平均寿命と健康寿命のギャップを埋める「予防医療」最前線

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記事の情報は2018-09-21時点のものです。

高齢化にともない、医療費は増大し続けている。「平均寿命」に対し、日常生活に制限のない期間の平均である「健康寿命」、その差がの健康寿命を少しでも伸ばしていくことで、病院でのそこで、注目されているのが「予防医療」という考え方だ。これを受けたNECとメドピアグループ2つの取り組み事例を取り上げ、その後の展開を紹介する。
平均寿命と健康寿命のギャップを埋める「予防医療」最前線

「平均寿命」と「健康寿命」の差を埋めるために

「健康寿命」という言葉が盛んに聞かれるようになった。これは、「日常生活に制限のない期間の平均」という意味で、「平均寿命」とは異なる。

「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料(平成30年3月)」厚生労働省

厚生労働省の調査によると、2016年の男性の平均寿命80.98歳に対し、健康寿命は72.14歳、女性の平均寿命は87.14歳に対し、健康寿命は74.79歳だった。この差は男性8.84年、女性12.35年である。

つまりこの年齢差が大きくなればなるほど、医療費が増大するリスクがある。

また医療費増加の問題のみならず、介護されながら、病気と戦いながら寿命だけが延びるのではなく、少しでも健康でイキイキとした生活を送りたいというのは誰もが思うことである。

そこで注目されているのが「予防医療」という考え方だ。

NECと倉敷中央病院のAIを活用した予防医療への取り組み

ここからは、最近の企業の「予防医療」をめぐる動きを紹介する。

NECは、岡山県倉敷市の公益財団法人 大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院と、AIを活用した予防医療に向けた共創活動を開始する。これは、倉敷中央病院が2019年6月にオープンする「倉敷中央病院付属 予防医療プラザ」に、NECの「NEC 健診結果予測シミュレーション」を導入するというもの。

倉敷中央病院は、総合保健管理センターを1987年に設立。年間約3万8,000人の人間ドックや各種健診を行っているという。一方、近年の高齢化に伴い受診希望者は年々増加しており、予防医療の充実と受診体制の整備が必要となっていた。

そこで同病院では、総合保健管理センターを新築移転し、新たに「予防医療プラザ」を2019年6月にオープンする。

出典:「NEC 健診結果予測シミュレーション」の利用イメージ NEC

「NEC健診結果予測シミュレーション」は、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つである「異種混合学習技術」を活用し、そこから導き出された健診結果予測モデルを用いて開発したもの。

具体的には、健康診断データ(体重、腹囲、血圧、糖代謝、脂質代謝など)や生活習慣データ(運動や食事、飲酒など)をもとに分析することで、生活習慣病の判定に関係の深い9種類の検査値を数年後まで予測。

また、対象者が生活習慣を見直した際の将来的な検査値のシミュレーションを行うことで、対象者の行動変容を促すことが可能だ。

両者は、この「NEC 健診結果予測シミュレーション」を用いて、倉敷中央病院総合保健管理センターに蓄積されている過去5年間約6万人分の健康診断データを分析し、健診結果の予測の精度向上に取り組む。

さらに、倉敷中央病院に蓄積されている診療データも組み合わせて分析し、生活習慣と診療データの関連性を検証することで、発症予測まで視野に入れた技術検証を進め、予防医療プラザで利活用することも検討しているという。