日本上陸Essential Phoneが注目される理由 Nexusの次がない日本ピュアAndroid市場

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楽天モバイルとIIJ mioが、SIMロック・フリーのスマートフォン「Essential Phone PH-1」を発売した。ピュアAndroid端末に分類されるEssential Phoneは、アプリ開発の検証作業に使いやすいこともあり歓迎されている。ところが、本家グーグルの「Pixel」も日本での販売を発表。対決ともいえる様相を呈している。Essential Phone、そしてPixelは、Nexusを継ぐ存在となるだろうか。
日本上陸Essential Phoneが注目される理由 Nexusの次がない日本ピュアAndroid市場

熱い視線が注がれるEssential Phone

SIMロック・フリーのスマートフォン「Essential Phone PH-1」を、楽天の「楽天モバイル」とインターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJ mio」というMVNOサービス(いわゆる「格安スマホ」サービス)が取り扱い開始した。米国のエッセンシャル・プロダクツ(Essential Products)が初めて市場投入した第一弾モデルである。前面がほぼ全体ディスプレイで占められ、スマートフォンでは珍しいチタンとセラミックで作られたボディなど、美しいデザインは魅力的で、手に取って触れてみたくなる。

出典:Essential Products / Press Kit

ただし、米国での発売時期は2017年8月。1年以上過ぎての日本上陸だ。世界スマートフォン市場でシェア1位のサムスン電子が8月にリリースした最新モデル「Galaxy Note 9」の日本発売が期待され、3位アップルも「iPhone XR」「iPhone XS」「iPhone XS Max」という最新モデルを間もなく発売する今となっては、5万円弱という価格で受け入れられるとは考えにくい。

ところが、一部ユーザーはEssential Phoneに熱い視線を注いでいる。1年も前に発売されたスマートフォンのどこに、そのような魅力があるのだろうか。

Essential Phoneの魅力とは

Androidの父が開発

Essential Phone最大の魅力は、その生い立ちなのかもしれない。iPhoneと並んでスマートフォン市場を支配している「Android OS」の生みの親で、「Androidの父」と呼ばれるアンディ・ルービン氏によって開発されたスマートフォンなのだ。

現在Android OSはグーグルから提供されているが、元々はアンドロイドというソフトウェア会社の技術がベースにあり、グーグルのアンドロイド買収によって今の状態になった。そのアンドロイドを創業したメンバーの1人がルービン氏で、同氏がグーグルから独立後初めて市場投入したスマートフォンがEssential Phoneである。

Androidスマートフォンに少しでも興味がある人ならば、このストーリーの魅力に抗う(あらがう)ことは難しい。仮に凡庸なスペックの製品だったとしても、所有して自慢するというオタク心は満足させられる。

アクセサリーによる拡張性

スペックはどうだろう。「Snapdragon 835」プロセッサ、4GBのRAM、128GBのストレージ用メモリーなど、処理能力に問題はなさそうだ。もちろんGPSやBluetooth、指紋認証、NFC、各種センサーなど、スマートフォンで当たり前の機能も搭載している。アウトカメラは1300万画素カメラのデュアル構成という流行を取り入れつつ、カラーカメラとモノクロカメラの組み合わせという点がユニークだ。

大きな個性は、背面に設けられたアクセサリー用コネクタである。Essential Phoneに多種多様な機能を追加するガジェットが、磁石の力で簡単に取り付け可能な仕組みになっている。たとえば、「360 Camera for Essential Phone」というアクセサリーを使えば、周囲全体を写真やビデオで記録する360°全球コンテンツがEssential Phoneで作れてしまう。

出典:Essential Products / Press Kit

最新OSが使えるピュアAndroid端末

さらに、AndroidアプリやAndroidスマートフォン用サービスを作る開発者からみると、Essential Phoneの特徴は「ピュアAndroid端末である」という一点に尽きる。Essential(本質的な)という名前のとおり必要不可欠な要素だけ搭載し、余計な改造が施されていない「素」の状態のAndroid OSで動くため不確定要素が入り込みにくく、アプリやサービスの検証に使いやすい。

しかも、エッセンシャル・プロダクツは発売から2年間のOSアップデートと、3年間のセキュリティ・アップデートを保証している。つまり、当面は端末を買い替えることなく、最新のAndroid OSで検証作業が行えるのだ。

Android OSの最新版は8月にリリースされた「Android 9 Pie」で、もちろんEssential Phoneはすでにアップデート可能な状態にある。現時点でAndroid 9が利用可能なスマートフォンは、本家グーグルの「Pixel」シリーズを除くとごく一部に限られ、Essential Phoneの強みが見事発揮された。セキュリティ・アップデートの配信も早いので、安心して使い続けられる。

