最新Apple Watchは自動で緊急通報――ウェアラブルで医療、障がい者支援へ

アップルは、最新スマートウォッチ「Apple Watch Series 4」でスポーツやヘルスケアという方向性を鮮明に打ち出した。スマートウォッチはまだまだ成長が続くデバイスだが、スマートウェアやスマートイヤフォンといったウェアラブルデバイスに対する期待も高い。こうした技術は、障がい者の行動を支援することにも使われ始めている。

最新Apple Watchは自動で緊急通報――ウェアラブルで医療、障がい者支援へ

アップルがApple Watchの最新モデルを発表

Apple Watchのターゲットはヘルスケア

アップルが、スマートウォッチの最新モデル「Apple Watch Series 4」を発表した。従来のモデルに比べやや大きくなり、ハード面でもソフト面でも強化されている。加速度センサーの改良でより細かな動きの検出が可能になったほか、心電図の取得機能まで搭載された。アップルは、以前からスポーツやヘルスケアでの活用をうたっていたが、新型Apple Watchでその方向性をさらに強めたらしい。

心拍数の変化や不整脈の兆候だけでなく、転倒などまで検出できるうえ、身に着けている人が倒れて1分以上動かなければ自動的に緊急通報してくれる。LTEモバイル通信が可能で、GPSによる位置情報取得にも対応しているため、もしもの場合には心強い。

アップルがスマートウォッチ市場をリード

アップルは、スマートウォッチというガジェットの認知度を高め、市場をリードしてきた。

スマートフォン市場での「iPhone」対その他「Android」陣営という構図同様、スマートウォッチ市場でもApple Watchの「watchOS」と、グーグルが提供するAndroid系ウェアラブルデバイス向けOS「WearOS」(旧名称は「Android Wear」)を搭載する陣営とシェア争いが繰り広げられている。ただし、スマートフォン市場と異なり、アップルはスマートウォッチ市場で圧倒的な強さを誇る。

Counterpoint Technology Market Researchが2018年第2四半期の出荷台数を調査したところ、世界シェアはアップルのwatchOSが41%と半分近くあり、Android系OSは7%にとどまった。

興味深いことは、watchOSでもなくAndroid系でもない、メーカーの独自OSを採用するものが50%あったことだ。これは、現在のスマートウォッチ市場はまだ多彩なアプローチが試みられている段階にあり、さらに拡大していく可能性のある分野といえるだろう。ちなみに、2018年第2四半期の出荷台数は、前年同期に比べ37%多かった。

出典:Counterpoint Technology Market Research / Global Smartwatch Shipments Grew 37%YoY in Q2 2018, Apple Watch Series 1 the Most Popular Model

ウェアラブルデバイス市場全体の状況は?

スマートウォッチ以外も順調

知名度の高いApple Watchシリーズによって何かとスマートウォッチが注目されやすいものの、リストバンド型スマートデバイスはApple Watch以前から存在している。なかでも、歩数などを計測できるアクティビティトラッカーの人気は高い。

このように身に着けて利用するスマートなガジェットをウェアラブルデバイスと総称するが、スマートウォッチと同じく好調が続いている。IDCによると、2018年第2四半期の世界出荷台数は2,790万台で、前年同期の2,640万台から5.5%増えた。売上高は同8.3%増の48億ドル(約5,368億円)あり、比較的価格の高いスマートウォッチが貢献したそうだ。

ウェアラブルデバイス市場の今後について、IDCは最新の調査結果で出荷台数を、2018年に1億2,260万台、2022年に1億9,040万台と予想。この間の年平均成長率(CAGR)は11.6%となる見通しで、2022年まで2桁成長がおおむね続くとみる。

成長株はスマート衣類とスマートイヤフォン

IDCの最新調査で確認しておきたいことは、スマートウォッチ以外のデバイスの状況である。

2018年における出荷台数とウェアラブル全体に対するシェアは、スマートウォッチが7,240万台で59.1%、リストバンドが4,420万台で36.0%と、市場のほとんどを占める。これが2022年になると、スマートウォッチは1億2,110万台で63.6%あるのだが、リストバンドは4,550万台と伸び悩み、シェアを23.9%まで落とす。

このリストバンドの減少分を埋めるように伸びるのは、衣服や靴の形態で利用されるスマートデバイス(スマートウェアと呼ばれることが多い)と、スマートイヤフォンなどと呼ばれる耳に装着するタイプのウェアラブルデバイスだ。具体的なシェアは、2022年時点でスマートウェアが1,050万台で5.5%、スマートイヤフォンが1,230万台で6.5%となる見通し。

スマートウェアとスマートイヤフォンの絶対的な出荷台数は多くないものの、成長率が注目に値する。2018年から2022年にかけてのCAGRは、スマート衣類が37.5%もあり、スマートイヤフォンに至っては56.3%という急成長が見込まれる。

