SPIとは?結果から判断できること・導入ポイントと事例 - 人事採用に必要なワケ
SPI試験といえば、多くの企業の採用先行で実施されている「適正試験」であり、応募者の性格や能力を確認する方法としてよく知られています。
SPIは、仕事の適正や組織へのなじみやすさなどを判定するのに役立つとされています。しかし、SPIを通じて何が判断できるのか、企業にとってのメリットはなにかといった具体的な部分を理解せずに、盲目的に試験を実施している企業も少なくないようです。
この記事では、SPI試験の概要、導入のメリットや大企業の多くがSPIを導入している理由、そしてSPIを行うことで欲しい人材が手に入るのかどうかを解説します。
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SPIで採用担当が判断できること
まずは、SPIの概要について押さえておきましょう。
SPIとは何なのか
SPIは受検者の人柄と仕事への適正、組織へのなじみやすさなどを測定するために株式会社リクルートが開発した適正試験です。
その歴史は40年ほどにもなり、開発された当時から採用面接の重要項目として多くの企業に取り入れられてきました。
大企業はもちろんですが、実施企業の大半は中小企業であるといわれており、企業の規模にかかわらず支持されている検査です。
その内容は大きく分けて能力検査と性格検査に分かれており、それぞれ以下のような特徴があります。
能力検査
能力検査は、受検者の基礎的な能力を客観的に測ろうとするものです。
言語分野、非言語分野の2パターンの問題を出題し、そこで問われていることを正しく理解し、適切かつ効率的に回答を導き出せるかを測ります。つまり、目の前の問題をどういうプロセスで考えれば効率的に処理できるか、その問題解決能力を確認する検査ということです。
言語分野では記述内容の要点を性格に捉えられるかを測定する問題が出題され、非言語分野では数的処理能力、論理的思考力を測るための問いが出されます。
性格検査
性格検査は受検者の人となりを確認するための検査であり、その人が日常的にどのような考え方に基づいて行動しているか、どんな価値観をもっているかなどを多角的に把握するためのものです。
具体的には、さまざまな状況を想定した質問とともに2つの選択肢が提示され、どちらが自分の考えに当てはまるのかを選択してもらう形式をとります。
これは得点が高ければ高いほどよいというわけではありません。高い場合と低い場合のそれぞれに性格的な特徴があり、それを判断するための指標となります。
SPIを人材採用に導入する目的
SPIは、なぜ多くの企業に導入されているのでしょうか。大きな理由としては、採用面接やエントリーシートなどの限られた情報では見えづらい応募者の資質が把握しやすいこと、面接官の一方的な印象や主観に依存しない客観的な基準が得られることなどが挙げられます。
つまり、採用企業側の思い込みを排除し、できるだけ客観的な観点から応募者を評価できるメリットがあるためです。
たとえ採用担当が変更されても、応募者を同じ基準で平等に評価できるので、面接の実施のみでは採用に不安を感じている企業をサポートし、採用側と応募者の双方が納得できる採用を実現できます。。
SPIの結果から判断できること
SPIによって受検者の知的能力と性格を大まかに把握できるようになり、どんな強みや弱みをもっているのか、仕事への適正はどうかといった、採用にとって極めて重要な要素を客観的に判断できます。
これによって採用のミスマッチを防止し、自社で長く働いていてくれる人材を安定的に採用しやすくなります。採用現場でありがちな、即戦力だと思って採用しても、すぐに周囲となじめずに辞めてしまうといったリスクを軽減できるようになるわけです。
SPIを人事採用に導入している企業
続いて、実際にSPIを人事採用に導入している企業を紹介します。
SPIは現在、企業全体の約40%が導入しているとされており、そのうち7割以上が従業員数300人未満の中小企業です。そこで、特に中小企業を中心に、SPIの導入に成功している企業の紹介をしていきます。
フジワラテクノアート
SPIを導入した理由
