男性の育児休暇取得の現状とメリット・デメリット、支援や給付金まとめ

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記事の情報は2018-11-29時点のものです。

育児に積極的に参加する男性のことを表す「イクメン」という言葉。メディアなどにもよく出てくるので皆さんも聞かれたことがあると思います。こうした男性の育児参加意識の高まりとともに、育休取得を希望する男性も増えています。政府も推進を行う男性の育休取得ですが、現状はどのようになっているのでしょうか。またメリットやデメリット、支援制度などを解説します。
男性の育児休暇取得の現状とメリット・デメリット、支援や給付金まとめ

男性の育休に関する現状

最近、積極的に子育てに参加する「イクメン」という言葉がさまざまなところで取り上げられています。政府も、「イクメンアワード」を開催するなど、男性の育児休暇の取得推進を行っています。

こうした状況の中、男性の育児休暇の取得の現状はどのようになっているのでしょうか。

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育休取得率は過去最高も依然として低迷

厚生労働省の調べによると、平成29年度の育児休暇の取得率は、5.14%と過去最高の数値を示しています。これは、前年度の3.16%と比べても高い伸びを示しているだけでなく、5年連続の上昇となっています。

しかし、実際には政府は「日本再興戦略2016」などで、2020年までに男性の育児休暇取得率を13%にするという目標を掲げています。この数値に比べるとまだまだ低迷しているのが現状です。

男性の育休希望者は増加傾向

実際に育休を取得する男性の割合は5%とまだ低いのが現状です。一方で、育休を取得したいと考える男性は、近年増加しているようです。

Facebookを活用した婚活アプリ「マッチアラーム」を運営・開発するマッチアラームが20代、30代の独身男性815人にアンケートを行った結果によると、7割近くの男性が「将来育休を取得したい」と考えていることがわかっています。

また、インターネットリサーチが全国の20〜40代の既婚ビジネスマン497人にアンケートを行ったところ、育休を取得した人のうち実に8割以上が、「また取得したい」と答えています。

育休取得率の実際の数字に表れないところで、着実に育休取得に向けた意識は高まっているといえます。一方で、既述のように男性の育児休暇取得の現状は、依然として低迷しているのが現状です。男性が育児休暇を取得する、メリットよりもデメリットの方が大きいということなのでしょうか?

男性の育休取得、メリット・デメリット

男性が育児休暇を取得するメリット

男性が育休を取得するとどういったメリットがあるのでしょうか。メリットとして以下のようなっことが考えられます。

  • 子どもとの時間を多く持てる
  • 夫婦での時間をたくさん持てる
  • 子どもに直接接することで、父親としての自覚を持ちやすい
  • 育休後も育児に積極的に参加しやすくなる
  • 家族との関係がうまくいく
  • 家族の子育てに対する負担を軽くする

男性が育児休暇を取得するメリットというと、家庭生活の充実が図れるというプライベートな面に目が行きがちですが、実は育児に積極的に関わることでマネジメントスキルの向上も期待できます。

育児を24時間営業のビジネスと考えると、健康維持、家庭生活の運用、トラブル耐性、リスク管理などさまざまな素養が求められます。子育てにフルコミットすることで、実地でマネジメントスキルを研磨できるのです。

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男性が育児休暇を取得するデメリット

育休取得は良いことばかりではありません。デメリットも考えられます。

こういった内容について考えると、やはり男性が育休を取得するには職場の理解やフォローが欠かせないと言えます。職場の理解を得るためには、育児休暇を取得したい意向を明確に伝えることから。しかし残念ながら、上司世代には「家庭は女性が守るもの」といったアンコンシャスバイアス
を持つ方も少なくありません。

おいそれと男性の育児休暇取得を認めてもらえない企業風土がある場合には、育休の取得が法的に認められた権利であるという知識を得て、職場と交渉することが必要になるでしょう。法律に則った正しい知識をベースに、現実可能な路線を提案・ヒアリングしながら交渉することは胆力の求められることですが、社内外の有識者や育休取得経験者に相談するなどして、ぜひ打開策を見出してください。

育児休業給付金とは

男性でも女性でも、性別に関係なく育休を取得すると、申請に基づいて「育児休業給付金」というものを受給できます。これは具体的にどういったものなのでしょうか。

受給条件

育児休業給付金は、どういった人が受給できるのでしょうか。具体的な条件について見ていきましょう。なお、正規雇用と、有期雇用では条件が少し違います。

正規雇用

  • 雇用保険に加入している
  • 休業前の給与の8割以上が支払われていないこと
  • 休業期間中に就業する日数が各月10日以下であること
  • 育児休業の開始日前2年間に被保険者期間が12か月以上あること

