エンゲル係数とは
エンゲル係数はドイツの社会統計学者エンスト・エンゲルが考案した生活指標です。エンゲル係数とは家計の分析指標の1つで、家計の総支出に占める食費の割合のことを指します。
一般的にはエンゲル係数が低いほど、家庭の生活にはゆとりがあると考えられており、生活にゆとりのない家庭ほどエンゲル係数が高くなると考えられています。
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上がり続けるエンゲル係数
総務省は毎月、家計調査という統計調査の中でエンゲル係数について調査しています。
エンゲル係数の推移を表したのが以下のグラフで、1980年から2005年までエンゲル係数は下降傾向にありましたが、2012年から増加傾向にあることがわかります。
エンジェル係数との違い
エンゲル係数と同じような家計支出に関する指標として「エンジェル係数」という係数があります。
エンゲル係数は家計の総支出に占める食費の割合を示していますが、エンジェル係数は家計の総支出に占める子ども関連の割合のことを指します。
エンゲル係数は低ければ低いほど生活が豊かだろうと考えられていますが、エンジェル係数は高ければ高いほど子供にお金をかけられる家庭ということで裕福であろうと考えられています。
ちなみに両者ともに、子育て家庭の支出において大きなウエイトを占めていることが多く、家計管理の際にチェックするべき指標です。
日本と世界のエンゲル係数の比較
日本と世界のエンゲル係数には、どのような違いがあるのでしょうか。まずは、下記のグラフをご覧ください。
※ 消費支出(国内家計最終消費支出から帰属家賃を引いたもの)と食費(飲食・酒類・外食の合算)をもとに計算
上記のグラフを見ると、主要先進国のエンゲル係数は20〜30%であることが多いといえます。
ここで取り上げた主要先進国の中でエンゲル係数が20%以下なのは、アメリカとドイツだけです。アメリカは世界GDPランキング1位、ドイツは4位であり、経済力がエンゲル係数を下げている要因だと考えられます。
しかし、GDPランキング3位の日本をはじめフランスやイタリア、スペインのエンゲル係数は25%前後と高い傾向にあります。経済的な豊かさを備えている一方で、食文化の発展が要因のひとつとして考えられます。
エンゲル係数の数値からわかること
エンゲル係数を分析することによって何がわかるのかについて説明します。
生活のレベルを示す
エンゲル係数はその家庭の生活レベルを表す1つの指標となります。
ただし、どのような家族構成なのかによってもエンゲル係数の相場は異なります。また、あまりにも収入が低いと家賃や光熱費などの固定的な支出を払うために食費を削るので、逆にエンゲル係数が低くなる傾向もあります。
よってあくまでも目安にはなりますが、適正なエンゲル係数は25%前後だと言われています。
食品の物価の上昇
食品の物価の上昇を分析するための指標にもなります。食料品はそのタイミングの豊作・不作などによる需要供給のバランスによって価格が変動しがちです。
食べる量や質が同じならば、食品の物価が上がればエンゲル指数は上昇しますし、食品の物価が下がればエンゲル係数は下降します。
近年は変わりつつある
近年ではエンゲル係数の高低が必ずしも豊かさや食品物価と連動しなくなってきました。これにはいくつかの理由が考えられます。
考えられる理由の一つが少子高齢化です。
子供を養育する必要のない高齢者の世帯の増加により、子供の養育のための費用が社会全体で少なくなっているので、その分食品に対する支出の割合が相対的に高くなっているということです。
二つ目の理由は消費支出の減少です。ライフスタイルの変化により車や持ち家などの贅沢品に対する支出が減少し消費支出全体が減少し、相対的に削減されにくい食費の割合が高くなっているという理由です。
エンゲル係数の求め方とその目安
実際にエンゲル係数はどのように求めれば良いのか、目安とともに説明します。
エンゲル係数の求め方
エンゲル係数は以下の式で算出できます。
家計を分析する場合は1か月単位で算出する場合が多いです。食料費とは外食を含めて飲食のために使ったお金のことを指します。
消費支出とは出費のうち「消費」に対して支出された費用のことを指します。何が消費支出なのかについては後ほど詳しく説明します。
エンゲル係数の目安
すべての世帯にて共通の目安が25%です。ただし、子育て世帯は子供の養育に関するお金が必要になるのでエンゲル係数が25%だと厳しいかもしれないので、20%代前半を目標にした方がいいでしょう。
子育ての必要ない単身者世帯や高齢者世帯は、エンゲル係数が25%よりも高くなっても余裕があるかもしれません。
また、年収が増えるほどエンゲル係数は下降します。世帯年収600万円前後でエンゲル係数25%として、これより低いと30%程度まで増加するかもしれませんし、世帯年収で1,000万円を超えているのならば20%程度を目安にしても良いでしょう。