また、リストバンドはCAGRが0.8%で伸び悩む。一方のスマートウォッチは13.7%で、まずまずのペースだ。これから登場するスマートウォッチは、Appleがスポーツとヘルスケアをターゲットにするのに追従し、同様の機能を搭載してくるはずだ。そして、アクティビティトラッカーの多いリストバンドとユーザーを取り合うことになり、同じことができるならより高機能、多機能なスマートウォッチが選ばれる結果、両者にこのような差が生ずると考えられる。

出典:IDC / IDC Forecasts Slower Growth for Wearables in 2018 Before Ramping Up Again Through 2022

スマートな上着やTシャツ、スニーカーが続々

今後スマートウェアとスマートイヤフォンの成長が期待されるものの、これらの現在の状況はどうなのだろう。スマートイヤフォンは発展途上であるものの、ソニーの「Xperia Ear Duo」、グーグルの「Pixel Buds」、Appleの「AirPods」といったワイヤレスイヤフォンがかなり実用的になってきた。

これに対し、スマートウェアはまだまだ実験段階だ。とはいえ、ユニークな製品が実際に発売されたり、実現を目指してクラウドファンディングで支援を募ったりしているものも多い。そうしたスマートウェアをいくつか紹介しよう。

(1)タッチ操作可能な布で作られたグーグルとリーバイスのジャケット

タッチ操作に対応した布を実現するグーグルの技術「Jacquard」をベースに、ジーンズで知られるリーバイスがデニム製スマートジャケット「Levi's Commuter Trucker Jacket with Jacquard」として製品化した。自転車に乗る際の上着として最適だそうで、袖口を触れて連携させたスマートフォンを操作できる。

出典:Google / More than just a jacket: Levi’s Commuter Trucker Jacket powered by Jacquard technology

(2)「Amazon Alexa」で音声操作できるヒーター内蔵ジャケット

ヒーターを内蔵していて寒い冬でも快適に過ごせる「Mercury Intelligent Heated Jacket」という上着なのだが、気温や各種センサーで認識する体の動きに応じ、自動的に温度調整してくれる。もちろんスマートフォンから操作することも可能。さらに、「Amazon Alexa」経由で音声による操作にも対応している。

出典:Kickstarter / Ministry of Supply: The First Intelligent Heated Jacket

(3)タッチ操作できるLEDディスプレイ付きTシャツ

Tシャツ型スマートウェアの「BROADCAST」は、前面の胸に当たる部分にLEDディスプレイが組み込まれ、スマートフォンから操作して表示内容を変えられる。しかも、タッチ操作に対応していて、タップで表示のオンとオフを切り替え、スワイプで画像の変更ができる。実用性は疑問だが、紛れもなくウェアラブルデバイスだ。

出典:Indiegogo / World’s First Touch Enabled T-shirt

(4)未来のスニーカーはアニメを再生

こちらは、カラー電子ペーパーディスプレイ(EPD)を搭載するスニーカー「ShiftWear」。スマートフォンから操作し、静止画だけでなくアニメーションまで表示できる。役に立つ立たないは問題でない。これも立派なウェアラブルデバイスである。

出典:Indiegogo / ShiftWear: Customize your kicks

障がい者の役に立つであろうウェアラブル技術

とはいえ、実用的なウェアラブルデバイスに対する期待は大きい。スマートなウェアラブルデバイスが障がい者の行動を支援する可能性は高い。

音声による対話をリアルタイムにテキストへ変換するヘッドマウントディスプレイ(HMD)「LTCCS」は、聴覚障がい者の悩みを過去のものにしてしまうかもしれない。超音波でとらえた周囲の状況をユーザーの腕に伝えるリストバンド「Sunu Band」、同様の働きをするネクタイピンのような「BuzzClip」など、視覚障がい者を支援するデバイスもある。

出典:Indiegogo / LTCCS: The Live-Time Closed Captioning System

逆に、何らかの障がいを持つ人の情報発信を手助けするための研究も行われている。たとえば、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、ガンを患ったり事故に遭ったりして“あご”を失った人でも話ができるように、あごの筋肉の微細な動きを検出して音声信号を合成するウェアラブルデバイスを開発中だ。

こうした技術が発展していけば、現代人が強い近視でも眼鏡やコンタクトレンズのおかげでハンデなく生活できているように、さまざまな障がいを持つ人の行動範囲がウェアラブルデバイスで飛躍的に広がる。さらには、平均以上の能力を発揮できるようになる、身体拡張が当たり前になるかもしれない。

ICTの高度化により、今まで考えられなかったような場面で高機能なデバイスが使えるようになった。ウェアラブルは新しい技術だが、活用のアイデア自体は古いSF作品やアニメのなかにあふれている。そうした夢のデバイスが次々と実現されるのを見るのは、とても楽しいし、人類の幸せにつながるだろう。

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