アマゾンAlexa対応レンジで攻勢 AI音声アシスタント市場はグーグルアップルとの三つ巴になるか?

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アマゾンがAI音声アシスタント機能「Alexa」に対応する新製品を、一気に11種類も発表した。スマートスピーカーだけでなく、Alexa対応の電子レンジや車載デバイスを投入し、AIアシスタント包囲網の構築を図っている。アマゾンを追うグーグルとアップルも負けていない。AIアシスタント市場は、当面これら3社の争いになる。

アマゾンAlexa対応レンジで攻勢 AI音声アシスタント市場はグーグルアップルとの三つ巴になるか?

AIアシスタント「Alexa」で攻めるアマゾン

一気に11種類の新製品を発表

アマゾンが米国時間9月20日、AI音声アシスタント機能「Alexa」に対応する11種類もの新製品を一気に発表した。

これら新製品は、「Echo」という名称でよく知られているAlexa対応スマートスピーカー製品系列の「Echoデバイス」を中心に、Echoと連携してさまざまな機能を実現させる製品群「Echoコンパニオン・デバイス」、Alexaの機能を家電製品などで使えるようにする「スマート・ホーム・デバイス」の3種類に分類される。

自動車やキッチン家電も音声対応に

Echoデバイスは、スマートスピーカー「Echo Dot」「Echo Plus」と、画面付きスマートスピーカー「Echo Show」の各新モデルに加え、自動車のダッシュボードに置いて使う「Echo Auto」を追加した。Echo Autoはスマートフォンと通信し、音声コマンドで操作する。Echo Autoを使えば、運転中でも視線を前方から、手をハンドルから離さず、Alexaの各種機能が利用可能になる。

Echoコンパニオン・デバイスは、Echoでの音楽再生時に低音を追加するサブウーファー「Echo Sub」、EchoをAV機器に接続するためのステレオアンプ「Echo Link」「Echo Link Amp」、手持ちのスピーカーをEchoデバイス化するアダプター「Echo Input」を用意する。そして、Echoなどを使ってセットしたタイマーの状態を表示する掛け時計「Echo Wall Clock」という、予想外だが意外に役立ちそうな製品も発表された。

そしてスマート・ホーム・デバイスは、「Amazon Smart Plug」と「AmazonBasics Microwave」の2種類が発表された。

Amazon Smart Plugはコンセントに挿して使うデバイス。Alexa経由で通電させるかさせないかを制御できる。例えば、デスクランプなど通電させるとそのまま動き出す単純なデバイスであれば、複雑なスマートホーム用システムを構築することなく、タイマー実行やリモートコントロールが可能になる。一方のAmazonBasics Microwaveは、なんとAlexa対応の電子レンジ。音声コマンドで食べ物や飲み物を温めるといった機能を提供するほか、アマゾンにポップコーンを自動注文するニッチな機能まで搭載した。

目指すはAIアシスタント包囲網の構築

安価なスマートスピーカーを足がかりに拡大狙う

アマゾンの戦略ははっきりしている。Echoのようなスマートスピーカーを安価に提供して大きなシェアを獲得し、それを足がかりにAlexaを生活のさまざまな場面へ広げていく、ということだ。

まず、気軽に購入可能な価格設定のスマートスピーカーで家庭へ入り込み、ユーザーに利便性を実感してもらう。そこから追加購入で家のあちらこちらにスマートスピーカーが置かれる状況を作り出し、どこからでもAlexaにアクセスできる環境へ移行させる。ほかのAV機器や家電製品も操作できるデバイスで利便性を高めると同時に、Alexaエコシステムを拡大させていく。続いて、家庭から飛び出して自動車の車内もAlexa色に染める。ビジネス向けの展開はまだ弱いが、オフィス向けAlexaも視野に入れているだろう。