いずれにしてもエンゲル係数30%代後半を超えると著しく年収が低いか、食費にお金をかけ過ぎている可能性があります。
自分の家のエンゲル係数の調べ方
自分の家のエンゲル係数はどのように調べればいいのでしょうか。より具体的にエンゲル方法の算出方法について説明します。
通帳を準備する
最初に、消費支出を求めるために通帳を準備します。消費支出は「家計の支出のうち消費に使ったお金」のことを指します。
1か月の収入から「貯金したお金」「ローン、借金の返済額」「生命保険などの各種保険料」「税金、社会保険料」の4点を除いた金額が消費支出となります。
まずは、通帳やこれら4つのお金に関するデータを見ながら消費支出を算出してください。
レシートを準備する
消費支出が算出できれば食料費を算出します。スーパーなどで購入した食品の代金はもちろんのこと、外出による飲食代も食料費に含まれます。
大抵の場合はレシートを保存しておき、あとでチェックすればいいのですが、自動販売機での買い物や割り勘したときの費用は忘れてしまいがちなので、きちんとメモしておきましょう。
実際にエンゲル係数を出してみる
消費支出と食料費が求められれば、先ほど紹介した計算方法でエンゲル係数を算出してみてください。
ちなみに、ライフスタイルによっても適正なエンゲル係数は異なるので、一概に高いから下げた方が良いということではありません。
家庭のエンゲル係数を上手に抑えるポイント
エンゲル係数が高いと感じた場合、エンゲル係数を抑える手段としてはどのようなことが考えられるのでしょうか。
1か月の食費を決める
エンゲル係数を抑える方法として考えられるのが、月のはじめに1か月にいくら食費に費やすかを決めることです。
家計簿をつけている方は、まずは収入と支出を洗い出して、食費を決めましょう。
エンゲル係数が高いと感じている場合は、エンゲル係数25%を目安に食費を決めるのがおすすめです。まずは平均値を目標に、金額を設定しましょう。
自分の買い物を見直す
自分の買い物について見直すことも重要です。せっかく買ってきても冷蔵庫の中で賞味期限を過ぎてしまい捨てている食品はないでしょうか。
あるいは、値段を調べずにコンビニなど高い小売店で食料品を購入していないでしょうか。たった数円〜数十円の違いでも、何度も繰り返せば大きな出費になってしまいます。
まさに塵も積もれば山となるです。日ごろの買い物を見直すことによって、何が無駄の原因になっているのかが明確になるでしょう。
外食などはルールを決める
特にエンゲル係数を上昇させる要因になりやすいのが外食です。外食すると1食当たりの費用が高騰するので、外食を少なくすることによってエンゲル係数を下げることが可能です。
食料費に占める外食費の割合が多い人は月に何回までしか外食に行かないなどのルールを決めると良いでしょう。
年代別エンゲル係数の平均値
エンゲル係数は年代によっても異なります。年代別の平均値については下記の通りです。
20代は、30〜50代と比べるとまだまだ収入が少なく、食費以外に使えるお金にも限りがあります。そのためエンゲル係数は高くなりやすい傾向にあります。
30代のエンゲル係数は24.6%で、全ての年代で2番目に低くなっています。20代よりも収入が増えることや、結婚による共働きによって世帯収入が上がることが、理由としてあげられるでしょう。
40代は、30代とほとんど変わりません。また、50代になるとエンゲル係数は大きく減少します。これは、さらなる収入増加によって、食にかけるお金が相対的に減ることが考えられます。
60代、70代では、退職によって収入が減少に転じることから、エンゲル係数も高くなる傾向にあります。
世帯別エンゲル係数の平均値
続いて、世帯別のエンゲル係数についてみていきましょう。1人世帯から6人以上の世帯までのエンゲル係数を、下記のグラフにまとめました。
エンゲル係数がもっとも低いのは1人世帯です。24.6%となっていますが、自炊や外食の頻度がエンゲル係数にも影響を与えていると考えられます。しかし、1人世帯といっても、一人暮らしの大学生や単身赴任の社会人、また男女によって食費は大きく異なります。
2人世帯は1人世帯に比べ、エンゲル係数は少し高めになります。家計に余裕ができることで、外食の頻度が高くなることが要因のひとつでしょう。
3〜4人世帯のエンゲル係数は、2人世帯とあまり差がありません。5〜6人世帯になるとエンゲル係数が急激に上がります。これは、子供が増えると同時に食費も上がることが考えられるでしょう。
エンゲル係数を一つの目安に
エンゲル係数は家計を見直すための1つの重要な目安となります。家計を見直したい人はエンゲル係数をチェックして多いと思うのならば見直した方が良いでしょう。
一方で、現状の生活で満足しているという人は無理にエンゲル係数を下げる必要はありません。世帯構成やライフスタイルによっても適正エンゲル係数は変化するので、自分の理想のエンゲル係数を探しましょう。