トップマネジメントとは|チーム活動の理由、必要な能力・条件・スキルは?

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記事の情報は2018-08-03時点のものです。

トップマネジメントとは経営判断に関わる管理層のことを指します。トップマネジメントはチームとなり、さまざまなスキルを駆使して、役割を果たさなければなりません。そのスキルや役割、チームとして機能するための条件について解説していきます。
トップマネジメントとは|チーム活動の理由、必要な能力・条件・スキルは?

トップマネジメントとは

トップマネジメントとは、経営に関する総合的な判断をし、その最終的な責任を負う人物や機関のことを指します。社長や会長、取締役などが該当し、経営計画の策定や、組織の方向性の決定、組織の経営・運営の実行が主な役割となります。

マネジメントの3つの階層

最上位の立場から組織を動かすトップマネジメント以外に、「ミドルマネジメント」と「ロワーマネジメント」と呼ばれる階層が存在します。

トップマネジメント

トップマネジメントとは、前述のとおり、経営に関する総合的な判断を行う人や機関を指し、ISO規格では「最高位で組織を指揮し、管理する個人またはグループ」と定義されています。

ミドルマネジメント

ミドルマネジメントとは、組織やプロジェクトの中間層の立場にいる人物・機関を指します。一般的には中間管理職と呼ばれ、トップマネジメントが決定した方針をロワーマネジメントへ伝達したり、ロワーマネジメントの出した結果や意見をトップマネジメントに報告したりします。

簡単に言えばトップとロワーを結ぶ橋渡し役であり、部長や課長職がこれに当たります。

ロワーマネジメント

ロワーマネジメントとは、現場で作業を行う下位層の社員に直接指揮統制する管理職を指します。主に作業を実際に行う社員の監督や指示を行うため、経営計画策定的な役割は薄いと言えます。

現場での作業を円滑に進めることが求められるので、全体の作業知識・リーダーシップ、そして現場の空気を知ることが必要になります。職種としては係長や主任などがこれに該当するでしょう。

トップマネジメントはチームで行わなければならない?

「現代経営学」や「マネジメント」の著者で、ビジネス界に大きな影響を与えた思想家のピーター・ファーディナンド・ドラッガー氏は、「トップマネジメントとは1人ではなくチームによる仕事である」と述べています。

これはなぜでしょうか。以下で詳しく説明します。

チームで行う理由

トップマネジメントは組織全体のことを常に考えなければなりません。組織の経営は、1人ですべてを担うのは負担が非常に大きいため、グループやチームで負担を分散し、経営の効率化を図る必要があります。

また、トップマネジメントが複数いることで、トップ1人の独断による経営の暴走を未然に防げます。

ISOもトップマネジメントを重視

2015年に改正されたISO9001:2015では、トップマネジメントがよりリーダーシップを発揮し積極的に関与するよう、明言化されました。

品質の良いサービスを提供するためには、品質の良い環境と人材が必要です。人材の統率と、外部への品質保証の説明責任を負う必要があるため、トップマネジメントにはリーダーシップが必要なのです。

チームが機能するための「6つの条件」

ドラッガーによると、トップマネジメントのチームが機能するためには「6つの条件」が必要となります。

担当の分野の最終的な決定権

トップマネジメントの仕事には、常に重い責任が伴います。最終的な決定・決断を行う権利を持つことで、担当者としての自覚や責任感を再認識することが必要です。

自分の担当外の意思決定をしないこと

安易に担当以外の分野に介入すると、ミスやトラブルを発生させる確率が高まるだけでなく、信頼関係やチームの有機的なつながりの崩壊へと結びつきかねません。

そのため、自分の意思決定の範疇を超える仕事が回ってきた時は、担当の人へとすみやかに回しましょう。

チームメンバー同士で攻撃しないこと

チームメンバー同士の批判や誹謗中傷は、組織の経営に支障をきたす可能性があります。これは「チームは仲良くすべき」という意味ではなく、メンバー同士のいがみ合いが業務に支障をきたし、チームの連携を妨げるため、好ましくないとされているのです。

