文科省が推進する「国際バカロレア」とは?グローバル教育の正解はどこにある

文部科学省は9月10日、「第1回国際バカロレアに関する国内推進体制の整備事業シンポジウム2018」を10月に開催することを発表した。そもそも「国際バカロレア」という言葉を、知らない人は多いだろう。「バカ」という言葉の響きから、ふざけたことなのかと疑ってしまいそうだが、実はれっきとした国際教育プログラムである。国際バカロレアとは一体どんなものなのか?なぜ今、文科省が推進するのか?詳しく解説する。

文科省が推進する「国際バカロレア」とは?グローバル教育の正解はどこにある

文科省が10月にシンポジウム開催を発表

文部科学省は、10月14日(日)に第1回「国際バカロレアに関する国内推進体制の整備事業シンポジウム2018」を開催することを発表した。

このシンポジウムでは、教育委員会、大学、企業担当者など幅広い人を対象に、国際バカロレアの意義や導入をめぐる現状や課題などについて情報共有が行われ、さらなる普及・促進を目指すという。

そもそも、「国際バカロレア」とはどんなものなのか。そして文科省がこれを推進するワケとは?詳しく解説していこう。

国際的な教育プログラム「国際バカロレア」とは

文科省によると、国際バカロレア(International Baccalaureate)とはスイスジュネーブに本部を置く国際バカロレア機構が提供する、教育プログラムのことである。※国際バカロレアは以下IBと表記

1968年に作られたこのプログラム。目的は多様な文化を尊重し、グローバルに活躍する人材を育成することだ。また、国際的に通用する大学入学資格(IB資格)を与え、国境を越えた大学進学を支援する側面もある。

現在、認定校では共通カリキュラムがあり、世界共通のIB試験、IB資格の授与などを実施している。

IBの教育を受けた日本人としては、宇宙航空研究開発機の宇宙飛行士、星出彰彦氏がいる。彼は高校2年生の時、IBプログラムを実施しているユナイテッド・ワールド・カレッジ・サウスイースト・アジア(シンガポール)に留学。日本帰国後は、IBディプロマ資格による受験で、慶応義塾大学理工学部に入学したという。

出典:JAXA公式ホームページより

認定校は世界150以上の国・地域において約5,000校

平成30年8月現在、世界150以上の国・地域にある約5,000の認定校において実施されているIBのプログラム。年齢により内容は、4段階に分けられている。

プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP) 
3歳~12歳を対象として、精神と身体の両方を発達させることを重視したプログラム【世界:1,509校 うち国内:22校】

ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)
11歳~16歳を対象として、青少年に、これまでの学習と社会のつながりを学ばせるプログラム【世界:1,398校 うち国内:14校】

ディプロマ・プログラム(DP) 
16歳~19歳を対象としたプログラムであり、所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めると、国際的に認められる大学入学資格(IB資格)を取得可能。原則として、英語、フランス語またはスペイン語で実施【世界:3,209校 国内:33校】

キャリア関連プログラム(CP) 
16~19歳を対象として生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視した、キャリア教育・職業教育に関連したプログラム。一部科目は英語、フランス語またはスペイン語で実施【世界:136校、国内:0校】

(引用:文部科学省「国際バカロレアについて」ページより)

「国際バカロレア」と日本のこれまで

そもそも、なぜこの国際バカロレア(以下、IBと表記)を文科省は推進しているのだろうか。

日本政府の目標にIBの記述が出てきたのは、2013年に出された「日本再興戦略 」の中である。グローバル化に対応する人材力の強化のため、教育をけん引する学校群の形成を図るという目的を掲げ、2018年までにIB認定校を200校に増加させると書かれている。

また、日本経団連は2016年の「今後の教育改革に関する基本的考え方」-第3期教育振興基本計画の策定に向けて-の中で、「グローバル人材に求められる素質や能力を育むうえで、IB教育は有効であり、その普及に向けた政府目標を達成すべきである。」としている。

しかし現状は、描いていた目標の200校にはほど遠い状況だ。現在、国内のIB認定校数は59校のみだという。

IBが大きな広がりを見せなかった理由は、そもそもIBに対する社会的認知や理解が薄かったこと。情報共有が足りなかったこと、そしてIBを正しく指導できる教員が不足していることなどが要因だといわれている。

停滞していたIB普及への道が、再び動きだした

2018年5月、日本におけるIBの普及を目的として、文部科学省IB教育推進コンソーシアムが設立された。今、再びIB普及に向けた活動が活発化しているのは、なぜなのか。

出典:文部科学省IB教育推進コンソーシアム公式サイトより

2017年5月に開かれた「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議」の中間報告では、近年の情報化やグローバル化は予測困難な時代になっており、変化を「前向きに受け止める力」が子どもたちに求められていると指摘している。そしてその力を育むために、IBの教育を推進すべきだというのだ。

また、学習指導要領改定の方向性が、IBとの親和性を高めたという。新しい学習指導要領が目指す資質・能力は、以下のとおり。これがIBが目指す人材像に合致しており、再びこれを本筋に加えることになったようだ。

1.生きて働く「知識・技能」の習得
2.未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成
3.学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養(※)

(引用:「国際バカロレアを中心としたグローバル人材育成を考える有識者会議」中間とりまとめの概要より)
※涵養とは、水が自然に染み込むように、無理をしないでゆっくりと養い育てること。

今後は、日本語母語にも重点を置き、日本の学習指導要領との親和性を高めたIB教育の普及の可能性を検討していくという。

世界と戦う力をつけるために、何が正解なのか

国ごとに違う大学入試制度、という課題からはじまった「国際バカロレア」。国際的な競争力、変化に対する柔軟性など、プログラムのメリットを理解し、取り入れる学校は増えている。

しかし一方で、「ゆとり教育」のように短期で終わってしまった教育改革の事例も過去にはある。文科省が旗を振り、幼児教育から大学まで、これを一律にあてはめようとすると、再び間違いを犯しかねない。慎重な検討が必要だろう。

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