出版業界成長のカギは「電子コミック」、2018年市場規模は1兆5,100億円

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矢野経済研究所は、2018年の国内出版市場および電子書籍市場を調査を実施、8月30日にその結果を発表した。2018年の国内出版総市場(出版市場+電子書籍市場)は前年比5.0%減の1兆5,100億円とマイナス成長を予測している。電子書籍市場が拡大する中、紙文化はどのような形で生き残りの道を模索するべきなのだろうか。
出版業界成長のカギは「電子コミック」、2018年市場規模は1兆5,100億円

不況続く日本の出版業界

公益社団法人全国出版協会 出版科学研究所の「日本の出版統計」によると、既存の出版市場は1994年から2016年まで13年連続のマイナス成長となっている。近年、特に販売額の減少幅が大きいのはコミックで、1994年には約6,000億円だったが、2016年には3,000億円以下と半減している。

出典:「2018年8月 電子書籍の利用に関する調査」MMD研究所

一方、電子書籍はMMD研究所の「2018年8月 電子書籍の利用に関する調査」によると、利用者は44.7%とすでに半数弱の人が利用経験があり、今後ますます利用者は増加すると見込まれている。

出版業界の最新動向を探るべく、本記事では矢野経済研究所の2018年国内出版市場および電子書籍市場の調査に注目する。

この調査における電子書籍とは、スマートフォンやタブレット、PC、電子書籍リーダーなどデジタル媒体を用いて読む出版物とした。

電子書籍や電子雑誌、電子コミックを対象とし、教育書や医書は含まない。また、電子書籍市場規模は、出版社が販売する電子書籍(コンテンツ)販売額とし、事業者売上高ベースで算出した。ここでは、通信費や広告収入などは含んでいない。

※調査期間は、2018年5月~7月、 出版社、書店、出版取次会社、編集プロダクション、電子書籍ストア、その他出版関連企業を対象。調査方法は同社専門研究員による直接面接取材および電話取材、アンケート調査併用。

その結果、国内出版総市場自体はマイナス成長が続いており、今後も減少が予測されるものの、電子出版市場は拡大が続くと予測している。

市場全体は減少傾向となる一方、電子書籍は拡大傾向に

出典:プレスリリース

この調査では、まず、2017年の国内出版総市場(出版市場+電子書籍市場)を前年比4.3%減の1兆5,901億円と推計した(出版科学研究所の「2018年版 出版指標 年報」」より引用)。

国内の出版総市場はマイナス成長が続いている。この背景にあるのは、印刷メディアを用いた(既存の)出版物から電子書籍へのシフトである。この傾向は、コミックを中心に進んでいるものの、少子化や文字離れなどの構造的な減少要因がそれを上回っていると、同社は分析している。また、電子コミックについては、最近海賊サイトの問題も大きいようだ。

また、この調査では主要出版社の経営状況調査も行った。それによると、日本国内の出版社231社の2017年度の税引き後利益率の平均は3.0%となり、前年度と比較するとほぼ横ばいであったという。

出版社の利益率は、リーマンショックが発生した2008年頃に大きく下落し、その後、徐々に回復してきている。ただし、現在もかつての高収益体質から比べると、大きく見劣りする状況だという。

2018年は前年比5.0%減の1兆5,100億円と予測している。内訳は、書籍が同3.5%減の7,180億円、雑誌が同6.4%減7,920億円となった。また、2019年以降の出版総市場は年率3~4%程度の減少になると予測している。

このため、既存の出版市場と電子書籍市場を合算した出版総市場を出版コンテンツ全体として考えると、出版市場の減少は緩和されて微減ペースとなるという。この結果、2020年には1兆4,140億円となると予測している。

一方、電子書籍は2018年は2,400億円、そして2020年には2,880億円に拡大する。

雑誌は電子コミックが伸びることにより、大きなマイナスではなくなると予測している。このように、コミックについては、電子書籍が出版市場に与える影響が非常に大きくなっていると分析している。世界的にも日本のアニメは評価が進んでいることから、

インターネットの進化による「若者の紙離れ」が指摘されているが、それはゆっくりと進行しているようだ。これによる影響は、出版界だけではない。たとえば、日本製紙は、北米の新聞・出版用紙事業から撤退している。

紙媒体がすべて電子メディアに置き換わる日もそう遠くないかもしれない。