雇用契約とは | 労働契約との違い・オンライン締約・もらえなかったときの対処法を解説

最終更新日: 公開日:

記事の情報は2018-09-13時点のものです。

雇用契約は雇用者と労働者の間に結ばれる契約で、労働者にとっては重要な契約です。民法や労働法によって最低限のルールが決まっており、雛形通りに作れば比較的簡単に作ることができる契約書です。労働条件は書面で通知する必要がありますが、労働契約書は書面だけではなくオンラインでの締結も可能です。本記事では、労働条件が書面で通知されなかったときの対処法を含めて、労働者が知っておくべき雇用契約に関する知識について説明します。
雇用契約とは | 労働契約との違い・オンライン締約・もらえなかったときの対処法を解説

雇用契約とは

雇用契約とは、当事者の一方が相手方に労働力を提供することを約束して、もう一方がそれに対して報酬を与えるという契約です。つまり、会社の従業員になって働く際に、企業と結ぶ契約のことを指します。雇用契約は民法や労働法によって最低限のルールが整備されていますが、必ずしも書面を交付する必要はありません。口頭でも雇用者と労働者が同意すれば雇用契約は成立します。

雇用契約書とは

雇用契約は口頭でも成立しますが、一般的には合意を確認するために書面を残します。一般的には2通用意して双方がサインし、雇用条件について合意があったことを証明するために締結する契約書です。しかし必ず書面で締結しなければならないものではなく、後で説明する労働条件通知書によって雇用条件を伝えても良いとされています。

 雇用契約書の書き方(正社員/パート・バイト)記載事項・作成時の注意事項まとめ
雇用契約書の書き方を正社員の場合、パート・アルバイトの場合と分けて解説します。そもそも雇用契約書とは何か、労働条件...
詳細を見る

労働条件通知書との違い

雇用契約書は双方のサインが必要ですが、労働条件通知書という形で一方的に雇用者から労働者に対して労働条件を告知しても大丈夫です。労働法によって、法的に雇用者から労働者に対して通知しなければならない労働条件が決められているので、それさえわかるのであれば、労働者のサインは必ずしも必要ではありません。

労働条件通知書とは | 雇用契約書との明確な違いを解説【記載事項・記入例・書き方】
労働条件通知書とは、企業と雇用契約を結ぶ際に交付される労働条件が記載された書類を指します。労働条件通知書の交付は労...
詳細を見る

雇用契約が「アルバイト」で疎かになってしまう理由

ちなみに、正社員はきちんと雇用契約を結んだり、労働条件通知書により労働条件告知書を事前に提示することが多いのですが、アルバイトやパートのような非正規雇用では雇用契約を結ぶことが疎かになりがちです。これにはいくつかの理由があります。

口頭でも雇用契約は成立する

まず、前提として説明したとおり、雇用契約は口頭でも成立します。よって、アルバイトやパートを雇うのに制度上は契約書を作成する必要ありません。ただし、労働法によって労働条件を書面で明示することは義務付けられています。

忙しい中小規模事業者の場合、書面での労働条件の交付が必要な事を知らない、あるいはうっかりしていて交付を忘れてしまう場合もあるようです。

雇用期間や勤務時間が短い

雇用者側の事情として、アルバイトやパートは雇用期間や勤務時間が短いので、いちいち雇用契約書や労働条件通知書を交付するのが煩雑であるという事情もあります。

また、きちんと法律の要請どおりの労働条件通知書を作成すると、何かトラブルがあった際に、それらの書類が証拠になりうるので曖昧にしておきたいという意図が働くケースもあるようです。

各種社会保険への加入が必要

アルバイトやパートであっても労働状況によっては労災保険などに加入する必要がありますし、正社員に近い時間働いているアルバイトやパートに対しては社会保険料を給料から天引きし、会社も半額負担する必要があります。

アルバイトやパートだから保険への加入は不要、というのは早合点。ケースバイケースであることを注意してください。

雇用条件は必ず書面で確認しよう!

アルバイトやパートの立場であったとしても雇用条件に関する書面を交付してもらうのは重要です。これは単に法律によって決められているということだけではなく、労働者の立場を守るためでもあります。使用者とのトラブルが発生した場合、雇用契約書や労働条件通知書は雇用条件を確認するための証拠となるので、かならず書面をもらうようにしてください。

雇用契約書をもらえなかったときは

企業が労働条件を書面で明示することは労働基準法第15条で「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。」と義務付けられています。

それでも、労働条件を書面で交付してもらえない場合、労働者はどのような対策が考えられるのでしょうか。

口頭で相談する

まず考えられる方法が口頭で、雇用契約書の締結や労働条件通知書の交付を雇用者や人事担当者にお願いすることです。法律によって書面による通知は義務付けられているので、大抵の場合は口頭で相談すればすぐに対応してくれます。

文書で請求する

口頭で再三お願いしても労働条件に関する書面が交付されない場合は、今後何らかのトラブルが発生する可能性もあります。

その場合は文書で書面の交付を請求してきちんと記録を残しておいた方が良いでしょう。文書で記録を残す方法としてはメールでも良いですし、内容証明を送る方法もあります。

労働基準監督署に是正申告を行う

最後にどうしても書面を交付してもらえない場合に相談に行くのが、労働基準監督署です。労働条件が交付されないのは先ほど説明したとおり違法なので、労働基準監督署に是正申告を行うことによって、労働基準法の101条、104条2項に基づき企業に対して調査などを行う可能性があります。

ただし、ここまですると企業との信頼関係は崩壊していますし、コンプライアンスの面で危険な職場である可能性が高いので職場に居続けようとするよりも、転職を検討するのも一案でしょう。

紙面だけではない?オンライン上の雇用契約

ちなみに、雇用契約は紙の書類ではなく、オンライン上でも結べます。近年はクラウド型のHRサービスの中には、入社予定者に雇用契約のフォーマットをメールで送り、パソコンやスマホ上で署名をして雇用契約を成立させるサービスも存在します。

契約はオンライン上でも結べますが、労働基準法の規則上労働条件は紙媒体で通知しなければならないので注意してください。

保管もオンライン上で

ちなみに雇用者と労働者の間に成立した雇用契約書は紙に印刷する必要はありません。データとして保有しておけば大丈夫です。ただし、データが消失して復旧できないと後でトラブルになりかねないので、きちんとバックアップを用意する必要があります。

近年はクラウド上に雇用契約を含めてさまざまな契約書を保管するサービスもあるので、このようなサービスを利用しながらデータが消失しないように保管してください。

法律を知り無駄な労使紛争を回避しよう

雇用者と比較して労働者は弱い立場になりがちです。そのような労働者を守るために労働法があります。雇用契約に関する基本的な法規を知ることで、労使双方が誠意を持った関係を構築できます。

会社との雇用契約に不安がある人は労働法規を勉強して、契約内容をきちんと確認してみてはいかがでしょうか。