有期雇用

正規雇用者の場合の条件に加えて、「 同一事業主下で1年以上雇用が継続しており、子どもが1歳6か月までに契約が更新されないことが明確でない場合」という条件を満たす必要があります。

申請手続き

育児休業給付金の申請は、原則として事業主が行うことになっていますが、個人で行うことも可能です。

個人で提出する場合は、育児休業給付金支給申請書に記載をして、会社に提出するか、会社がしてくれなければ自らハローワークに提出することも可能です。

気をつける必要があるのは、提出期限。原則、育休開始日から4ヶ月経過する日が属している月の末日までに手続きを行う必要があります。これに遅れてしまうと、給付金を受け取れなくなってしまうことがあるので注意しましょう。

受給期間

育児休業給付金の受給期間は、原則として子どもが1歳になる前々日までと決まっています。子どもが1歳になる前に職場復帰する場合には復帰日の前日までとなります。

しかし、受給期間は保育所に入れないなどの条件に合致する場合、1歳6か月まで、もしくは2歳まで延長ができるようになっています。

支給額

育児休業給付金は、具体的にどれくらいの額がもらえるのでしょうか。給付金の1月あたりの支給額は以下の式で計算されます。

労働者の育児休業開始時賃金日額×支給日数(通常30日)の67%
(子供が生まれて6か月経過後は50%)

つまり、月収が30万円だとすると、30×0.67=20.1万円が支給額です。

ちなみに育児休業開始時賃金日額は、直近の6か月の総支給額を180で割った数値です。

促進される育休取得

政府では、男性の育休取得を推進するために、さまざまな施策を行っています。その一つが2017年の改正育児介護休業法の施行です。従来の育児介護休業法と比べて、以下のような点の変更が行われています。

  • 育児休暇の取得期間の延長:保育園などに入れない場合、最長で2年に(従来は1歳6か月になるまで)
  • 事業主への育児休業制度を社員が周知することへの努力義務の創設
  • 育児目的休暇制度の創設努力義務の創設

パパ・ママ育休プラス

女性だけでなく男性の育休取得をすすめるための施策として、政府は「パパ・ママ育休プラス」という制度も設けています。

通常の育休では、保育園に入れないなどの事情を除けば原則的に育休期間は1年間と定められています。しかし、父親と母親の両方が育休を取得することで2か月延長され、子どもが1歳2か月になるまで期間が延長されるというものです。もちろん、この期間の間は、育児休業給付金の給付を受けられます。

パパ休暇

「パパ・ママ育休プラス」とあわせて、「パパ休暇」と呼ばれる制度も設けられています。この制度は、女性が出産後8週間以内に、父親が育休を取得していた場合、その後再び無条件で育休を再取得できるというものです。

この制度を、出産後の慌ただしい時期に父親も育休を取得しておき、また母親が仕事に復帰した1年後に父親が子どもが1歳2か月になるまで育休を取得、といったように活用することもできます。

復職は女性にとって、心身に負担のかかる一大イベント。復職期は産褥期と同じくらい、父親のサポートが必要な時期ですので、育休取得におすすめのタイミングです。

育休取得の検討を

子どもが生まれてまもない時期はもちろん、第一子誕生では手探り状態、第二子以降も第一子たちのケアと新生児のお世話で並行して行うため育休とはいえ休んではいられないのが母親です。さらには保活に復職準備と、育休中の母親の負担は心身ともに大変重いものです。

男性が積極的に育児参加をすることは、夫婦や子どもで時間を過ごせる、父親意識を身につけられるなど多くのメリットがあります。父親が育休を利用して家事育児を担うことができるように"成長"できれば、長い家族生活は確実に豊かに変化するでしょう。

男性が育児休暇を取得すると出世の道が絶たれる、社内で上層部から嫌がらせを受ける、そもそも育休を取りたいなどと言い出せる雰囲気ではない…。企業によってはさまざまな困難が待ち受けているのも事実ですが、そうした苦労を乗り越えて活躍するパパリーマンがいま脚光を浴びつつあります。

社外にも理解者・協力者を得ながら、ぜひ有意義な育休ライフを目指してみてはいかがでしょうか。