集団が目標を達成し、生産性を高め、問題解決をするための機能です。
たとえば、営業部を統率しているリーダーは、部署としてノルマを達成するためにいろいろな営業の仕方を考える必要があり、ときには部下を叱咤する必要もあります。リーダーとしていかに目標にコミットできるかを表しているのがP要素です。
集団維持機能(M機能)
M機能とはM機能=Maintenance機能=集団維持機能です。集団維持機能とはチームメイトと信頼関係を構築しながら、チームを統率する機能のことを指します。
たとえば、チームメンバーがうまく調和するようにリーダーとして人間関係を調整したり、メンバー全員の状態を把握してメンタルケアを行ったりして、チームのメンテナンスを行います。
PM理論においてリーダーに求められるのは、目標達成機能と集団維持機能で、どちらが欠けても理想的なリーダーになれません。
PM理論による分析
PM理論ではリーダーの目標達成機能に強弱(良し悪し)の2パターン、集団維持機能の強弱(良し悪し)の2パターンを組み合わせて合計4パターンにリーダーを分類します。それぞれのリーダーにはどのような傾向があるのかについて説明します。
PM型
PM型リーダーは、目標達成ができるし、組織の維持ができるリーダーのことを指し、理想的なリーダー像であると考えられています。目標達成のためにアメとムチを上手く使い分け、組織を活性化させて目標を達成しながらも、組織として統率が取れるのがこのタイプのリーダーです。
Pm型
Pm型リーダーは目標達成ができるけれども、組織の維持ができないリーダーです。いわゆる一匹狼タイプのリーダーで実力はあるので結果は残せます。
しかし、チームの雰囲気は悪く、メンバーが成長しにくいという傾向があり、最終的にチーム崩壊を引き起こすかもしれません。メンバーとのコミュニケーションを意識的に行う必要があります。
pM型
pM型のリーダーは目標達成ができないけれども、組織の維持ができるリーダーです。メンバーが自律的に行動できる人材であればpM型でも成果を上げられる可能性はあります。
しかし、そうでない場合は単なる仲良し組織になる可能性があります。目標達成をするために、メンバー間の仲を取り持つだけではなく、時にはメンバーに厳しいことを言う必要があります。
pm型
pm型は目標達成もできないし、組織の維持もできないタイプのリーダーです。これはリーダーシップとして非常に問題があります。そのリーダーの上司は、リーダーを降格することや、リーダーとして教育しなおすことを検討する必要があります。またリーダー本人としても組織の目標達成と集団維持を積極的に心がける必要があるでしょう。
P機能とM機能、バランスよく伸ばすためには
PM理論において重要なことはP機能とM機能のバランスです。先ほどリーダーを4パターンに分類して説明しました。これらのことから、P機能、M機能どちらが欠けていてもチームが上手く機能しないことがわかります。
P機能だけが強いと短期的に成果が上げられるかもしれませんが、チームがまとめられないので長期的にはパフォーマンスが低下する可能性があります。M機能が強いと職場の雰囲気が良いので組織は維持できますが、メンバーのパフォーマンス以上の成果をあげられません。
リーダーはP機能とM機能をバランスよく伸ばす必要がありますが、どのようにしてそれらの機能を伸ばせば良いのでしょうか。
P機能を向上させる方法
リーダーのP機能を高めるためには、組織として目標を達成するための行動をとる必要があります。たとえば組織として具体的な目標を掲げてそれをメンバーに共有し、その目標を達成するための具体的な行動計画を立てて、それを達成するためのアドバイスを行うのがP機能を伸ばすための方法です。
特にpM型のリーダーは元々、メンバーへの細やかな心配りができているはずなので、メンバー全員の進捗をチェックして、問題が発生していればフォローするのは得意なはずです。
必要なのはリーダー自身が目標に対してコミットし、それを行動ベースに落とし込んで考えることです。
M機能を向上させる方法
M機能を向上させるためには、組織の人間とどう付き合っていくかを考える必要があります。特に現場のたたき上げで出世した人の場合、現場で働くことは苦にならないが、マネジメントになると何をすれば良いのかわからないという方も少なくありません。実際にリーダーになってみないと、M機能を高める訓練はできないので仕方ない面もあります。
しかし、出世するためにはM機能はとても重要であり出世すればするほど、下に抱えるメンバーも増えるので組織力の維持・向上のために細心の注意を払う必要があります。
とはいえ、特別なノウハウがあるわけではありません。部下との接し方を工夫してみたり、適宜部下との面談を行ったりと、まずは小さな心配り一つでもM機能は高められます。
部下の悩みに寄り添い、強みを引き出し、本人が働きがいを感じながら働けるようサポートにまわることで、組織力の維持・向上を図ることも大切です。
PM理論でリーダーシップを鍛える
以上のようにPM理論について説明してきました。PM理論はシンプルな理論であるがゆえにビジネスにおいて必要なリーダーシップを鍛える際に有効です。
自分が何型のリーダーなのかを内省したうえで、目標達成機能と集団維持機能をバランス良く行うことを意識して、足りない機能については高めるように意識して仕事を行うことによって、ビジネスパーソンとして必要なリーダーシップを身につけられます。