フェイスブック時価総額「13兆円」1日で消滅 将来を危ぶむ4つの懸念材料

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フェイスブックが増収増益の決算を発表したにもかかわらず、株価は一気に約19%も下落した。その結果、時価総額は約13兆円という史上最悪の減少幅となった。原因として考えられるのは、個人情報問題、フェイクニュース、不正広告、GDPRという4つの「悪材料」だ。
フェイスブック時価総額「13兆円」1日で消滅 将来を危ぶむ4つの懸念材料

フェイスブックの将来性に黄色信号

増収増益なのに時価総額13兆円が一瞬で消滅

フェイスブックが米国時間7月25日、2018年第2四半期の決算を発表した。売上高は132億3,100万ドル(約1兆4,827億円)で前年同期の93億2,100万ドル(約1兆446億円)に比べ42%増、純利益は51億600万ドル(約5,722億円)で前年同期の38億9400万ドル(約4,365億円)に対し31%増。広告収入も、前年同期の91億6,400万ドル(約1兆272億円)から当期の130億3800万ドル(約1兆4,615億円)へと、42%の増収だ。

増収増益という結果を見る限り、フェイスブックは好調で、今後の成長が期待できるように思える。ところが、発表翌日の株式市場は、この決算を歓迎するどころか悪材料と判断して売りを浴びせかけた。

その結果、フェイスブックの株価は約19%も下落し、時価総額が一気に約1,200億ドル(約13兆4,520億円)も減ってしまった。この減少額は、1日の金額としては史上最悪だそうだ。ちなみに、CEOを務めるマーク・ザッカーバーグ氏は、自身の資産を約188億ドル(約2兆1,074億円)失ったとされる。

出典:Yahoo! FINANCE / Facebook

減収へ直結するアクティブ・ユーザー数の減少

株式市場がフェイスブックの決算に失望した理由はいくつかある。1つは、売上高が事前予測を下回ってしまったこと。もう1つは、ユーザー数の増加に陰りが見え始めたことだ。

フェイスブックのプレゼン資料によると、第2四半期のデイリー・アクティブ・ユーザー数(DAU)は14億7,100万人、月間アクティブ・ユーザー数(MAU)は22億3,400万人で、いずれも前期を上回っており、増加傾向が続いている。

ところが、先進国の数字に注目すると、状況は違ってくる。米国およびカナダのDAUは1億8,500万人(前期1億8,500万人)と横ばいで踏みとどまったが、欧州のDAUは2億7,900万人(同2億8,200万人)で減少してしまった。MAUも同様で、米国およびカナダが2億4,100万人(同2億4,100万人)、欧州が3億7,600万人(同3億7,700万人)といった具合だ。伸び悩みどころか、縮小が始まったかもしれない、と思わされる。

出典:フェイスブック / Q2 2018 Earnings Presentation

出典:フェイスブック / Q2 2018 Earnings Presentation

フェイスブックの売上は、広告収入の割合が極めて高い。広告に依存している、と表現してもよい。ユーザーがFacebookを利用するほど広告が多く表示されるので、アクティブ・ユーザーが多ければ広告収入も増える。つまり、フェイスブックにとってアクティブ・ユーザーの減少は、減収へ直結する大問題である。

株式投資は、その企業の未来に期待して実行される。そのため、現在の業績よりも事業拡大が重視され、株価は将来性の陰りを敏感に反映する。アクティブ・ユーザー数の減少は、当然フェイスブックの株価を押し下げる。

それにしても、2割弱という株価の値下がりは大きい。単に今回アクティブ・ユーザーが減ったというだけでなく、今後も減少し続けると予想したくなる不安材料が、フェイスブックにはいくつもあるからだ。

フェイスブックの将来を覆う4つの陰

現在のフェイスブックは、米国政府と消費者からの批判的な視線にさらされている。批判の主な理由は、個人情報の流出、大統領選挙の結果を左右したとされるフェイクニュース(偽ニュース)および広告だ。そして4つ目の不安材料に、「GDPR(EU一般データ保護規則)」とカリフォルニア州の「消費者プライバシー法」がある。

