テスラCEOマスク氏を象徴する3つの夢と9冊の本 「大赤字だけど株価上昇」を呼んだ人物像とは

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EVメーカーのテスラの2018年第2四半期の決算は、過去最悪の赤字を計上した。ところが、株式市場が同社の将来性に期待したのか、株価は大きく上昇。好材料のあることは確かだが、同社の個性的なCEOであるイーロン・マスク氏の言動も株価上昇に寄与したようだ。

テスラCEOマスク氏を象徴する3つの夢と9冊の本 「大赤字だけど株価上昇」を呼んだ人物像とは

過去最悪の赤字でも株価が上昇したテスラ

電気自動車(EV)専業メーカーのテスラ(Tesla)が発表した2018年第2四半期の決算は、売上高を前年同期の4割以上も増やしたにもかかわらず、損失を2倍近くに拡大させてしまい、過去最悪の赤字を記録した。EV市場をけん引してきた企業であるものの、大幅な納車遅れが慢性化しているほか、運転支援技術「Autopilot」作動中のSUV「Model X」が死亡事故を起こすなど、業績の足をさらに引っ張る材料が少なくない。

こうした背景から、決算発表を受けて株価が一気に下がると予想したのだが、逆に株価は急上昇した。増収増益なのに時価総額13兆円が一瞬で消滅したフェイスブックや、増収24%と黒字転換を果たしたにもかかわらず株価が2割も落ちたツイッターとは大違いだ。

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テスラの場合、赤字幅は大きい一方、決算内容に明るい材料があること、ラインナップのなかでは安価な中型セダン「モデル3」の生産台数が増えてきたこと、大手自動車メーカーもこぞって参入するEV市場の将来性に対する期待などが、株価を押し上げたとみられる。さらに、同社の個性的なCEOであるイーロン・マスク氏の言動も、今回は株価上昇に寄与したようだ。

そこで、テスラの現状を確認しつつ、マスク氏の考え方や仕事に対する姿勢などを調べてみよう。

テスラの株価に影響を及ぼすマスク氏の言動

赤字が2倍に増えた過去最悪の決算

まず、テスラが8月1日に発表した2018年第2四半期決算の具体的な内容を示す。

売上高は40億223万1000ドル(約4,436億728万円)で前年同期の27億8,955万7000ドル(約3,091億9,450万円)に対し4割以上の増加。純損益は、7億4,270万6000ドル(約823億2,153万円)という四半期として過去最高の赤字だった。しかも、前年同期の純損失4億142万7000ドル(約444億9,417万円)と比べると、赤字が2倍弱に膨らんでいる。

それでも株価は上昇

赤字は増えたが、その主な原因はモデル3の生産体制強化に必要な投資である。そして、モデル3の好調な販売は増収につながった。モデル3がどれだけ人気かというと、米国で「BMW 3シリーズ」「アウディA4」「メルセデスCクラス」「レクサスIS」を合わせたよりもモデル3の方が売れたのだ。

出典:モデル3販売台数の推移 / Twitter、Tesla

しかも、モデル3の生産台数は週7,000台まで増え、このまま順調に行けば赤字解消も夢でなくなる。また、フリーキャッシュフローの赤字幅である現金燃焼が予想より少なかった。

確かに赤字幅は拡大してしまったが、投資家の視点だと今後の業績改善が見込まれ、結果的にテスラの株価は1割以上も上昇した。

出典:Yahoo! FINANCE / Tesla

マスク氏のツイートが株価を動かす

ブルームバーグはテスラ株価上昇の要因の1つとして、5月の第1四半期決算発表でアナリストに失礼な態度をとったマスク氏が後日謝罪した、という行動を挙げた。

マスク氏の言動は、これまでもテスラの株価を乱高下させてきた。特に同氏のTwitterでの発言には、大きな影響力がある。たとえば最近、タイの洞窟(どうくつ)に閉じ込められた少年たちの救助で活躍した英国人ダイバーを「小児性愛者」と侮辱し、その後Twitterで謝罪するという騒ぎを起こし、このときもテスラの株価はツイートに反応して上下した。

マスク氏を象徴する3つの夢と9冊の本

ツイッターでの発言や各所での行動が注目されるマスク氏は、一体どういう人物なのだろうか。インタビューなどから彼の考え方を探ってみよう。キーワードは、「3つの夢」と「9冊の本」だ。