醤油、味噌、清酒、焼酎などの醸造食品の醸造機械や建築・製造設備などのトータルエンジニアリングを手がけるフジワラテクノアートでは、独自のテストで応募者の知識や適正を測っていたが、その点数の高さと活躍できる人材の間にギャップがあることが課題となっていた。
導入した結果
SPIを導入した結果、面接の際にSPIの結果を参考にしながら質問できるようになり、一人ひとりの性格上の特徴を押さえた採用が可能になった。特に採用前に応募者の強みと弱みが把握できる点が重宝している。
オートビジネスサービス
SPIを導入した理由
車両管轄業務のアウトソーシングを手がけるオートビジネスサービスでは、定期的な中途採用の必要から、効率的かつ的確な合否判断をするうえで明確な基準を設けたいというニーズがあった。
導入した結果
SPIの導入によって自社で活躍する人材の特徴がわかり、組織との相性もチェックできるようになった。また、採用した人材が育ってくると、もう一度採用時に受けてもらったSPIを見直してもらうことで、その時点では見えていなかった特徴がわかるようになった。
武蔵商事
SPIを導入した理由
不動産の開発と賃貸を手がける武蔵商事では、採用の際にこれまでSPI以外の学力テストを実施していたが、結果が読み取りにくく活用できていなかった。そのため採用に必要な情報を網羅的に確認できるテストを必要としていた。
導入した結果
SPIを使った応募者の人柄を知ることで、面接官に面接支援報告書を配布し、それをもとに質問をしてもらうようになった。これによってイメージする人物像と本人とのギャップをなくし、安定した人材の確保が可能になった。
ワシントンホテル
SPIを導入した理由
ワシントンホテルでは、これまで他社の性格テストを採用の参考にしていたが、結果のバリエーションが少なかったため参考にならず、応募者の人となりを正確に理解するテストを必要としていた。
導入した結果
SPIを採否の参考にすることで、一人ひとりにフィットする結果を得られ、配置や配属の基準としたり、入社後のフォローに利用したりできるようになった。今後は人事施策とSPIをつなげる仕組みを作っていきたいとしている。
塩浜工業
SPIを導入した理由
大型建造物からトンネル、道路、商業施設などの設計、施工を手がける塩浜工業では、これまでSPI以外の適性検査を行っていたが、結果がタイムリーに得られず、わかりにくいことに不満を感じていた。
導入した結果
そこでSPIを導入し、最終面接で役員がSPIの結果を参照しながら質問をすることで自社の求める適性にマッチした人材の採用が可能になった。また、SPI導入後は入社後の評価が高くなる人材が増えた。
黒崎産業
SPIを導入した理由
建装資材販売、アスファルト舗装、デイサービスなど多角的に事業を展開する黒崎産業では、新しく事業を始めるうえで、はじめて新卒採用を実施するために、応募者の評価するための頼れるツールを必要としていた。
導入した結果
SPIを面接時の掘り下げ質問の基準としたことで、履歴書では必ずしも明らかにならない学生の本質が把握できるようになり、社員に新卒採用に対する関心を持ってもらうためのツールとしても役立った。
沖縄ワタベウェディング
SPIを導入した理由
沖縄でのリゾートウェディングを手がける沖縄ワタベウェディングでは、面接時の会話のみではわからない応募者の内面的な部分を把握するための指針を必要としていた。
導入した結果
SPIを導入することで面接時の印象とギャップのある応募者に対しても本質を引き出す質問が可能になり、人事から配属先へ情報を引き継ぐ際も客観的で食い違いのない報告ができるようになった。現在は、新卒採用だけではなく中途採用でもSPIを積極的に活用している。
SPI導入のメリット
次に、SPIを導入するメリットについて、特に代表的なものを3つ挙げておきます、
面接だけではわからないことがわかる
上述の企業事例のように、多くの企業がSPIを導入するメリットとして、面接だけではわからない応募者の性格や人となりがわかるようになることを挙げています。
たった数十分程度の面接では把握しづらい応募者の「本質」がある程度理解できるようになるわけです。
どんな応募者でも、面接では当たり障りのない回答をする傾向があり、印象をよくするための雰囲気づくりを心がけますから、そういったうわべの要素だけではなく、内面の部分にも踏み込んだ理解が可能になります。
