財布を持たず、スマートフォンや交通系ICカードを持っていれば出かけられるのは「NFC」と呼ばれる技術のおかげです。このNFCとは、具体的にどのような技術で、どのような使い方ができるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
近年注目されているキャッシュレス決済アプリについては、次の関連記事で詳しく解説しています。
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NFCとは
NFC(Near Field Communication)とは、簡単にいうと「かざして通信する」ための規格で、数センチという非常に短い距離でのみ使える近距離無線通信規格です。厳密にはNFCとは少し異なりますが、FeliCaやPasmoといったものも一種のNFCであると言えるでしょう。
NFCとFeliCaの違いは?
NFCとFelicaの違いは、「NFC」をどう定義づけるかということによって異なります。「NFC」を「近距離無線通信規格」、つまり「かざして通信する技術」と定義するのであれば、FelicaはNFCの1つということになります。
一方、「NFC」を「国際標準規格に準拠したシステム」と定義づけるのであれば、「Felica」は「NFC」の一種ということになります。なぜならFeliCaはNFCの規格を元にして、日本でソニーが開発した規格だからです。
両者の違いはさまざまありますが、特徴的なのが通信速度です。NFCの通信速度が424kbpsであるのに対して、FeliCaでは、ほぼ2倍の847kbpsとなっています。
FeliCaはNFCと比較して高速な処理できるため、日本ではFeliCaが広く普及しています。たとえば、PASMOやおサイフケータイにはFeliCaが採用されています。反対に、Felicaは海外ではあまり普及していません。
NFC対応のスマートフォンでできること(Android編)
Androidスマートフォンには、NFCに対応した機種が揃っています。
たとえば、EdyやIDなどは電子マネーを使って買い物の際の支払いができます。SuicaやPasmoといった交通系ICではこれに加えて運賃支払いも可能です。
おサイフケータイ
NFC対応のスマートフォンでできることの一つに、「おサイフケータイ」があります。おサイフケータイは、従来型のガラケーと呼ばれる携帯電話の時から対応機種があったので、使ったことのある人も多いと思います。
このサービスでは、携帯電話にFeliCaチップ(ICチップ)を埋め込むことで、電子マネーによる決済を行えるようにしたもので、日本独自で長らく利用されてきました。
おサイフケータイでは、専用のアプリを使って、お店で楽天EdyやQuickPayなどの電子マネーの支払いに対応したカードリーダーにかざすことで支払いを行います。
Android Beam(Android Q以降廃止)
NFC対応のスマートフォンでできるもう1つのことは、「Android Beam」です。
Android BeamはNFCが、搭載されたスマートフォン同士を近づけて動画や写真、連絡先などのデータを転送できます。写真や連絡先の転送であれば、メールやLINEで送れますが、アドレスやLINE IDをあらかじめ知っておく必要があります。
Android Beamは相手の情報を知らなくても、NFC搭載されているスマートフォンであれば送れます。そしてAndroid4.1以降はNFCでお互いを確認後、データ転送はBluetoothを使う仕様に変更しています。
ただし、残念なことにこのAndroid BeamはAndroid Qのβ版以降非搭載となっています。
NFC対応のスマートフォンでできること(iPhone編)
AndroidスマートフォンだけでなくiPhoneも利用できます。Androidスマートフォンに比べて導入が遅れたことなどにより、まだまだNFCの利用法に制限もありますが、着実にできることが増え、普及してきています。
Apple Pay
iPhoneで使えるNFCサービスの一つに「Apple Pay」があります。
Apple Payは、Appleのデバイス(iPhone, iPad, Apple Watch, Mac)に対応して、デバイスにクレジットカードなどを登録して財布がわりにできるサービスです。
Apple Payでは、クレジットカードのほかにIDやQuick Payのような電子マネー、またSuicaを使って電車に乗ることもできます。
NFCの機能・活用例
AndroidでもiPhoneでも同じように利用できるNFC。しかし、NFCには具体的にどういった機能があり、どのような使い方ができるのでしょうか。もう少し詳しく見ていきましょう。
NFCには、大きく分けて3つの機能があります。それらの機能を見たうえで、活用例などを確認していきます。
カード・エミュレーション
NFCの持つ機能の一つに、「カードエミュレーション」というものがあります。
これは、従来の非接触型ICカードに相当するものでNFC機能を持つスマートフォンなどのデバイスをクレジットカードなどのように使えるようになるものです。「おサイフケータイ」もこの一つです。
カードエミュレーションを使うには、あらかじめデバイスにクレジットカードや交通系ICなどのカードを登録しておく必要があります。
また、支払いに利用されるということで、NFCデバイスにセキュリティチップが搭載されている必要があります。
リーダー/ライター
もう一つの機能としては、「リーダー/ライター」というものがあります。
これは、ICカードのリーダーやライターとしてデータを読み取ったり、書き込んだりできる機能のことです。
これを使って、電子マネーや交通系ICの使用履歴を確認したり、機種によっては確定申告のe-Taxで使えたりするものもあります。
P2P
最後にあげられるのが、「P2P」と呼ばれる機能です。
P2Pというのは、「Peer to Peer」の略で、NFC機能を持つデバイス同士で通信を行うというものです。
これを使うことで、デバイス間でNFCをかざして、メッセージやデータを直接やりとりするといったことが可能となります。
NFCの活用例
大きく分けて3つの機能を持つNFCですが、具体的にどういったところで活用されているのでしょうか。
NFCが活用されているのは、何もスマートフォンだけではありません。たとえばNFCに対応している機器には以下のようなものがあります。
製品 | 型番例 | 使い方 |
---|---|---|
ソニー製アクティブスピーカー | SRS-XB32 | NFCを使ってワンタッチで接続などが行えます。 |
オムロン体脂肪計 | HBF-227T | 専用アプリと通信を行ってデータを管理できます。 |
ソニー製デジタル一眼レフ | α-7Ⅱ | カメラからスマホにNFC経由でデータを転送してSNSにアップロードするといった使い方ができます。 |
これからのNFC活用はどうなる?
「かざすだけ」で簡単に使える近距離無線通信規格であるNFCは、AndroidやiPhoneなどスマホに一般的に搭載されることで利用が急拡大しています。
従来から、日本ではNFCの独自拡張規格であるFeliCaが普及することで、「おサイフケータイ」での電子マネーの利用や、SuicaやPasmoのような交通ICの活用など幅広く利用されてきました。
NFCでは、これらに加えてカードリーダー/ライターとして、またNFCデバイス同士のP2Pでのデータやりとりなど、スピーカー、体脂肪計など従来FeliCaでは利用されていなかった分野への活用もされ始めています。
NFCは、「かざすだけ」で利用できるという簡単さに加えて、こうした幅広い分野で活用できるという柔軟性も相まって今後はさらに普及が拡大していくと考えられます。