「インターネット」「持続可能エネルギー」「宇宙」の3つを追求

グーグルのベンチャー投資会社グーグル・ベンチャーズによるインタビュー書き起こしテキスト)のなかでマスク氏は、自分が企業家になりたいと思い続けていたわけでない、とした。ただ、新しい物を生み出したり、物を作ったりすることに魅力を感じていたという。

そして1995年ごろ、インターネットが世界に大きな変化をもたらすと考えるようになり、その一端を担いたいと望んだそうだ。そうしてオンラインコンテンツ出版ソフトウェア会社のジップ2(Zip2)、オンライン決済サービス会社のX.com、後のペイパル(PayPal)を創業し、インターネット・ビジネスにかかわり始めた。

そんなマスク氏だが、学生のころから未来の人類に大きな影響を与える手段を考え、「インターネット」「持続可能エネルギー」「宇宙」という3要素に思い至ったそうだ。このアイデアを追求したマスク氏は、インターネットをペイパルで、持続可能エネルギーはテスラ子会社の太陽光発電会社ソーラーシティ(SolarCity)で、さらに宇宙はロケット打ち上げ会社スペース・エックス(Space X)でカバーするまでになった。

マスク氏が薦める9冊の本

起業家や経営者として見事な手腕を発揮するマスク氏は、読書家でもあるという。ただし、グーグル・ベンチャーズのインタビューでは、一般的なビジネス書はあまり読んでいない、と話した。その代わりコミックが好きだと答えた。

ビジネスインサイダーによると、マスク氏は多くの人に読んでもらいたい本として、以下の9冊を紹介した。「3つの夢」に通ずるジャンルの本が並んでいる。

  1. 指輪物語(The Lord of the Rings / J.R.R. Tolkien)
    「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化された大人気ファンタジー小説。

  2. 銀河ヒッチハイク・ガイド(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy / Douglas Adams)
    カルト的人気を誇るSFコメディ作品。こちらも映画化されている。ちなみに、スペース・エックスが打ち上げた火星ロケットに搭載されたテスラ製「ロードスター」のコンソール・パネルには、「Don't Panic(パニくるな)」というこの作品のテーマが表示されていた。

  3. Benjamin Franklin: An American Life / Walter Isaacson
    米国を代表する偉人、ベンジャミン・フランクリンの評伝。

  4. アインシュタイン その生涯と宇宙(Einstein: His Life and Universe / Walter Isaacson)
    天才物理学者、アルバート・アインシュタインの評伝。

  5. 強さの秘密―なぜあなたは床を突き抜けて落ちないか(Structures: Or Why Things Don't Fall Down / J.E. Gordon)
    物体の強度について論じた名著。

  6. Ignition!: An informal history of liquid rocket propellants / John D. Clark
    液体ロケットエンジンの推進剤について書かれた本。

  7. スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運(Superintelligence: Paths, Dangers, Strategies / Nick Bostrom)
    人類と人工知能(AI)との関係について論じた本。

  8. ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか(Zero to One: Notes on Startups, or How to Build the Future / Peter Thiel)
    シリコンバレーの起業家であるピーター・ティール氏がスタンフォード大学で行った講義の記録。

  9. Howard Hughes: His Life and Madness / Donald L. Barlett and James B. Steele
    米国の実業家で発明家などの顔を持つ億万長者、ハワード・ヒューズの評伝。

引用元:BUISINESS INSIDER「9 books Elon Musk thinks everyone should read

またもマスク氏のツイートは株価を動かした:株を非公開に?

ちょうど記事執筆中に、マスク氏の発言がまたもテスラの株価を大きく動かしたのでお知らせしておこう。

なんと、テスラの株式を買い取って非公開会社にすることを検討していると、突然ツイートしたのだ。買い取り価格を1株当たり420ドル(約4万6,553円)としたため、それまで340ドルから350ドル(約3万7,686円から約3万8,794円)のあいだで推移していた株価は高騰した。

本気なのか冗談なのか見極めにくい投稿をTwitterによくするマスク氏だが、このツイートでは「(買取に必要な)資金は確保済み」としており、真剣に考えている可能性は高い。マスク氏のTwitterから、しばらくは目が離せなさそうだ。

出典:Yahoo! FINANCE / Tesla

画像出典:OnInnovation/Copyright 2010 The Henry Ford