グーグルの目指す「垂直統合のIoT戦略」とは?自社開発チップを外販する意味

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2018年7月、米グーグルはスマート機器対応の集積回路チップ「Edge TPU」を、ディベロッパー向けに10月から提供開始すると発表した。IoT分野の注目技術であるエッジ・コンピューティング市場で、グーグルは着々と「垂直統合」を進めている。
グーグルの目指す「垂直統合のIoT戦略」とは?自社開発チップを外販する意味

IoTの注目技術「エッジ・コンピューティング」とは?

センサーやネットワーク、デバイスのコストが下がったことで、あらゆるデバイスがネットワークに接続されるIoT(Internet of Things)が普及しつつある。

調査会社米IDCの発表によれば、全世界で生じるデータは、2011年の1.8ゼタバイト(1.8兆ギガバイト)から3030年には40ゼタバイト(40兆ギガバイト)まで増加するという。

こうしたなかで注目されているのがエッジ・コンピューティングという技術だ。

エッジ・コンピューティングは、端末の近くにサーバーを分散して配置し、データを処理するコンピュータ処理の方法だ。

IoTにおいては、センサーやデバイスといった端末の近くにサーバーを置くことで、コンピューティングリソースに最小限の時間でアクセスできる。つまり、エッジ・コンピューティングの導入は、端末利用者に対して高いレスポンスでサービスを提供できる点が大きなメリットだ。

エッジ・コンピューティングは、特に(1)コネクテッドカー、(2)製造オペレーション(工場)での活用が見込まれている。たとえば、次のような用途だ。

  • 高速で動く組み立てラインで不具合を検出する
  • 倉庫で在庫切れした瞬間に通知を送る
  • 自動車の衝突を回避する、よそ見を検知する
  • 渋滞の状況に応じて経路を探索する

IDC Japanの調査では、2017年末から2021年までに、これら2つのユースケースのために置かれる国内エッジ・コンピューティング用データセンターの拠点数は、約4倍に増加すると推定している。

垂直統合でIoT/エッジ・コンピューティング市場を狙う

こうしたなか、グーグルは2018年7月、機器対応チップ「Edge TPU」を提供すると発表した。

TPUは「Tensor Processing Unit」の略で、グーグルが機械学習のために同社が独自で開発している集積回路チップ。Edge TPUは、前述のエッジ・コンピューティングを実現するもので、コンピューターと物理的に接続するハードウェアモジュールとして提供され、ディベロッパーはエッジ・コンピューターに装着して使う。

こうした機械学習に最適化されたチップを開発しているのはグーグルだけではない。ソフトバンクに買収されたARM、クアルコム、メディアテックなども行っている。また、機械学習の「学習」ステップに利用されることの多いGPUは、エヌビディアが市場のリーダーとなっている。

こうした多数のプレーヤーが存在するなかで、グーグルには明確な優位性がある。機械学習開発に関わる垂直統合を進めている点だ。

データの蓄積や分析、学習を行うサーバーはGoogle Compute Engineがあり、機械学習フレームワークとしてTensor Flowが公開されている。

エッジで機械学習の判定処理を行うため、Edge MLというフレームワークが用意されている。機械学習を高速に行うため、サーバー側のCloud TPUや、エッジ側のEdge TPUが今回発表されている。これらすべての技術要素を備えているのはグーグルだけだ。

How Cloud IoT Edge works

Edge TPUは消費電力あたりの性能を最大限に高めるよう最適化されている。パフォーマンスや性能に限界のある小型の電子機器では、省電力性が大きなメリットとなる。

エッジ側でデータを保存・処理できるため、クラウド側との接続が切れたり、不要な情報がインターネット上を転送されたりするリスクが減る。個人が特定できる映像を扱う場合など、エッジ側で匿名化処理を行えば、プライバシーに関する懸念を抑えられる。