なぜガラケーは消えないのか?ユーザー半数が「不満なし」の背景

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記事の情報は2018-09-06時点のものです。

スマートフォンの普及により、ガラケーの出荷が大幅に減少している。IT調査会社のIDCによれば、2018年第1四半期における国内フィーチャーフォン(通称:ガラケー)の出荷がゼロになったという。しかし、日本独自の発達を遂げたガラケーを使い続けている層はまだまだいる。
なぜガラケーは消えないのか?ユーザー半数が「不満なし」の背景

2018年にガラケー調査をする理由

総務省の発表した平成29年通信利用動向調査によると、日本におけるスマートフォンの保有状況は75%を越えている。これは、世界各国と比べるとけっして高い数値とは言えない。日本独自の発達を遂げたガラパゴス携帯、通称ガラケー(注1)を使い続けている層が一定数いるからだ。

しかし、現在実用化に向けて開発が進められている5G回線のサービス開始にともない、多くのガラケーが通信を行っている3G回線が終了する可能性がある。

そのとき、ガラケーユーザーはどう動くだろう。スマートフォンを購入するのか、それともガラケーにこだわるのか?

先日MMD研究所では、ガラケーユーザー1,009名を対象に「2018年6月 フィーチャーフォン利用者の実態調査」を実施した。

日本独自の発展を遂げたガラケー。徐々に減少しているとはいえ、今でもおよそ5人に1人がガラケーを所有しているということが今回の調査で明らかになった。

(注1)MMD研究所では、通常「フィーチャーフォン」という正式名称を用いるが、この記事ではより一般ユーザーになじみの深い「ガラケー」を用いている。

この記事では、その調査結果をもとにガラケーユーザーの実態を紐解いていく。

2018年現在、5人に1人がガラケーを保有

事前調査において、全国の15~69歳の男女1万5,018人にプライベートで利用している端末を聞いたところ、スマートフォンを利用していると回答したのは全体の77.9%、ガラケーを利用していると回答したのは19.9%だった。

19.9%――この数値を高いと思われるだろうか、低いと思われるだろうか。

MMD研究所で過去に実施したガラケーユーザー対象の調査と比較すると、ガラケーの利用率は低下している。

「2016年6月フィーチャーフォン利用者実態調査」では、ガラケーユーザーは全体の31.2%。「2017年2月 フィーチャーフォン利用者のスマートフォンに関する意識調査」では23.9%だった。

年を追うごとにガラケーユーザーが減っていることは確かだが、2016年から2017年にかけては7.3%減少しているのに対し、2017年から2018年にかけては4%しか減少していない。

2018年現在でも全体の2割弱、言い換えればほぼ5人に1人がガラケーを持っているという結果が出たことは、調査担当者としても驚きだった。

ガラケーユーザー「約4人に1人」がスマホ乗り換えを検討

ガラケーユーザー(スマートフォンとの併用ユーザーは除く)2,364人にスマートフォンへの乗り換え検討状況をきいたところ、現在乗り換えを検討しているユーザーが23.8%、過去に検討していたが現在はしていないユーザーが17.5%、一度も検討したことがないユーザーが58.7%だった。

ちなみに同様の設問がある2017年の調査では、検討しているユーザーが20.2%、過去に検討していたが現在はしていないユーザーが22.9%、検討したことはないユーザーが56.9%という結果だった。

2017年から2018年にかけて、スマートフォンへの乗り換えを検討しているガラケーユーザーの割合が増えていることがうかがえる。とはいえ、2018年の調査でもスマートフォンへの乗り換えを検討していないユーザーの方がはるかに多く、全体の76.2%を占めている状況だ。

現役のガラケーユーザーは、ガラケーに対して不満を抱いてはいないのだろうか?

ガラケーユーザーのほぼ半分がガラケーに「不満はない」

本調査において、ガラケーユーザー1,009人を対象にガラケー端末への不満をきいたところ、全体の49.0%がガラケーに不満を持っていないことがわかった。

不満があればスマートフォンへ乗り換えるだろうから、当然といえば当然の結果だが、検討状況別の回答結果はどうなっているだろう。

やはり、スマートフォンへの乗り換えを検討していないガラケーユーザーの方が、ガラケーに不満はないと回答している割合が高い。一度も検討したことないユーザーにいたっては、7割近くがガラケーの機能・性能に不満を持っていないようだ。

一方、現在スマートフォンへ乗り換えようと検討しているユーザーのうち、不満はないと回答したのは18.5%にとどまる。

乗り換えを検討しているだけあって、ガラケーに諸々の不満は抱えているようだが、最も多い不満がガラケーに「時代遅れ」なイメージがあることだというのは興味深い。ちなみに、一度も検討したことがないユーザーで、ガラケーの「時代遅れ」なイメージを不満に思っているのは、7.0%に過ぎない。

3G回線が終了しても、スマホに乗り換えない可能性あり?

過去スマートフォンへの乗り換えを検討していたガラケーユーザー193人、一度も検討したことがないガラケーユーザー490人(計683人)を対象に、3G回線が終了し、現在所有しているガラケーを利用できなくなった場合どのように対応するかをきいてみた。

検討状況別にみていくと、過去スマートフォンを検討したことがあるガラケーユーザーは、スマートフォンの購入意向が高い。それに比べて、スマートフォンを一度も検討したことがないガラケーユーザーは、ガラホ(注2)の購入意向の方が高い結果となった。また、「その他」と回答した割合も比較的高くなっている。

(注2)「ガラケー+スマートフォン」の造語。ガラケーの形状・操作方法でありながら、スマートフォン用OSや機能を備えるモバイル端末を指す

「その他」のフリー回答をみていくと、「まだわからない」「料金を見て決める」という趣旨の回答が目立った。

現時点では態度を決めかねている様子が窺えるが、3G回線が終了してしまったとしても、現状から大きく変わる選択肢は選びたくない――そんな嗜好を持っているガラケーユーザーが多いことが推察できる。