AI翻訳で人の仕事は奪われるのか 東京五輪に向けた活用事例も続々

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AI翻訳は既にプロの翻訳家レベルに達したともいわれています。翻訳サイト、アプリへの活用が進んでおり、日々その精度は向上。ビジネスシーンでの利用も拡大しています。一方で、「AIが人間の仕事を奪うのか?」「語学を勉強する必要はなくなるのか?」といった議論も活発に。AI翻訳を巡る現状を見てみましょう。
AI翻訳で人の仕事は奪われるのか 東京五輪に向けた活用事例も続々

ますます身近になったAI

近年、さまざまな分野において「AI(人工知能)」が活用されています。目立つところでは、AIアシスタントを搭載したスマートスピーカーや、名人をも負かす将棋プログラムなどが知られているでしょう。第3世代に入ったといわれるAIは、どこまで進化したのでしょうか。

AIはどれほど進化した?

AIの進化の指標として注目されている分野の一つが「自動翻訳」です。翻訳機能はこれまで、文法規則や辞書における言語ルールに則って翻訳がなされてきました。翻訳しようと文章を入力するとぎこちない翻訳文が表示され、お世辞にも優れた機能とはいえませんでした。

しかし、AIの翻訳機能は統計データによる翻訳およびディープラーニング(深層学習:機械学習の一つ)を導入することでプロの翻訳家レベルにまで達し、より精度の高い翻訳を実現することに成功したとされています。

AIに仕事を奪われる?

AI翻訳が発達すると、人間の仕事が奪われるのでしょうか。技術の発展とともにそんな議論も交わされています。

AIの自動翻訳が優れているとはいえ、会話が交わされる現場では臨機応変に対応できるより質の高い翻訳力が必要な場面が多々あります。そういったコミュニケーション能力の点で、AI翻訳には依然として改善の余地があり、学習能力に優れたAIもまだまだ及ばないといわれています。

仮に、どんなに発音が悪く、流暢な英語が喋れない人でも、不思議と人を惹きつけて離さない人がいるものです。メッセージ性の強さやプレゼンテーション能力と呼ばれるスキルに優れた人です。プロの翻訳家は、このスキルによってAIを超える働きを見せられるでしょう。すべてがAIにとってかわるわけではないと考えられます。

AI翻訳をビジネスへ活用する

AI翻訳は、身近なところではウェブの翻訳サービスなどで使われており、テキストの翻訳精度は日々向上しています。ビジネスシーンへの活用も拡大してきました。

ウェブ記事やホームページの翻訳

AIの自動翻訳は、ウェブ記事やホームページを翻訳するビジネスシーンでも活用できます。結果として、翻訳者の人件費が削減でき、支出をおさえて利益の拡大につなげられ、人的リソースを他のビジネスに回せるといったメリットがあります。

商談などのリアルタイム翻訳

イヤホンによる音声翻訳機も開発されており、実際に商品として販売されています。相手の言語を音声認識によってリアルタイムで翻訳し、イヤホンなどを通して翻訳された言語を聴くことができます。

グローバルに展開する企業も増えたいま、逐一通訳者を雇うのが難しくても、AI翻訳を活用したサービスや商品は多くの場面で役立つでしょう。

文書の多言語翻訳

AIの自動翻訳により、多言語での文書の翻訳が容易になります。専門用語が使用されていても、AIの自動翻訳を活用すれば、さまざまな言語への翻訳文を短時間で作成できます。ビジネスメールや資料などの翻訳にもおおいに役立てられます。

AI翻訳だと難しい場合も

AIの自動翻訳を活用すれば、ほとんどの言語の翻訳が可能です。とくに、ECや観光分野におけるビジネスでは、今後さらにAIの自動翻訳が活用されることが予想されます。

一方で、法律や薬といった専門用語を要する翻訳に関しては正確な翻訳が難しいとされており、それぞれの専門知識を持つ翻訳者によって翻訳が行われています。ただ専門分野へのAI活用も進んでいるので、今後はほかの分野同様にAIが活躍するようになるかもしれません。

結局、英語の勉強は必要?