8,700万人分の個人情報流出

フェイスブックは、ユーザー8,700万人分もの個人情報が英国の調査会社ケンブリッジ・アナリティカへ流出したことを公表している。同社は政治関係データを取り扱う企業で、2016年の米大統領選挙戦でドナルド・トランプ氏の選挙キャンペーンにかかわっていたとされる。単なる情報の漏えいで済んでおらず、政治的な大問題へと発展しかねない。

流出が明るみに出たのは2018年3月。この問題を嫌ってFacebookを退会したり、Facebookの使用を控えたりしたユーザーは少なくないだろう。それが、2018年4月に始まった第2四半期のアクティブ・ユーザー減少につながった可能性は高い。

大統領選挙に影響したフェイクニュース

フェイスブックで流れたフェイクニュースは大統領選挙に影響を与えたと思われるため、重大な問題だ。以前紹介したニューヨーク・タイムズの報道によると、米国有権者の分断をあおろうとしたロシア政府の工作員が実行した投稿は約8万件あり、フェイスブックのユーザー2,900万人に配信され、次々と共有されることで最終的に約1億2,600万人が目にした、という。

この話はまだ終わっていない。ブルームバーグが先日、米国の中間選挙に働きかける目的で引き続き使われているFacebook不正アカウントの存在を報じたのだ。フェイスブックは初期調査の段階にあるとしており、これから衝撃的な情報が出て来かねない。そうなると、アクティブ・ユーザーや登録ユーザーの減少に拍車がかかる恐れもある。

広告も大統領選挙に利用された

ブルームバーグによると、2016年6月から11月までの選挙期間中、それぞれ大統領を目指していたヒラリー・クリントン氏の陣営は2,800万ドル(約31億円)、トランプ氏陣営は4,400万ドル(約49億円)の広告費をフェイスブックに支払ったそうだ。

この件についてバズフィードは、特にトランプ氏の陣営はフェイスブックと密に連携し、フェイクブックに広告収入だけでなく重要な広告展開のノウハウを与えた、と報じている。そして、ザッカーバーグ氏自ら、当選の決まったトランプ氏に祝福の電話をかけたという。

友達と交流する目的でFacebookを使っているユーザーにしたら、これほどの選挙資金が広告配信につぎ込まれ、結果的に飽きるほど広告を見せられたと感じてしまう。

GDPRとカリフォルニア州の法律

そのうえ、今後フェイスブックの業績に悪影響を及ぼすであろう要素が2つ存在する。欧州のGDPRと、カリフォルニア州の消費者プライバシー法だ。両者の意図や内容は異なるが、ユーザーとなる消費者の個人情報を保護する目的は変わらない。

これによりフェイスブックは、セキュリティ対策を強化したり、消費者対応の拡充を迫られたりする。単純に追加コストが発生するだけでなく、対応を誤ればユーザー離れを招いてしまう。ユーザー数の減少は、売上高の減少をもたらす。

フェイスブックにとどまらない問題

ツイッターの株価も急落

急激な株価下落に襲われたのは、フェイスブックだけでない。第2四半期の決算を発表したツイッターも、前年同期比24%の増収と黒字転換を果たしたにもかかわらず、株価を約20%も落としてしまった。

出典:Yahoo! FINANCE / Twitter

フェイスブック同様、MAUが前年同期の3億3,600万人から3億3.500万人へと減少したことなどが嫌われたのだろう。また、ユーザーのフォロワー数からロック済みアカウントを外す処置も、株価に影響を与えた可能性がある。もちろん、ツイッターにとっても、GDPRとカリフォルニア州のプライバシー法は懸念材料である。

先進国で成長の望めないSNS市場

さらに、先進国でSNS利用率が頭打ちになってきた。発展途上国ではユーザー数が増え続けているので、全体としての増加は期待できるものの、欧州や北米などでこれ以上の成長は望めない。このようなSNS市場全体の見通しも、フェイスブックとツイッターの株価を押し下げる要因のはずだ。

この状況は当面続くため、株価の急速な回復は難しい。しかし、情報流出やフェイクニュースといった弊害はあるものの、フェイスブックなどのSNSは役立っている面も多い。今ある問題を解決できれば、社会に貢献するプラットフォームとして株式市場に再評価されるだろうか。