こうしてアマゾンは、AIアシスタントの包囲網を構築する作戦を着々と進めている。

利用者の半数がスマートスピーカーのとりこに

実際にスマートスピーカーを使うと、期待していた以上にその便利さを感じるらしい。

Strategy Analyticsの調査によると、スマートスピーカーを利用している米国、フランス、ドイツ、英国の消費者は、7割が「予想以上にスマートスピーカーが役立っている」と考えているそうだ。それどころか、49%は「(今となっては)スマートスピーカーなしの生活など想像できない」とまで答えた。それほど便利なら追加購入する人は出るだろうし、持っていない人も買おうという気持ちになる。

スマートスピーカーの用途を質問したところ、「音楽やラジオ番組の聴取」の91%、「天気予報の確認」の73%、「日常的な調べもの」の69%、「ニュース入手」の67%といった項目が多く挙げられた。別の調査でも「音楽を聴く」は57%、「調べものをする」は48%あり、現在のスマートスピーカーにとって音楽が重要なコンテンツであると分かる。アマゾンがEchoを自社の「Amazon Prime Music」「Amazon Music Unlimited」だけでなく、「Spotify」に対応させているのも納得だ。

AIアシスタント市場、BIG5に明暗

グーグルとアップルも負けていない

音声アシスタントによるAIエコシステム構築を狙っているのは、アマゾンだけでない。スマートスピーカー市場でアマゾンに次いでシェア2位を確保しているグーグルも、「Google Home」シリーズでユーザーの囲い込みを図っている。

グーグルは「Android OS」の大きなシェアを武器に、スマートフォンの側からも音声アシスタント「Google Assistant」の利用者を増やした。しかも、純正スマートフォンの「Pixel」シリーズ、スマートイヤフォンの「Pixel Buds」で攻勢を強め、「AIファースト」戦略の実現を加速させようとしている。さらに、グーグルはGoogle Assistant対応の車載Android「Android Auto」を提供し、アマゾンと同様に自動車も対象とした。

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もちろん、アップルも黙っていない。「iPhone」などで音声アシスタント「Siri」を以前から提供し、2018年2月に発売したばかりのスマートスピーカー「HomePod」で早くも6%のシェアを獲得するなど、アマゾンとグーグルを着実に追いかけている。これから実施されるであろうワイヤレスイヤフォン「AirPods」の強化や、今後発売されるであろう新型HomePodなどが楽しみだ。

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精彩を欠くフェイスブックとマイクロソフト

アマゾン、グーグル、アップルと来れば、影響力の強さから「ビッグ5」と称されたり、頭文字を並べて「FAMGA」などと呼ばれたりする5社のうち、残るフェイスブックとマイクロソフトの動向も気になる。

フェイスブックについては、「Aloha」「Portal」という画面付きスマートスピーカーを2018年に発売するとうわさされているものの、公式な発表はない。AIの研究は実施しているので何らかの形でその成果がサービスや製品の形でリリースされるだろうが、今のところ不透明だ。

マイクロソフトは「Windows 10」でアシスタント機能「Cortana」を提供しており、2017年にサードパーティからCortana対応スマートスピーカー「Harman Kardon Invoke」が発売された。しかし、存在感は薄い。Cortanaに対応していたスマートフォン「Windows Phone」の失敗も影響したのか、音声アシスタントに対してはマイクロソフトのやる気が感じられない。それどころか、CortanaをAlexaに統合させる計画が発表されたり、各社のWindows 10搭載PCにAlexaが採用されたりといった具合で、まるでCortanaの店じまいを考えているかのようだ。

当面は3社の争いに

このような状況から、スマートスピーカーに代表される音声AIアシスタントの攻防は、当面FAMGAのうちの3社、アマゾン、グーグル、アップルのあいだで繰り広げられる。3社とも、生活のあらゆる場面にAIアシスタントを浸透させ、自社のエコシステムでカバーするつもりだ。

消費者の周囲は、いずれか1社の色に塗りつぶされてしまうだろうか。それとも、3色に塗り分けられるだろうか。まだ発展途上にある分野なので、3社の陰に隠れて見えない新興企業が頭角を現すかもしれない。とりあえずは、ニューヨークで現地時間10月9日に開催されるグーグルの製品発表会「Made by Google」が楽しみだ。

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