終身雇用の崩壊で、見直される「退職金」制度
今、退職金制度に変化が生まれ始めている。制度の見直し廃止、制度自体を設置しないという企業も増えてきているという。
そもそも退職金制度は、終身雇用を前提として設計されてきた。働き方の多様化で、転職するのが当たり前という時代において、その存在意義が問われているのだ。
では、実態はどうなっているのだろうか。退職金制度がある人の割合や、退職金の使い道について調査した結果を紹介する。
※この調査は、10代~70代の男女1,087名を対象に、インターネット調査で2018年9月に実施されたものである。
7割以上の人が「退職金制度」があると回答
まず、現在就業中もしくはすでに退職済みの人に、退職金制度があるか(あったか)聞いた。その結果、73.7%の人が「はい」と回答した。退職金制度は調査対象となった人の中では、まだまだ多数派のようだ。
出典:プレスリリース
次に、退職金制度がある人に業種を聞いた。その結果、「メーカー」が22.6%ともっとも多かった。次に「公的機関」が12.2%、「不動産・建設・設備」が9.1%と続いた。
出典:プレスリリース
使い道は「海外旅行」と「貯蓄」が多数
退職金の使い道について尋ねたところ、もっとも多かったのは「海外旅行」という回答で53.0%だった。
旅行先については、「国内旅行」の20.0%に比べ、「海外旅行」が2倍以上である。現役時代はなかなかまとまった休みがとれない背景があり、退職後に長期で「海外旅行」に行きたいという希望を持つ人が多いのかもしれない。
また、2位は「貯蓄」で52.2%となった。
退職金の使い方は堅実な傾向か
退職金で旅行に行きたい(行った)人に、いつもより豪華な旅行をしたいか、豪華な旅行をする場合どこにお金を使うか聞いた。
出典:プレスリリース
その結果、男性は「いつもより豪華な旅行をしたいとは思わない」が34.4%と、もっとも多くの回答を集めた。しかし、女性は「ホテル」が30.3%との回答がもっとも多かった。
男女でお金をかけたいポイントに差があることが、全体として堅実な傾向がうかがえる。
人生100年時代と言われる中、退職金を一気に使うのではなく、生活を楽しむために少しずつ使おうと考える人が多いのかもしれない。
出典:プレスリリース
退職金の金額は「1,000万以上」が多数派
最後に、退職金の金額を聞いた。その結果、もっとも多かったのは「2,000万円~3,000万円未満」の21.4%だった。過半数の退職金は「1,000万円」以上であることがわかった。
出典:プレスリリース
この額を多いと捉えるか、少ないと捉えるかはライフプランや世代によって変わってくるだろう。
若い世代は、老後にもらえる年金は当てにできないと考える人も多く、自分で備える意識は高い。
また転職を考える人が多い今、「退職金」はもはや企業を選ぶ際のポイントにはなりえない。福利厚生は、入社してすぐに使える、恩恵を享受できるものにシフトしている傾向だ。
一方、定年が近づいてきている世代にとっては、退職金は目標でもあり、これまで勤め上げてきたご褒美のようなものとなっているだろう。
こうした世代間のギャップを加味した上で、今後退職金の制度をどう変えていくべきか。企業は慎重な検討を重ねる必要があるだろう。