福岡市・ANA・エアロセンス、離島・限界集落への「ドローン物流」に挑む

2018年8月30日、ANAホールディングスとエアロセンスは福岡市の玄界島を舞台として物流サービス向上を目指して協働することを発表した。埼玉県秩父市、福島県南相馬市、長野県白馬村、岡山県和気町とならび、ドローン物流の実証実験地に選ばれた5エリアのひとつである福岡市。離島・限界集落の生活はドローン物流でどのように変化するのだろうか。

福岡市・ANA・エアロセンス、離島・限界集落への「ドローン物流」に挑む

ANAとエアロセンスと福岡市、3者で構成される「福岡市ドローン物流協議会」が、国土交通省・環境省連携事業であるドローンによる荷物配送モデルの早期実用化に向けた検証実験の実施地域協議会として採択された。

これはドローン物流によって非効率な小口輸送を代替し、CO2排出量の削減を実現を目指す取り組み。CO2 排出量削減効果と、費用対効果などについて検証を行う予定だ。

ドローン物流は買い物難民(消費弱者)を救えるか

日本には420以上の有人島、15,000以上の限界集落があるという。過疎化が進み、バスや電車も利用者が少なく、本数削減や廃止に追い込まれることも稀ではない。

こうした地域では、配達員の確保や交通インフラ整備に課題を抱えるため、物資を集配所までしか届けられない場合が非常に多い。

離島や限界集落に住むのは、多くが高齢者だ。集配所から物資を自宅へ運ぶことも一苦労だろう。最終的に物資が手元に届くまで、時間とコストがかかりすぎるのだ。

経済産業省によると、買い物難民・買い物弱者は平成27年調査で、全国に約700万人まで増加しているという。また、60歳以上の高齢者の17%が「日常の買い物が不便と感じる」と回答しており、高齢者のおよそ5人に1人は買い物に何らかの不便を感じている。

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とはいえ、買い物難民救済のために交通インフラを整備するという話は現実的ではない。(それができれば、とっくの昔にできていたはずだ。)ヘリコプターや船舶も含むいまの物流インフラを使った小口輸送を増やすことは、環境汚染の観点から避けたいのもまた事実。

そこで注目されているのが、ドローン物流である。

ドローン物流、実証実験に選ばれた5つのエリアとは

ドローン物流とは、無人航空機を活用した荷物配送のことだ。

「平成30年度CO2排出量削減に資する過疎地域等における無人航空機を使用した配送実用化推進調査」(国土交通省・環境省連携事業)として、5つの検証実験地域が選定されている。

検証実験地域 協議会名 代表事業者名
福島県南相馬市 郵便事業配送効率化協議会 (株) 自律制御システム研究所
埼玉県秩父市 秩父市ドローン配送協議会 楽天 (株)
長野県白馬村 白馬村山岳ドローン物流実用化協議会 (株) 白馬館
岡山県和気町 和気町ドローン物流検証実験協議会 (株) Future Dimension Drone Institute
福岡県福岡市 福岡市ドローン物流協議会 ANA ホールディングス (株)

2018年7月、楽天が東京電力・ゼンリンと協働でドローン物流による個人宅へのお弁当の受注から配送までを成功させたとしてニュースになった。送電設備を活用したドローンハイウェイを構築し宅配を成功させた事例は、ドローン物流の試みのなかでも「世界初」だったという。これも、同事業の一貫だ。

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福岡市・ANA・エアロセンスは船舶輸送のドローン代替を目指す

対して福岡市・ANA・エアロセンスの「福岡市ドローン物流協議会」では、船舶輸送の一部をドローンで代替するという特徴を持つ。

代表事業者であるANAの強みは、航空機の運航管理およびオペレーションノウハウだ。気象に大きく左右されるドローン飛行において、このノウハウは不可欠だ。

一方のエアロセンスはソニーとZMPが共同出資する、自律型無人航空機によるセンシングやクラウドによるデータの処理・ 管理を組み合わせた産業用ソリューションの開発・製造から提供までを行っている。知見を活かし、自律飛行型ドローンを提供する。

ドローンは測量や点検、空撮画像からの三次元データ作成、リアルタイムでの俯瞰映像取得など、用途は幅広い。物流のみならず、離島や限界集落の生活を安心安全に導きえる可能性を秘めている。

ANAとエアロセンスの共同発表によれば、船舶輸送のドローン代替のみならず自動走行型宅配ロボットなどの活用も視野に入れているという。福岡市玄界島を舞台として、「ドローン物流」を皮切りに私たちの生活にどのような変化をもたらすのか注目が集まっている。