自動運転車が高齢者の移動を変える「まちなかコンソーシアム」が目指すもの

最終更新日: 公開日:

記事公開時点での情報です。

日本総合研究所は8月29日、住宅地をはじめとした限定地域内において、自動運転技術を活用して高齢者などの近隣移動をサポートするサービスの事業構想を策定。「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」を設立したと発表した。 このコンソーシアムでは、自治会、自治体を含む産官学民連携で必要な車両やシステムの仕様、事業仮説について検討するという。
自動運転車が高齢者の移動を変える「まちなかコンソーシアム」が目指すもの

郊外ニュータウンの高齢者が直面する移動手段の問題

我が国では高齢化が深刻な問題となっている。総務省統計局の「統計トピックスNo.103 統計からみた我が国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで-」によると、65歳以上の高齢者人口は、昭和25年以降、一貫して増加を続けている。平成29年9月15日現在の推計では3,514万人、前年と比較すると57万人の増加となっている。

そして、この高齢化は、地方だけでなく、都市郊外でも急速に進行している。特に問題となるのが1970年代に集中的に開発された郊外ニュータウンだ。この多くは丘陵地に造成されたために坂道が多く、高齢者には徒歩による移動が負担となっているという。

交通手段も限られているため、ちょっとした買い物も自家用車を利用する人が多い。そのため、高齢で免許を返納すると外出できなくなるとの不安を抱えている人も多いのだ。

そこで、日本総研ではこうした課題解消のために高齢者の移動手段をサポートするための事業策定に乗り出した。

「まちなか自動移動サービス」は、運転手の人件費がかからない自動運転技術により、低料金の移動サービスを提供。低コストのため、利用者数が多くない地域でもビジネスとして成立しやすく、幅広い地域での導入が可能になると同社ではみている。

神戸市と連携し利便性の高い新しい交通ネットワークを実現

「まちなか自動移動サービス事業構想コンソーシアム」では、高齢化の進む郊外ニュータウンを50以上かかえ、近隣移動サービスの導入を検討している神戸市との連携をスタートさせる。

まずは、神戸市北区筑紫が丘自治会とともにワークショップや実証実験を行いながら、まちなか自動移動サービスの社会実装に必要な車両のほか、システムの仕様や事業仮説を検討する。

まちなか自動移動サービスは具体的には、以下のようなサービスを想定している。

【運行範囲】
住宅地内のあらかじめ決められたルート(片道2km程度以内の短距離)を走行。 地域内の店舗や公共施設、病院、バス停などへの移動をサポートし、いわゆるラスト&ファーストマイルの移動サービスとして機能
【運行速度】時速30km以下
【乗客】 乗合制
【乗降方法】
オンデマンド型(呼び出し制)。利用者は、あらかじめ決められた乗降ポイントの中から乗車と降車の場所をスマホアプリなどを通じて指定し、迎車を依頼

ここで気になるのは安全面での配慮である。このサービスでは、車内外の状況や車両の状態などを管制センターで遠隔監視する。また見通しの悪い交差点などでは、道路にセンサーを設置するなどの対策を講じるという。

また、導入・維持費用を抑えるため、市販の車両に自動運転システムを後付けで組み込むことを検討している。

さらに移動サービスで取得されるデータを活用し、店舗への販促支援や情報配信などを行うという。これは地域に密着したサービスとして認知され、地域活性化に貢献するための付加価値にもなるだろう。

コンソーシアムのメンバーは以下のとおり。

一般会員:あいおいニッセイ同和損害保険、NTTデータ、沖電気工業、関西電力、電通 など
オブザーバー:一般財団法人日本自動車研究所
協力会員:神戸市、神戸市北区筑紫が丘自治会、みなと観光バス など

活動期間は、2018年8月29日~2019年3月31日。

日本総研では、このコンソーシアムの成果を踏まえ、賛同する企業とともに、2020年度に事業体を設立し、まちなか自動移動サービスを各地の自治会など地域に導入するための支援を開始することを目指す方針だ。

今後、ますます高齢化社会が進んでいく。そして地方に行けば行くほど、移動手段の問題は深刻化するだろう。このコンソーシアムの試みが成功し、日本国中に拡がってもらいたいものだ。