幅広いユーザー獲得には課題も

Essential Phoneの生い立ちはオタク心に訴えかけ、後付けアクセサリーはガジェット・マニアの心をつかみ、ピュアAndroidという特徴は開発者魂を揺さぶる。しかし、それだけでエッセンシャル・プロダクツは開発や量産などにかかったコストを回収して利益を確保し、次期製品や新たなアクセサリーの開発を続けられるだろうか。やはり、もっと幅広くユーザーを獲得しなければ、事業継続は困難だ。

価格とスペックはどうなのか

スマートフォンを選ぶ際に一般的な消費者が挙げる重要な条件は、価格とスペックだろう。

日本でEssential Phoneを購入する場合、楽天モバイルとIIJ mioは5万円弱という価格を提示しており、格安モデルとは言い難い。海外から購入すればもっと安く手に入るが、ハードルは高い。

スペックの面では、「おサイフケータイ」「ワンセグ」「micro SDカード」「ワイヤレス充電」に非対応など、日本の多機能スマートフォンを見慣れた消費者には物足りない可能性がある。防水性能は飛沫に耐える程度のIPX4で、デュアルSIMにも対応していない。イヤフォン用の3.5mmジャックも設けられていない。

期待の背面コネクタ用アクセサリーも、有線イヤフォンを接続するためのアダプター「Audio Adapter HD」が発表された程度で、一向に充実してこない。

機能や性能が目立って高いわけでも、価格が安いわけでもなく、最新モデルが次々と陳腐化していく今のスマートフォン市場において、苦しい戦いを強いられそうだ。

厳しさを増すスマートフォン市場

しかも、スマートフォン市場の成長は世界的に伸び悩み、特に先進国でその傾向が強い。

IDCの調査によると、2018年第2四半期における世界全体のスマートフォン出荷台数は3億4,200万台で、前年同期の3億4,820万台に比べ1.8%少ない。出荷台数の減少は、これで3四半期連続だそうだ。

1位のサムスンは前年同期比10.4%減と振るわず、これまで2位を保っていたアップルは同0.7%増にとどまり3位へ転落した。2位には同40.9%増という躍進でファーウェイ(Huawei Technologies)が上昇し、アップルの背後には同48.8%増という勢いでシャオミ(Xiaomi Technology)が迫っていて、中国勢の好調が目立つ。

スマートフォン市場は、成長が鈍化し、競争も激化している。先進国では普及率の伸びが頭打ちになっているうえ、スマートフォンの高性能化も限界に近いようで、買い替え需要もこれまでほど期待できない。まだ売れる余地のある発展途上国は、高価格モデルより安価な製品が好まれ、価格に対する下げ圧力が強い。

Essential Phoneは、このように厳しい環境で生き抜かなければならない。

“本家”Google Pixelも日本へ、Essential Phoneはどうなる

いきなり現れた強敵

楽観視できない状況にあるEssential Phoneに対し、まさかの強敵が現れた。グーグルが、Pixelシリーズの日本展開を正式に発表したのだ。しかも、「Pixel 3」などという名称が取り沙汰されている新型スマートフォンらしきイラストを掲げたティーザーサイトまで公開する勢いだ。

出典:グーグル / 新しいスマートフォン Google Pixel がまもなく日本にやってきます。

Pixelシリーズのスマートフォンは先代の「Nexus」シリーズ同様、グーグルがAndroidアプリなどの検証用として提供するリファレンス端末という性格を持つ。最新のAndroid OSが早く使えるなど、開発者にとって魅力的なデバイスである。検証目的だけならば、あえてEssential Phoneを選ぶ理由がなくなってしまう。

身売りのうわさまで

エッセンシャル・プロダクツについては、不穏なうわさも流れている。ブルームバーグが、Essential Phone PH-1後継モデルの開発は中断され、身売りの可能性まであると報じた

CNETの報道によると、エッセンシャル・プロダクツはブルームバーグの報道を明確には否定せず、サポート継続という方針を回答するにとどめたという。

エッセンシャル・プロダクツには、さらに完成度の高い新たなスマートフォンや、他社の提供できない独創的なアクセサリーなどを次々と出してもらいたい。さらに、Essential Phoneと連携するであろう開発中のスマートスピーカー「Essential Home」も気になる。何らかの形で事業が続くことを願っている。

いずれにせよ、Essential PhoneとGoogle Pixelのシェア争いは避けられないだろう。Nexusを継ぐ立ち位置を確立しつつ、どこまで市場を拡大できるか気になるところだ。