在籍出向とは | 転籍出向との違い・企業側の狙い・メリットデメリット

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記事の情報は2018-10-07時点のものです。

在籍出向とは、出向元の企業に籍を残したままで出向先の企業で働くことです。よく混同されがちな概念として「転籍出向」や「派遣」があります。この記事では、在籍出向の定義や目的、メリット・デメリットについて説明します。
在籍出向とは | 転籍出向との違い・企業側の狙い・メリットデメリット

在籍出向の定義

まずは、在籍出向の定義について説明します。

在籍出向とは、出向元の企業の従業員としての籍を残したまま他の企業に出向して働くことを指します。

出向先と出向元の間では、その従業員の在籍出向について出向契約という契約を結び、従業員は両方の企業と労働契約を結びます。

出向先の企業で働いていたとしても、出向元の企業と従業員の間の労働契約は消滅しないというのがポイントです。

転籍出向との違い

在籍出向と間違えられやすい概念として転籍出向があります。

転籍出向ではその名前のとおり、出向元の企業の籍を転籍先の企業に転籍して出向します。

出向元と出向先の間では転籍契約が結ばれて、出向元の企業と従業員の間の労働契約は消滅し、出向先の企業とのみ従業員は労働契約を結びます。

出向元との労働契約は消滅するために、在籍出向とは違い出向元の企業で一定の業務上の目的を達成したとしても、出向元の企業との労働契約が消滅しているので職場復帰できるかは保証されていません。

出向元の企業とは労働契約が消滅するので、出向先の企業の指示のみにしたがって仕事をします。

労働者派遣との違い

ちなみに「出向」と「派遣」はそもそもまったく別の概念ですが、混同されがちなので違いについて説明します。

転籍出向の場合は出向先、出向元の両方の企業と労働契約を結びますが、派遣の場合は出向元として労働契約を結びません。

また、転籍出向はどのような企業でもできますが、派遣契約によって従業員を派遣できるのは派遣業の許可を得ている企業だけです。

在籍出向を命じる企業側の狙い

では、従業員に対して在籍出向を命じる企業はどのような狙いがあって従業員を出向させるのでしょうか。

考えられる企業側の意図について説明します。

関連会社間の人材交流

まず意図として考えられるのが関連会社との人材交流です。

1つの会社で働いていると、どうしても仕事がルーチン化して、そこから習得できる思考力やスキルセットも似通ってしまいます。

しかし、会社を成長させるためには、多様な思考やスキルセットを持った人材を揃える必要があります。

従業員を出向させることによって、そのまま社内で成長して見につかないような思考力やスキルセットを持った視野の広い人材を育成しようというのが企業側の狙いです。

技術取得や現場経験を積ませる

また、転籍出向には技術取得や現場経験を積ませる目的もあります。

社内ではポストの関係で管理職に昇進させられないけれども有望な人材を子会社の管理職として出向させて経験を積ませたり、社内では身につかない技術を出向先の会社で習得させたりするというケースがあります。

また、子会社に技術指導のために出向するというケースもあります。このようなケースだと出向先から戻ると昇進することが多いです。

在籍出向における就業規則と保険

在籍出向する際に気になりがちなのは、就業規則や保険などのことです。

在籍出向すると、出向元、出向先の企業の労働契約を結びますが、就業規則や社会保険はどちら側のルールが適用されるのでしょうか。

就業規則について

まずは就業規則の適用について説明します。

理論的には両方の会社と労働契約を結んでいるので出向元、出向先両方の就業規則が従業員に対して適用されます。

ただし、両方を適用すると矛盾が発生することも多いので、出向契約によって就業規則の適用範囲を定めることが一般的です。

就業規則の中でも従業員の身分に関する規則は出向元の企業、勤務に関する規則は出向先の就業規則が適用されることが多いです。

労災保険について

労災保険については出向契約によってルールが変わることがあります。

ただし、一般的には実際に勤務している出向先で労災保険が適用されます。また、出向元、出向先の双方から給料をもらっている場合は、合算して適用されます。

雇用保険について

雇用保険は労災保険と違って、どちらか1つの会社の雇用保険しか適用されません。出向元、出向先のうち、主な給料をどちらが支払っているかによって適用される側が変わります。

労災保険と違い、どちらか一つのしか適用しないこと、主な給料の支払い側で適用される旨を記載してください。

社会保険について

社会保険は実際に在籍出向者に給料を払う方で適応されます。在籍出向の場合は一般的に給料を出向元が支払っているので、出向元側で社会保険が適用されます。

在籍出向におけるメリット

従業員にとって在籍出向することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

視野を広げることができる

在籍出向をすることによって、出向元の企業ではなかった新しい視点から仕事に取り組めます。

結果として複数の会社の従業員の視点が身につき、1つの会社で成長するよりも、視野の広い人材に成長できます。

多くの経験を積むことができる

従業員に経験を積ませようとしている意図で在籍出向を命ずる企業も多いです。

若手の場合は純粋に業務経験が詰めますし、経歴を積んだ従業員でも環境が変わることによって、今まで経験しなかった新しい経験を積めます。

出世へと繋げることができる

また、在籍出向は出世にもつながりやすいと言われています。

出向先の企業で経験を積ませることによって、出向元の企業に戻って昇進したときに活躍できる人材に成長させようという意図で、従業員に出向を命じる企業は多いです。

出向先できちんと実績を積めば出世しやすいと考えられます。

在籍出向におけるデメリット

在籍出向は、従業員にとってデメリットになり得ることもあります。どのようなデメリットがあるのかについて説明します。

物事を一から覚える必要がある

まず、今までとは別の職場で働くことになるので、仕事に関して一から覚えなければならない必要があります。

単純な事務作業であっても企業によってルールが違う可能性が高いので、はじめのうちは慣れずに煩わしく感じるはずです。

生活環境の違いを受け入れる必要がある

勤務地はもちろんのことで、通勤の仕方や、居住地まで変わる可能性があります。

また、出向元と出向先の職場のカルチャーの違いによって働き方も変わり、ひいてはライフスタイル自体も変わる可能性があります。

生活環境の変化に慣れ、人間関係なども新しく構築しなければならないのでストレスを感じるはずです。

待遇が悪くなる可能性も

メリットの部分で出世につながりやすいと説明しましたが、雇用維持や人員整理のために在籍出向させられる場合があります。

企業側がそのような意図で在籍出向を行う場合、出向前の条件よりも雇用待遇が悪くなることも考えられます。

在籍出向の定義を正しく理解する

在籍出向について説明しましたが、ただ出向を命じられたから職場環境が変わって大変だなとネガティブに考えるのではなく、出世につながる異動だとポジティブに考えてください。

また、在籍出向することによって、一つの会社だけで働いていては身につかない広い視野やスキルセットが身につくので、昇進が約束されていない場合でもキャリアアップやスキルアップにはつながりやすいです。