飲食店向け食材ECベンチャー八面六臂、松田雅也代表は「資金調達後の危機」をどう乗り切ったか

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記事の情報は2018-09-03時点のものです。

柳谷智宣のホットベンチャー・ケーススタディ。今回は、飲食店向けの総合食品EC事業を手がける八面六臂(はちめんろっぴ)代表取締役松田雅也氏にインタビューを実施。同社の歴史を振り返りながら、創業の経緯から急成長期、資金調達後に起こった組織の危機、第二創業期を迎えた現在と今後の展開について話を聞きました。

明確な評価の仕組みを構築して土台を固め、今後は上場準備も

ーー今はどんなマネジメントをされているのですか?

今は、明確な人事制度などを策定し、社内の社員だけでなく、当社に興味のある候補者の方にも事前にわかりやすく知ってもらうためにWEBサイトでも公開しています。

能力とパフォーマンスを区別して評価するいわゆる「等級制度」をベースに、評価制度と報酬制度を定め、半期ごとに社員の個別目標などを定めています。またその実績進捗状況をなるべく可視化したうえで、定期的な個別面談を通じて方向性のすり合わせや課題の共有などを適宜行っています。

明確な実力主義なので、若くても能力があり、実績が出せればどんどん昇進し、やる仕事の範囲も広がります。

たとえば入社2年目のメンバーでどんどん仕事ができる若手社員がいますが、26歳ですでにマネージャーになって約40万円近くの月給の人もいます。能力と実績を区別しての評価なので降格といったものはあまりありませんが、そのような判断があった場合はもちろん等級が下がり、給料も減ります。

また、この実績進捗を共有するために、実績の状況を計測する仕組みをしっかり作っていくことは経営者の大事な役割です。何をもって結果が出たのか出ないのかが明確でないと頑張りようがありませんので、しっかり整備しなければいけません。ここを作っていないのは経営者の罪です。

ホームページでは、等級制度や評価制度、報酬制度がすべて公開されている

ーー八面六臂の「今後の展望」について教えてください。

わかりやすく言うと、最近は無理な背伸びをした姿を見せないようにしています。つまり、この事業の成長はある程度の時間をかけつつ大きな規模になっていくのですが、その時間軸と規模感の目線のあった方と事業を一緒にしたい、ということで、IRや採用活動などを展開しています。

現在、約1,000店舗のお客さまがいますが、中小規模の飲食店はまだまだたくさんあります。引き続き、一都三県を中心に開拓していきます。

インタビュー後記

ITだけではなく、物流や決済、人という泥臭いところの濃厚なお話を聞けて圧倒されてしまった。特に、調達のあと50人を雇い、ほとんどが辞めてしまうというエピソードには、胃が痛くなるほど共感できた。松田氏はとてもロジカルな思考をする方で、今は盤石の体勢が整っていると感じた。人はどのくらいのペースで増やすのですか? という質問に「増やさない方がいいんじゃないですかね」と即答したのはさすがだと感じた。

筆者は原価BARという飲食店を数店舗経営しているが、仕入れ先は本当に悩ましいところ。メールでしか注文を受け付けない業者やWebサイトが使いにくい業者ならまだマシで、ファックスオンリーというところもある。きちんとしたECサイトを用意しているところは大手のみで、そう簡単に切り替えられるものでもない。

八面六臂さんは創業当時にリリースを読んで興味があったが、結局縁がなく利用したことがなかった。しかし、現在取扱商品のラインナップが増え、仕入れも強化されたとのことで早速導入を検討してみようと思った。