楽天モバイル携帯キャリア事業開始へあと1年、次世代通信の新たな競争

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楽天は10月29日、インドのテックマヒンドラ社と連携し、次世代ネットワークの実験施設を設立すると発表した。2019年10月の「移動体通信事業者」サービスを開始まで1年。電力会社の送電鉄塔などを携帯基地局として活用する方針を発表しており、主要な電力会社との提携もほぼ完了している。強固な楽天経済圏の確立に向け、楽天はゆっくりと、しかし着実に足場を固めている。
楽天モバイル携帯キャリア事業開始へあと1年、次世代通信の新たな競争

楽天モバイル、現在は「仮想移動体通信事業者」

すでに楽天モバイルは、携帯電話事業者だと思っている人も多いだろう。しかし厳密にいえば、そうとは言えないのである。

現在楽天モバイルは「仮想移動体通信事業者(MVNO)」である。自社で設備を持たず、ドコモの通信設備を借りて通信サービスを行っている事業者だ。格安SIMを利用した通信サービスの多くは、このMVNOである。

そして2019年10月から楽天が参入するのは自社で通信設備を持つ「移動体通信事業者(MNO)」。ドコモ、ソフトバンク、KDDIなどと同じ土俵に上がるというわけだ。

楽天モバイルはMVNOでは契約数・シェアトップを誇っているが、大手3社が待ち構えるMNOへの参入に向け、同社は着々と足場固めを進めている。

【追記11月1日】
楽天モバイルは、2018年11月1日、決済、物流、通信ネットワーク分野において、KDDIとの提携を発表した。

楽天は基地局設置へ電力会社と提携

2017年12月に携帯キャリア事業への参入を発表した楽天モバイル。

設備投資費用を抑えるため、電力会社が保有する送電鉄塔や配電柱、通信鉄塔などの活用を決定。全国の電力会社との提携を進めてきた。

2018年4月に総務省からも計画認定がおり、第4世代携帯電話システム(4G)用周波数(1.7GHz帯)において、2019年10月から移動体通信事業者(Mobile Network Operator)としてのサービス開始を目指している。
 

出典:2018年8月発表「第2四半期決算資料」より

次世代通信事業へ投資を加速

楽天は「楽天市場」のEコマース事業をはじめ、物流、通信、宿泊、金融など幅広い分野の事業展開で、楽天経済圏を形成している。中でも、通信事業はEC・決済と並ぶ3柱のうちのひとつだ。

出典:2018年8月発表「第2四半期決算資料」より

10月29日には、インドのテックマヒンドラとの提携を発表。世界水準の次世代ネットワークに特化した実験施設を、東京とバンガロールに設立する方針を打ち出した。

テックマヒンドラは、自動車や情報テクノロジーなど18の産業分野で事業を展開しているマヒンドラグループの企業で、モバイルネットワークやIT、クラウド、エンターテインメントなどさまざまな分野における技術的な強みを持つ。

楽天が推進する仮想化アーキテクチャを採用した効率的なネットワークシステムを融合し、モバイルネットワークを活用した開発を進めるとしている。

「MNO参入は難しい」懸念する声も、楽天は自信

実は2018年第2四半期決算説明会において、ドイツ証券 アナリスト風早隆弘氏から、次のような質問があった。

「楽天の MNO 事業は、株式市場だけではなく、業界でもうまくいくと思われていない。マーケットやメディアでの報道では、この事業はうまくいかないことを前提にしているが、私たちは何を理解できていないのか。日本のマーケットにはどんな魅力があるのか、アップサイドで何が魅力なのか。」(風早氏)

これに対し、常務執行役員でテクノロジーディビジョン CTO のタリア氏は、この事業に対する自信を見せた。

「事業の成功には自信を持っている。コスト削減は選ぶ技術によると考えている。ソフトウェアで定義されるネットワークとこれまでのネットワーク手法を比較すると、明らかに私たちの戦略が優れたものであるとご理解いただけると思う。当社が導入するテクノロジーインパクトは、他社と一線を画すものであると考えている。」(タリア氏)

また、日本において次世代の技術は変革の途中であるとも指摘。詳細については12月には発表したいとしたが、楽天が目指すのは「シンプルな次世代の技術」だという。

最近では、ソフトバンクの次世代インフラへの投資は活発化しており、ドコモも5G通信の開発ではリーダーシップを見せている。

楽天が携帯キャリア事業者として、果たしてどのような一手で勝負に挑むのか。年内の発表に期待したい。