2023年までにAI顔認証で行方不明者は80%減少する|10の未来地図をガートナーが発表

ガートナーは10月に米国で開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2018」の中で、2019年以降にIT部門およびユーザーに大きな影響を与える10の戦略的展望を発表した。テクノロジーの進化のスピ―ドが早く、企業はそのスピードに追い付かなくなっている。どうすればこの時代に、遅れをとることなく成長を続けられるのか。

2023年までにAI顔認証で行方不明者は80%減少する|10の未来地図をガートナーが発表

テクノロジーの概念は絶えず変化する

テクノロジーの進化は、企業が追い付けないほどに速くなっている。大きなイノベーションが次々に起こることは、企業にとってある意味恐ろしいことかもしれない。

しかしその状況を嘆くのではなく「変化が起こることを前提に、実践的な行動指針を立てるべき」だと、ガートナーの担当者は語っている。

継続的な変化をいかに資産に変えるか。その視点で企業の戦略を立てる際の指標として、10の展望は発表された。

デジタル・イノベーションの継続から生まれる変化に関連し、AIやそれに関わる人材、組織などについてまとめられたこの展望。

一見関連のない領域だと思うかもしれないが、そこから自社の戦略や指針のヒントを見つけ出すことは可能だと、同社は語っている。

ガートナーが描く10の未来地図

ガートナーが発表した重要な戦略的展望は、「AIの普及と関連スキルの不足」、「組織文化の進展」、「プロセスのプロダクト化」という3つの変化に関連したものである。

1.AIは一部の専門家によって執り行われる「魔法」

2020年末にかけて、AIプロジェクトの80%は、組織内のごく一部の稀なスキルを持つ専門家によって執り行われる「魔法」であり続ける。

AIを駆使する企業は増えているが、専門的な人材の育成がそれに追い付いていない状態だ。AIプロジェクトの大半で、ITを魔法のように駆使する人々がその腕を振るう状態が続くという。

企業がAIを珍重するのをやめ、何よりもビジネス価値に注力するようになるまでこの状態は続くと、同社では分析している。

2.AI顔認証で、2018年に比べて行方不明者が80%減少

2023年までに、AI顔認識機能により、成熟市場における行方不明者は2018年に比べて80%減少する。

AI顔認証の進化は、子どもや高齢者などの情報を取得する重要な選択肢となるという。

ただし、この分野で大きな進展が見られるのは、確実な画像取得、画像ライブラリの開発、画像分析戦略の確立が実現すること。そして顔認識技術が一般市民に受け入れられるようになることが前提だという。

3.AIバーチャル・ケアで救急診療件数は2,000万件減少

2023年までに、慢性疾患患者は、AIを搭載したバーチャル・ケアに登録するようになり、米国内の救急診療の件数は2,000万件減少する。

従来の対面式医療サービスより利便性やコスト効果が高い「バーチャル・ケア」は、医師不足の地方などでも活用が期待されている。

こうした医療の変革を起こし、医療機関の競争力を強めていくためには、まずは従業員の組織文化面における姿勢や医療サービスの財務モデルの変更が必要だという。

4.企業のインターネットハラスメント防止対策は失敗する

2023年までに、組織の25%が、インターネット上のハラスメント(ネットいじめ)を防止する目的で合意書への署名を従業員に要求するが、その取り組みの70%は失敗に終わる。

情報化社会の中で企業の信頼を維持し続けるために、従業員へのSNS教育は重要な課題である。しかし単に形だけの署名を行わせるだけでは、ハラスメントはなくならないと同社は指摘する。

必要なのは、ネット上のハラスメントを防止する措置と、厳格な定義、規則、行動監視の原則がバランスよく盛り込まれた現実的なポリシーを作成することだという。

5.ダイバーシティとインクルージョンを備えた組織は、財務目標を上回る

2022年末にかけて、ビジネスの最前線で意思決定を下すチームが、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)を備えた組織文化と真剣に向き合っている組織の75%は、財務目標を上回る。

受容的なチームをつくるには、性別や人種といった単純なダイバーシティを獲得するだけでなく、異なる働き方をする人材やさまざまな考えを持つ人材を取り込んでいく必要があるという。

