サマータイムの議論は混沌 得するのは一体だれなのか?

6日、政府は2020年東京五輪・パラリンピックの猛暑対策として、サマータイム(夏時間)制度の導入について本格的に検討すると報道された。しかしこのメリットデメリットについては、さまざまな議論が巻き起こっている。

サマータイムの議論は混沌 得するのは一体だれなのか?

オリンピックの猛暑対策に「サマータイム」が浮上

政府2020年の東京五輪・パラリンピックの猛暑対策として、夏の時間を2時間繰り上げるサマータイム(夏時間)導入に向け、本格検討に入ったと、6日産経新聞が伝えた。

7月27日に東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長は、サマータイム導入に向けた法整備を安倍首相に要望した。2時間の繰り上げで、もっとも暑い時間の競技を極力回避するのが狙いだいう。

しかし8月6日の会見では、菅官房長官は「政府として決定していない」ことを強調し、慎重な姿勢をみせた。

突如持ち上がった「サマータイム」に、さまざまな議論が巻き起こっている。なぜサマータイムには批判が多いのか。そもそも、サマータイムとはどんな目的で行われているのか。

サマータイムとは?

環境省・経済産業省が2007年12月にまとめた「サマータイムについて」という資料によると、サマータイムとは以下のように説明されている。

サマータイムは夏時間制度とも呼ばれ、昼間の明るい時間が長い期間(例えば4月~10月)、全国の時刻を標準時より1時間進める制度。この制度を導入することにより、起床・就寝時間、労働時間もこれまでどおりでありながら、明るい夕方の時間が1時間増えるためその時間を有効に活用できる。また、地球温暖化対策の観点からは、夕方の照明や朝の冷房用電力等が節約されることにより、電力消費を削減することができる。

サマータイム廃止の歴史

そもそも日本では、戦後GHQの指令により制度化され、昭和23年に日本でも実施されていた。しかし過重労働が増える、仕事慣習の変更を好まないなどの理由により、4年後には廃止になった経緯がある。

その後2007年に、再び法律の整備にむけ、各方面が動いていた時期があった。調査によれば、2007年当時は、サマータイム導入へ賛成意見も多かったという。

●2001年:賛成「51%」、反対「29%」、わからない「20%」
●2007年:賛成「57%」、反対「29%」、わからない「14%」

しかし、システムの改修などに大きなコストがかかるなどの理由で、このときも法制度化までには至っていない。

サマータイムが及ぼす悪影響とは?

サマータイムには、省エネ効果、余暇時間の増加などが期待されているというが、それ以上に悪影響も大きいと懸念する声もある。

日本睡眠学会サマータイム制度に関する特別委員会の資料によると、2011年にサマータイムを廃止したロシアでは、切り替えの時期に救急車の出動や心筋梗塞による死亡者が増加したという事実があるという。

またこの中で、サマータイムの悪影響は次の3点が指摘されている。

1.生体リズムへの影響
2.眠りの質への影響
3.眠りの量への影響

生体リズムへの影響については、英国で過去に行われた調査の中で、夏時間に移行後1週間経っても、眠気、集中力低下などの悪影響があり、一方で元の時間に戻す秋の移行では、1週間後には、悪影響はなくなることが確認されたという。

さらに、2006年のフィンランドの研究で、夏時間への移行に際して睡眠効率が10%低下することが報告されているという。

日本では、生活スタイルの変化により、睡眠の重要性がたびたび指摘されている。日本生活習慣病予防協会によれば、「日本人成人の20%が慢性的な不眠で、15%が日中に過剰な眠気を感じている」という結果もある。

そんな中、今サマータイムが導入されれば、猛暑で熱中症になる人よりも、さらに多くの人が健康への影響をうける可能性があるのではないだろうか。

サマータイムは「なんとなく良さそう」だけで議論が進んでいる?

本記事を書くにあたりリサーチをした結果、サマータイムがもたらす経済効果、かかるコストなどが明確にわかる調査データなどはほとんどなかった。いくつかの試算はあったが、調査結果は2007年など古いものが多く、働き方や生活スタイルが変わる現代において、これが当てはまるかは難しい。

デメリットよりもメリットのほうが大きいことが明確にわかっていれば、過去に議論された時点で、サマータイムは導入されていただろう。

猛暑対策で早い時間に競技を行うことは、選手や観客にはたしかにメリットがある。しかしそのメリットを超えるデメリットは本当にないのだろうか。そこまでを考えて、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森会長は首相に提案をしたのだろうか。

不明瞭な中で突如沸き上がった「サマータイム検討」が、混沌とした議論を招いている。