裁量労働制の会社における残業代・みなし残業・フレックスの本来の在り方とは

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記事の情報は2018-08-29時点のものです。

「裁量労働制だから残業代はでない」「裁量労働制だからお給料はみなし残業代込みだよ」などと言われて、よくわからないままそういうものかと納得してしまったことはありませんか?今回は、本来の裁量労働制をわかりやすく解説します。
裁量労働制の会社における残業代・みなし残業・フレックスの本来の在り方とは

裁量労働制とは

裁量労働制には「企画業務」型と「専門業務」型の2種類あるのですが、それぞれ適用できる職種には、法律上の決まりがあります。また、対象業務に該当すれば自動的に対象になるわけではなく、開発の進め方について日常的に上司が具体的な指示をしたり、業務を進める際の時間配分について指示がある場合は、これに該当しません。

裁量労働制の対象となる社員は限定的で「企画業務」も「専門業務」も知識や経験が浅く、自己の裁量のみで仕事を進めることが困難である場合は該当しません。全社員が裁量労働制の対象という会社はほぼないと思ってよいでしょう。

企画業務型とは

「企画業務」とは、担当する分野について調査・分析を行い、企業全体に関わるような計画策定を行う業務を示しており、「企画営業」など“企画”と名前がつく職種なら適用できると誤解されることがあるのですが、個別で営業活動を行う仕事や、企画業務を補助する仕事、月単位でルーティンワークをこなす仕事は対象になりません。

専門業務型とは

「専門業務」は、法律で19種の具体的な業務が定められており、マスコミ系の仕事やシステムやソフトウェアの開発にかかる仕事、弁護士や公認会計士など士業の仕事などが該当します。

裁量労働制で労使間トラブルが起きるワケ

8月初旬、厚生労働省が裁量労働制に関する自主点検結果を公表して話題になりました。

これは、裁量労働制を導入している企業に対して、その運用実態を確認するための調査で、問題があると認められた場合には自主的に必要な改善を行うことになっています。自主的な改善が見込めない場合には行政が監督指導を実施し、改善を促していく予定です。

公表結果によると、エンジニアや建築士、コピーライターなどの専門業務型の裁量労働制を導入している企業において、深夜に及ぶ残業の割増賃金未払いなど不適切な運用実態が指摘されていますが、該当企業は約4%にとどまっています。

厚労省の自主点検に際し、裁量労働制導入企業の人事労務担当者の間では、戦々恐々といったムードも一部には見受けられましたが、この結果だけみると、大半の企業が裁量労働制を問題なく運用できているといえるでしょう。問題点があったとしても改善に向かうことが期待できます。

しかし一方で、一向に長時間労働や残業代の労使間トラブルがなくならないのはなぜでしょうか?

それは、この結果に反映されない現実があるから。"自称裁量労働"の企業の存在が浮かび上がります。自称裁量労働の企業を見分けるポイントが、後述する残業代やみなし残業、フレックス制度の設定などに当たります。

"自称"裁量労働制が横行している

求人広告や雇用契約書に「裁量労働」の記載があった。または入社時の説明等で「うちの会社は裁量労働だから」と言われた。だから自分の会社は裁量労働だ、と認識している方は少なくありません。

けれども、働き方や給料の話を聞く限り、法的な裁量労働制を導入している企業ではない“自称裁量労働”であるケースは多く見受けられます。

大前提として裁量労働制は、労働基準監督署に届け出を行ってはじめて導入できる制度。当然、届け出るにあたっては法律上の要件を満たす必要がありますが、この事実が働き手や一部の経営者・人事労務担当者に認知されていないために、"自称裁量労働"が横行していると考えられます。

届け出を行わずに裁量労働をうたう企業では、裁量労働の言葉だけが独り歩きし、法律上の裁量労働制とはかけ離れた運用となってしまっている場合が少なくありません。

なかには、労働時間の管理や残業代の支払はきちんと行いつつも、会社の業務に対する考え方として“裁量労働”と表現する会社もあり、“自称裁量労働”だからといって、必ずしも問題があるわけではないのですが、裁量労働の名のもとに、違法残業を強いられているケースは見過ごせません。

“裁量労働”の企業で働く方は、自社が法的な裁量労働制を導入する会社なのか、自称裁量労働なのか理解の促進を図りましょう。