AI活用が広まれば広まるほど議論が活発になっているのが、「今後、英語をはじめとする外国語を学ぶ必要があるのか?」という点です。学校での英語教育や受験英語、語学力を必要とする職業を例にみてみましょう。

学校での英語教育

2020年から日本の英語教育は新たな段階へと進みます。小学校では5、6年生の正式教科に英語が加わり、大学入試では「読み」「書き」以外に「聞く」「話す」もあわせた4技能による試験が行われることが決定しています。日本の英語教育は2020年を境に、英語を聞きとり、自らが考えて話す、実践的な英語教育へと大きく変わろうとしているのです。

AIの自動翻訳機能は優れていますが、日本語特有の表現が苦手とされています。そのため、日本語を英語に、英語を日本語にする表現力は今後も求められると考えられます。また小学生から英語に触れることで、英語へ親しみを持つ子どもが増えたともいわれています。

こういったことから、現時点では、学校での英語教育を外すのは時期尚早でしょう。

TOEIC

企業の採用条件の一つとして、TOEICのスコアを提示している企業があります。海外赴任の機会が多い大手企業では600以上のスコアを必須としています。またNTTコミュニケーションズでは850以上のスコアが採用条件の目安として提示されています。

もちろんTOEICの結果が全てではありませんし、そもそもTOEICの意義を問う議論もありますが、高いスコアを求める企業が実践的な英語スキルを持つ人を必要としていることは間違いないでしょう。AIによる自動翻訳だけでは推し量れないスキルが必要であることの、裏返しかもしれません。

特殊な職業

大学入試や就活以外で、高度な語学力が求められる職業があります。たとえば、領事業務や国際的な交流業務を行うキャリア外交官では、入省時に高度な語学力が必須とされています。入省後も語学研修が定期的に行われ、海外派遣制度によって実際に海外で語学力を磨く機会が用意されていることもあります。

やはり専門的なコミュニケーションの側面からみると、人の手による翻訳が完全に不要となることはないでしょう。AI翻訳が活躍する分野はまだまだ限定的で、危機を感じている翻訳者も少ないという調査結果もあります。

東京オリンピックに向けたAI活用

訪日外国人は年々増加しており、各所での対応が急がれています。東京オリンピック・パラリンピックも含めて「翻訳」はやはり、大きな課題の一つです。個人レベルでは各種翻訳サイトやスマートフォンアプリも充実していますが、街全体での対応となると、より大規模なシステムが必要となります。もちろんマンパワーには限界があります。

そんな中で頼りになるのが、やはりAI。実際にどのようなサービスやシステムが計画されているのでしょうか。

チャットボットが街を案内

まずAIの技術発展によって大きく進歩したのが、質問に自動で応答するチャットボットです。これを街の案内に活用しようという取り組みが行われています。

東京駅周辺では、訪日外国人向けの案内業務を行うチャットボット「BEBOT(ビーボット)」が2018年3月より運用されています。「成田空港までの行き方は?」といった質問にAIを利用したチャットが答えてくれるもので、英語と中国語に対応しています。

出典:プレスリリース

街全体で考えると、バスの運行状況や公衆トイレ、飲食店、宿泊施設など、多言語対応が必要とされているか所はまだまだあります。実践を重ねて学習していくAIが瞬時に多言語に翻訳してくれるのは、AI翻訳の大きな魅力です。

リアルタイム翻訳の進化

テレビ中継などを見ていると、リアルタイムで人が通訳しているのを見かけることがあるでしょう。AI翻訳の技術が発達すればこういった場面での翻訳が容易になり、言語を気にせず楽しめる番組が増えるかもしれません。

意図を汲み取り表現する必要のある場面では、AIによる機械翻訳より人力の方が適しているといわれています。ただし、音声を瞬時で翻訳しテキストにするといった異なるメディア間でのリアルタイム翻訳、複数言語への一斉翻訳は、マンパワーでは難しい部分です。ここを補うAIの技術は、私達の生活をより楽しくしてくれるでしょう。

未来はAIとともにある

AI(人工知能)を活用した技術の発展には目覚ましいものがあり、翻訳はすでにプロの域に達したともいわれています。実際に各種翻訳サイトやスマートフォンの翻訳アプリではAIが活躍しており、その精度は日々向上しています。

一方で「AI技術の発展により仕事が奪われてしまう」といった声があがっています。確かにAIの発展によって不要となるものもあるでしょう。ただ、翻訳や通訳の場面では、すべてをAIがとってかわることはないと考えられています。密なコミュニケーションを必要とする場面ではまだまだ人力での通訳も欠かせないでしょう。

訪日外国人の増加で外国語対応が必要な場面は否応なしに増加。東京オリンピック・パラリンピックに向けてまだまだ拡大していきます。AI技術をうまく取り入れながら、未来を築いていくことが求められているのではないでしょうか。