ポテンシャルの発見ができる
SPIによって、応募者の強みや弱みを把握でき、その人のポテンシャルの発見をするのに役立ちます。
応募者にたとえ弱点があったとしても、それを補うほどの強みをもっている場合、それが自社の理想とする人材にマッチしているならば採用したいと考える人事担当者は多いはずです。
そういった適性を把握できることにより、採用後のフォローや配置場所の参考にできます。
知的能力と性格の2つが判断できる
知的能力と性格の2つの側面から応募者を測定することにより、多角的な人材評価の指針にできます。たとえ知的能力が高かったとしても、それだけで自社での安定した職務遂行を実現できるとは限りません。
性格的な特性を含めて、人材を総合的・網羅的に評価することにより、自社の業務を的確に遂行できるか、周囲と協調して仕事ができるかなど、入社後のパフォーマンスや適応に関する部分を評価できます。
海外企業が行う人事採用の仕方
最後に、海外の企業が一般的に行っている採用方法について紹介しておきます。日本における人材採用のポイントと比較することで、本当にSPIが欲しい人材を手に入れるためのベストな選択かどうかを検討してみてください。
海外企業が見る採用のポイント
欧米やアジア諸国では、主に必要な仕事に対して適応する人間を組織の内外から広く受け入れるジョブ型の採用が一般的になっています。
「この業務には○○のスキルや適性をもつ人材が必要だ」と判断したら、その都度募集をかけて採用し、然るべき給与を与えて働いてもらいます。
与える仕事(ジョブ)を基準として人材を採用し、そのポジションの仕事が必要なくなったら、その人材を解雇して辞めてもらいます。
解雇される側も、同じスキルや適性を必要としている企業に移ればよいと考えるため、日本における「リストラ」のように社会問題化するということはあまりありません。雇用側も被雇用側もそういった価値観を共有しているからです。
日本企業が見る採用のポイント
一方、日本の企業では、いわゆる年功序列や新卒での一括採用が一般的になっています。年功序列に関しては見直しを図っている企業も多くありますが、基本的には大学卒のスキルのない若者を一括で採用し、職務に必要な教育を行っていくというメンバーシップ型の採用がほとんどです。
メンバーシップ型の対義語が、仕事に必要なスキルや特性をもっているかというジョブ型の採用です。
ジョブ型の採用ポイントに対して、メンバーシップ型では人材の将来的なポテンシャルが重視され、自社で長く働いてもらうことを基準に採用を行います。
海外企業と日本企業の差異
こういった日本の採用基準に対しては、これまでさまざまな批判がある一方、企業や人材によってはメリットが大きいと擁護する声もあります。
日本が人材の将来的ポテンシャルに注目し、長期にわたって伸びそうな人材を育てるスタンスなのに対し、海外ではすでにスキルをもっている人材を任意のタイミングで組織に迎えるという方法が長く続けられています。
どちらのスタンスをとるべきかは、企業のポリシーやビジネス環境によって変わってくるでしょう。
SPIは人材の適性を見極めるという意味で、どちらの採用スタンスでも活用できるツールですが、あくまでの「手段」ですから、自社にとって理想的な採用基準、採用プロセスはどういうものかをしっかりと検討する必要があります。
欲しい人材の確保のために
多くの企業が採用プロセスに導入しているSPIについて、実際の導入事例とともに説明していました。
欲しい人材を安定的に確保するためには、自社に合った採用基準や採用のプロセスを発見することがもっとも重要となります。すでに説明したように、SPIには多くのメリットがあり、正しく活用すれば理想的な人材採用をサポートしてくれる強力なツールとなります。
ただし、それはあくまでも手段でしかありませんから、まずは自社の採用ポリシーを明確にし、そのために最適な方法は何かを模索する必要があります。そのうえで、本当に必要だと判断したならば、SPIを積極的に使っていくとよいでしょう。
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