チームリーダーの決定

トップマネジメントには個々のチームメンバーがそれぞれの役割を果たさなければなりません。そのため、全体の成果達成には、意見をまとめ、責任を引き受けるリーダーの存在が不可欠となります。

また、チームリーダーを決定することで非常時の明確な指揮管理が可能となります。

チーム全体で意思決定する課題の設定

チームメンバーはそれぞれ自分の分野の最終決定を行います。しかし、最終的にはチーム全体で判断をしなければならないことが多いため、全体的な意思決定の対象となる課題の設定が必要となります。

チーム内の意思疎通への注力

チーム内での自分の考えが理解されることで、より自主性を高められます。それぞれが情報共有しやすい環境を整え、自発的な発言を促すようにすることで、チームワークを発揮し、目に見えた成果を出せます。

トップマネジメントが果たすべき「6つの役割」

トップマネジメントには果たすべき役割が6つ存在します。その役割を詳細に解説していきます。

事業の検討・決定

自分たちの組織が「社会にどのように貢献できるか」「誰に何を手助けできるか」を確認し、組織の事業を定義します。

基準の設定

自分たちの組織が「どのような理念で経営していくか」「どのような目的で組織を経営していくか」を決定し、組織のメンバーと共有する必要があります。

組織の育成・維持

組織の未来のために、組織内のメンバーの育成とサービスの質の向上を目指す必要があります。また、組織の構造もその都度改善していきます。

渉外業務の実行

顧客・取引先・金融機関・労働組合・政府機関との交渉はトップの人間が行うほうがよいでしょう。

儀礼的行事への参加

行事や会食などへの参加も、トップマネジメントの重要な仕事の1つです。顧客や取引先との友好関係を築くためにも、避けては通れません。

重大な危機への対処

組織のメンバーの重大なミスや失敗や組織の経営が滞った場合に、トップが自ら動かなければなりません。そのため、すべての責任を持ち、果たせる人物がトップマネジメントになるべきだと考えられます。

トップマネジメント層に求められるスキル・人材

誰もがトップマネジメントになれるという訳ではなく、相応のスキルを持った人材でないといけません。その具体的なスキルと人材について詳しく説明していきます。

トップマネジメント層に求められる3つのスキル

トップマネジメントに求められるスキルは大きく分けて「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つにわけられます。

  • コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、物事を概念的に捉え本質を特定することで、誰もが納得できる解答を導くスキルです。日本語では「概念化能力」と呼ばれることもあり、ロジカルシンキング・洞察力・経営知識・直感などが当てはまります。

  • ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、人間関係を良好な状態にし、組織内の経営を円滑に進める能力です。日本語では対人関係能力と呼ばれ、コミュニケーション能力・リーダーシップ・カリスマ性などが当てはまります。

  • テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、組織内の業務をこなすためのスキルです。業務に関連した資格・専門知識・自社サービスの知識が当てはまり、現場に近いマネジメント層に特に必要とされます。

トップマネジメント層に求められる4つの人材像

ドラッガーによると、トップマネジメントに求められる人材は「よく考える人材」「行動力がある人材」「人間的である人材」「表に立てる人材」だとされており、これらの特徴を備えることがマネジメント層に必須といえるでしょう。

トップマネジメントのチーム力が企業を伸ばす

前述のとおり、トップマネジメントは組織の方向性を決定し、組織の経営・運営などを行います。社員の行う業務は、それらに大きく影響されるため、トップマネジメント層はチームを形成し慎重に決定しなければなりません。

トップマネジメントチームを機能させるためにも、前述した「6つの条件」「6つの役割」を把握し、求められるスキルを身につけ、ふさわしい人材を育てることが必要です。

トップマネジメント層を中心に組織全体がきちんと機能し、役割を果たすことで企業はより良い方向へ成長できるでしょう。