ダイバーシティとインクルージョンの取り組みを、現場レベルまで落とし込めるかどうかは、ビジネス成果に直結するという。受容的な組織文化を培うリーダー人材を育成も重要だろう。

6.パブリック・ブロックチェーンの75%が被害を受ける

2021年までに、パブリック・ブロックチェーンの75%が、「プライバシー・ポイズニング」の被害を受ける (プライバシー法への準拠を阻害する個人データが挿入される)。

プライバシーの問題は、企画・設計段階から対策をとる「プライバシー・バイ・デザイン」が重要だ。これをせずにブロックチェーン・システムを実装してしまうのは危険だ。

個人データで汚染された、いわゆるプライバシー・ポイズニングを受けたパブリック・ブロックチェーンは、ほかの台帳の代わりとすることも、匿名化することも、共有台帳から構造的に削除することもできず、プライバシー法への準拠義務を果たすための、記録保持の必要性に対処できなくなるという。

7.インターネット広告収入は減少する

2023年までに、eプライバシー規制によってCookieの使用が削減されてオンライン・コストが増加するため、現在のようなインターネット広告収入は得られなくなる。

EUの一般データ保護規則 (GDPR) や今後施行される法令 (2018年成立のカリフォルニア州消費者プライバシー法、eプライバシー規則など)により、Cookieの使用に対する同意を個人に求めるやり方は大きく変わる可能性があるという。

現在の、個人データを利用し広告のターゲットを絞るやり方は完全に禁止されるわけではないと考えられているが、企業へのインパクトは大きいという。

8.クラウドの経済性・柔軟性活用が、デジタル化のカギ

2022年末にかけて、クラウドの経済性および柔軟性を活用し、社内の実行能力を対外的なプロダクトとして収益に結び付けることが、デジタル化を推進する鍵となる。

クラウド・サービス・プロバイダーなどの台頭により、これまで企業のIT部門が独自に担ってきた役割を、外部企業が担ってくれるようになっている。

また、簡単で利用しやすいクラウド向けのツールが登場し、プロダクトとしてのアプリケーションのサポートや強化も容易になった。

クラウド化は企業の中核ビジネスが生み出す「営業損益」にインパクトを与えるようになっており、デジタル化による収益を出す企業が増えれば、他の組織もこれに追随するようになると予測している。

9.デジタルの巨大企業と「つながる」企業は世界市場シェアの4割を獲得する

2022年までに、デジタルの巨大企業が有する「ゲートキーパー」の地位を活用する企業は、業界平均40%の世界市場シェアを獲得する。

中国などの振興市場勢力が拡大し、各業界の上位4社を合わせた世界市場シェアは2006年から2014年にかけて4%低下したという。

しかし、デジタルの巨大企業 (Google、Apple、Facebook、Amazon、Baidu、Alibaba、Tencent) は、toC市場ですでに大きなシェアを持ち、BtoBにも参入し始めていると同社は指摘している。

今後、多くの企業がこの巨大ゲートキーパーのうちの1社以上と取引関係を結ぶ必要が生じる可能性があり、「つながり」というトレンドを無視できなくなるようだ。

「つながりから得られるインテリジェンスが、さらに大きな価値を (機械学習やAIなどを通じて)創出し、つながったモノ同士のやりとりを (データ伝送の高速化などを通じて) さらにスピードアップさせています」(ガートナー担当者)

10.SNS上のトラブルが利用者に影響を与えることは事実上なくなる

2021年末にかけて、ソーシャル・メディア上で起こったスキャンダルやセキュリティ侵害が利用者に長期的な影響を与えることは、事実上なくなっていく。

ここ数年で毎年のように多くの問題が起こり、メディアで大きく取り上げてきたが、企業や組織に対する反発は、長続きしないと同社はいう。

その一因として同社は、誰もが同じサービスを利用しているために、他のサービスに乗り換えるという選択ができない状況をあげている。潜在的なリスクよりも、テクノロジーを利用する恩恵のほうが大きいというわけだ。

ユーザーにネガティブな感情が生まれでも、その傾向は長続きしないといい、当面その状況は継続するという。