トヨタもBMWもライドシェアへ 「持たない」時代にメーカーはどう生き残るか

最終更新日: 公開日:
移動手段をサービスとして提供する「MaaS(マース)」は、シェアリングエコノミーの一種だ。本来は個人資産を有効活用する概念だが、企業もシェアリングエコノミーの波に飲み込まれ始めた。トヨタやBMWをはじめ、自動車の販売に突き進むべき自動車メーカーまで、積極的にカーシェアリングに取り組んでいる。
トヨタもBMWもライドシェアへ 「持たない」時代にメーカーはどう生き残るか

カーシェア、ライドシェアで自動車がサービスへ変貌

すべての移動手段がMaaSでサービス化

MaaS(マース)」という言葉をご存じだろうか。「Mobility as a Service」を略したもので、何らかの移動手段をサービスとして提供する行為を示す概念だ。従来のタクシーや宅配サービスも一種のMaaSではあるが、カーシェア、ライドシェアといったシェアリングエコノミーに分類されるサービスを指すことが多い。

そのシェアリングエコノミーは、個人の持つ有形または無形の資産を活用し、他者に有償提供する経済活動で、共有経済とも呼ばれる。具体例としては、自家用車でどこかへ移動する際に他者を相乗りさせるライドシェア・サービスなどを手がけるウーバー(Uber)や、空き部屋を旅行者へ提供する民泊サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)がよく知られている。

企業も参入するシェアリングエコノミー

個人の遊休資産という枠にとらわれず、企業の所有資産をレンタルするサービスもシェアリングエコノミーの一形態と見なすこともある。たとえば、自転車を貸し出すシェアサイクル、自動車を貸し出すカーシェアといったサービスがこれに該当する。

ただし、既存のレンタサイクルやレンタカーとの区別はあいまいで、予約から利用、返却、決済までの処理をすべてスマートフォンのアプリで済ませられる利便性が相違点らしい。

「所有する時代」から「融通し合う時代」へ

7割弱がライドシェア利用に関心あり

シェアリングエコノミーは、消費者に受け入れられ始めている。IDC Japanの調査によると、個人ドライバーによるライドシェアの利用に「興味がある」「興味はないが、メリット次第では利用を検討する」と回答した個人ユーザーは、67.8%にのぼった。「必要なものは所有して使う」という時代から、「融通し合って使う」時代へと変化しつつあるのだろう。

自動車メーカーまでカーシェアを開始

その変化に合わせ、カーシェアが注目されている。素早く業態変更できるであろうレンタカー会社だけでなく、駐車場所を確保済みというメリットを生かしてコインパーキング企業もカーシェア事業を拡大中だ。

興味深いのは、本来であれば自動車の販売を妨げるカーシェアなど目の敵にしそうな自動車メーカーまで、積極的に取り組んでいることだろう。体力のあるうちに事業展開をしてシェアリング時代の波へ乗り遅れない、という作戦と思われる。

最近の例では、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)が電気自動車(EV)2000台体制のカーシェア・サービス「We Share」を2019年第2四半期にベルリンで始めると発表した。VWは、人口100万人超の都市をターゲットとしており、ドイツ以外でも順次サービスを開始する計画だ。

出典:Volkswagen / Volkswagen starts “We Share” e-mobility car sharing in Berlin

ほかにも、BMWの「DriveNow」「ReachNow」、ダイムラーの「car2go」、メルセデス・ベンツの「Croove」、ゼネラルモーターズの「Maven」、フォードの「FordPass」など、さまざまサービス内容のカーシェアが存在する。

日本の自動車メーカーも、日産自動車の「日産e-シェアモビ」、本田技研工業(ホンダ)の「Honda EveryGo」などが同じ動きをしている。トヨタ自動車はハワイで「Hui」を開始したほか、国内でトヨタフリートリースとトヨタレンタリース東京を統合し、カーシェアを視野に入れた新会社のトヨタモビリティサービスを設立した。

さらに、各種カーシェア・サービスを紹介したり、個人間のカーシェアを仲介したりするNTTドコモの「dカーシェア」といったサービスまで登場している。

「シェア」対象は多種多様

シェアリングエコノミーの代表としてカーシェアを取り上げたが、多種多様なものが共有対象になりつつある。

MaaSだけでも幅広い

分かりやすい別の例として、自転車をシェアするシェアサイクルは、日本ではドコモの「バイクシェア」やメルカリ傘下の「メルチャリ」、中国発の「モバイク」「ofo」などが広まり始めた。米国の西海岸などでは、キックスケーター型の電動スクーターの人気が高まりつつある。

シェア対象は自動車などの移動手段に限定されない。自宅などの駐車場を貸し出すシェアパーキングも、冒頭で触れたMaaSに分類される。MaaSについては、世界のMaaS関連スタートアップ115社を整理した「MaaSカオスマップ」を眺めると、最新の全体像が把握できるだろう。

無形の財産もシェア

知識や技能という無形の財産も、シェアリングエコノミーの対象となってきた。

ビジネスノウハウの伝授やコンサルティングといった個人的スキルを対個人へ提供するサービスは、副業の一手段として有望だ。また、子育て支援者を仲介するサービス、地域の困りごとを住民の相互支援で解決するサービスなどは、少子化や過疎化に起因する課題の打開策になる可能性がある。オフィスシェア的なサービスは、空き家や空き店舗の有効利用につながり、地域活性化の布石になるかもしれない。

シェアリングエコノミーは発展途上

人類は、インターネットとモバイルネットワークで新たなコミュニケーション能力を、コンピューターやスマートフォンで高度な情報処理能力を手に入れた。現在のシェアリングエコノミーは、こうした能力で多くの人々が容易につながれるようになったからこそ成り立っている。

もたらされるメリットは大きいが、急速に立ち上がった新しい経済活動なので、既存サービスとのすり合わせが十分にできていない。ウーバーやリフト(Lyft)などのライドシェア・サービスは、自動車を相乗りに使うだけでなく、いわゆる「白タク」として運行するギグ・エコノミー的な面があり、タクシー業界の反発を招いている。民泊のエアビーアンドビーなどは、旅館業法で縛られている従来の宿泊業者から見たら「目の上のこぶ」以外の何物でもない。

このような問題は、2015年に発足したシェアリングエコノミー協会も認識しており、健全なビジネス環境と利用者保護体制の整備に取り組むとした。同協会には多くの会員企業が参加しているので、日本におけるシェアリングエコノミーの動向を追いかけるのなら、同協会のサイトは常にウォッチしよう。

出典:シェアリングエコノミー協会 / シェアリングエコノミー協会の設立発表会を行いました。