空家対策特別措置法で変わったこと 対策をわかりやすく解説

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記事の情報は2018-09-11時点のものです。

空き家対策特別措置法は、近年の都市への人口集中や少子高齢化によって増加の一途をたどる空家に対処するために制定された法律です。この法律により行政が対応できる範囲が広がり、場合によっては撤去の代執行が行われるケースも出てきました。代執行にまで至らなかったとしても、「特定空家」に登録されれば罰金を貸される可能性もあります。空家を持っている場合、どのような対処をしておけばよいのでしょうか。空家対策特別措置法の成立背景や内容、注意点などについてまとめました。
空家対策特別措置法で変わったこと 対策をわかりやすく解説

都心への人口集中や少子高齢化はどんどん加速しており、住民がいなくなった空き家は増加傾向にあります。2033年には、空き家率が3割を超えるという予測もあり、喫緊の課題となっています。

空き家が増えるとその地域の衛生面、安全面、景観などにも悪影響を及ぼす可能性があります。こうした背景から、空家対策特別措置法が制定されました。空家対策特別措置法が施行されたことにより、行政が対応できる範囲が広がり、倒壊や衛生上問題があるうえで対応しなかった場合は所有者に罰金が科されるようにもなりました。

この記事では、空家対策特別措置法の内容や成立背景、また施行後3年でどのように変わったのかを解説します。

空家対策特別措置法とは

空家対策特別措置法は、正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、平成27年2月26日に施行されました。施行当初は一部条例の施行が留保されていたものの、同年5月26日からは完全施行されています。

国立社会保障・人口問題研究所の推計では、国内の世帯数は2019年をピークに減少していくとされています。すでに人口は減少に転じており、空き家の増加は加速していくでしょう。

そうした事態に対応するためには、所有者を把握する、立ち入り調査を行うといった基本的な対処が必要です。空家対策特別措置法はこうした対処をスムーズに行うために施行されました。

空家対策特別措置法で変わった4つのこと

空家対策特別措置法が施行されたことで、主に次の4点が変わりました。

  • 空家所有者の把握のための固定資産税情報の利用
  • 市町村による空家への立ち入り調査が可能に
  • 特定空家に対する助言・指導・勧告・命令・代執行
  • 「特定空家+勧告」で空家にも適用されていた税制優遇措置が除外

具体的にどのような変化があったのでしょうか。かみくだいて説明します。

固定資産税情報の利用が可能になる

空き家のさまざまな問題に対応するためには、空き家の所有者を把握する必要があります。空き家所有者を把握するためには不動産登記簿を確認するのが一番有効な方法です。

不動産登記には「表示に関する登記」と「権利に関する登記」があります。「表示に関する登記」は義務である一方、「権利に関する登記」は任意なので、空き家の所有者が亡くなって相続しているにもかかわらず、書類上は亡くなった親が権利者、実際の空き家所有者は子ども、というケースがよくあります。

こうした状況をより迅速に把握するため、固定資産税情報を行政が利用できるようになりました。状況をきちんと把握できると、空き家の対策もよりスムーズに進みます。

立ち入り調査が可能になる

空き家の立ち入り調査はこれまで「所有者へお願いする」形でしか行えませんでした。しかし空家対策特別措置法により、法律の後ろ盾で「指導」できるようになりました。具体的には空き家の所在や所有者を把握するための調査や空き家への立ち入り調査ができるようになったのです。

最大で強制的に空き家を取り壊せる

空き家の中にはそのまま放置していると倒壊する危険性がある、あるいは衛生上有害になる可能性があるものもあります。空家対策特別措置法が施行されるまでは、権利の問題もあってなかなか対処できませんでした。

しかし法律が施行されたことで、市町村が助言や指導をできるようになり、改善されない場合は勧告、そもそも措置が行われない場合は強制的な取り壊しも含む代執行が行えるようになりました。

税制優遇措置の除外対象になる可能性も

もともと住宅用地に対する固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1まで減額される「住宅用地の特例」という税制措置があり、住宅用地に適用されていました。一時的な空室と空き家の区別はつけづらく、実態として使われていない空き家でも税制優遇がされていました。

しかし空家対策特別措置法では、市町村が空き家対策の措置を取るよう勧告した場合、税制優遇措置の対象から除外する場合もあることが定められています。

空家対策特別措置法による影響

増え続ける空家を対処するために施行された空家対策特別措置法。これによって、空き家所有者には主に2つの影響があります。

「特定空家」に認定されると強制対処も

空家対策特別措置法が施行されたことで、そのまま放置すれば倒壊するなど著しく保安上危険になる恐れがある、あるいは衛生上有害な恐れがある空き家については「特定空家」に認定されます。

特定空家に認定されると市町村から助言や指導が行われ、対処しない場合は勧告、命令、行政代執行が行われます。

これまでは財産権の侵害などのリスクもあり、なかなか行政も手を付けられていなかった空き家へ対処ができるようになりました。

固定資産税の特例対象から除外される

特定空家に認定された場合、助言や指導までならまだよいのですが、勧告を受けると住宅用地特例の対処から除外され、次のように税金が増加する可能性があります。

  • 固定資産税が6倍
  • 都市計画税が3倍

また勧告にも従わなかった場合は命令が行われますが、命令違反では最大50万円の罰金が、代執行が行われた場合は費用の徴収が行われます。よきせぬ事態を免れるためにも、自身の状況を見極めた対策が必要です。

所有している空き家はどう対策する?

空家対策特別措置法が施行されたことで、自身や家族が所持している空き家をどうするか不安にかられている方もいるかもしれません。具体的にはどのような対処が考えられるでしょうか。

売却する

まず一番簡単な手段としてあげられるのが、売却です。売却してしまえば空き家を管理する手間もなくなり、税金を支払う必要もありません。また売却によってまとまった現金を得られるので、もっともメリットがある方法です。

しかしなかなか買い手が見つからないケースも多々考えられます。まずは不動産会社などを通して、売却が可能か調査してみましょう。

解体する

次に有効な方法は解体する方法です。更地にすれば、コインパーキングや月極駐車場、トランクルームなどへと幅広い活用が可能になります。

デメリットとしてはやはり解体には費用が掛かることでしょう。たとえば木造だと1坪あたり3〜4万円が相場といわれており、30坪だと解体費用だけで120万円ほど必要です。これに付帯費用も加わるので、トータル150万程度かかる計算に。手をつけられないケースも多いでしょう。

貸し出して活用する

賃貸物件として貸し出して活用するのも一つの手です。貸し出せば家賃収入を得られますし、立地が良ければ事業用賃貸にできるかもしれません。

また法改正で利用しやすくなった「空家バンク」や、Airbnbで広まった「民泊」を利用する方法もあります。

管理維持を行い所有し続ける

売却するための時間が取れない、あるいは解体する費用がないという場合でも、しっかりと管理維持を行っていれば問題になることはありません。

ただ管理維持を続けていても、空家の老朽化は避けられない問題なので、いずれにせよ将来どういった対応を取るかは考えておかなくてはならないでしょう。

できるだけ早く空き家への対策を

空家対策特別措置法は近年増え続ける空き家に対処するために施行された法律で、場合によっては、行政によって取り壊しが行われるケースもあります。また「特定空家」に認定されると税金が増加する、罰金が課されるなど、予期せぬ事態を招く可能性もあります。

空き家を所有している場合はこれを機に状況を見直し、売却する、解体する、あるいは貸し出すといった手段も視野に入れ、対策を検討しましょう。空家バンクや民泊といった活用方法もあるので、幅広い視点から空き家対策を検討するとよいかもしれません。