「仕事の満足度をあげる」攻めのメンタルヘルス対策とは

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労働者が50人以上いる事業場においてストレスチェックが義務化されて3年。対象となる企業のストレスチェック実施率は8割を超えているものの、この対策は本質的な改善にはつながっていない、という声もある。そこで本記事では「ストレスチェック後に必要な行動」について分析されたドクタートラストの発表を事例に、メンタルヘルス対策に必要なことを探っていきたい。
「仕事の満足度をあげる」攻めのメンタルヘルス対策とは

ストレスチェックは「実施」して終わりではない

2015年6月、労働安全衛生法の改正により、労働者が50人以上いる事業場はストレスチェックが義務化された。厚労省によれば、平成29年6月時点での実施率は82.9%だ。

ストレスチェックは、従業員がアンケート形式で回答し、高ストレス者と判定されると、本人に医師との面談を受けるように通知される。

また、結果を社内の人に知られたくない、知られることを恐れアンケートにウソの回答をするなどの懸念もあり、結果や医師の面談については、外部委託業者によって行われる場合が多いようだ。

しかし外部委託業者によってストレスを抱える人がわかったとしても、社内に知られずにその原因を取り除くことはほとんど不可能だろう。

ストレスの原因は何なのか、職場において何を変えればいいのか。その後の分析と行動なくしてはストレスチェックは形骸化してしまう。

そこで本記事では、ストレスチェックの傾向から「仕事の満足度をあげる」ことでメンタルヘルス対策を推進しようという、ドクタートラストの分析を紹介する。

ストレスチェックを活用した攻めのメンタルヘルス対策

ドクタートラストは11月12日、「満足度分析によるストレスチェック後の職場環境改善優先度の検討」 という分析を発表した。

この発表は、11月3日から開催された日本産業看護学会第7回学術集会で発表され、最高評価の優秀賞を受賞したという。

評価のポイントは、ドクタートラストのストレスチェックを受験した186,200名のデータをもとに、ストレスチェック後に具体的にどの項目を優先すると「仕事の満足度」向上につながるかについて、分析した点である。

いやなことがあっても、別の良いことがあれば忘れてしまう、または気にならなくなることは多くの人に当てはまる経験だろう。

この分析は、ストレス要因そのものにアプローチするのではなく、仕事に対する満足度を向上することで、結果としてその人にかかるストレス負荷を軽減できるのでは、という仮説のもとに考えられた攻めのメンタルヘルス対策だ。

まずは「重要度」と「満足度」の偏差値を求める

まずこの分析では、ストレスチェックの設問項目のうち、「仕事の満足度」「心身のストレス反応」を除いた 27 項目について、「重要度」と「満足度」の偏差値を求めたという。

●重要度
「仕事の満足度」に与える影響の大きさ。偏差値が高いほど、「仕事の満足度」への影響は大きい

●満足度
ストレスがもっとも低い回答をした対象者の割合。偏差値が高いほど、現状に満足している人が多い

重要度と満足度の散布図

重要度偏差値、満足度偏差値を用いてた散布図は、以下のとおり。

出典:プレスリリース

この図においては、右下「重要改善項目」が最優先で改善すべき課題ということになる。仕事の満足度への影響が大きい一方で、現状の満足度が低い項目だからだ。

また「重要維持項目」は、仕事の満足度への影響が大きく、現状の満足度も高い項目。「維持項目」は仕事の満足度への影響は低いものの、現状の満足度が高い項目。現状維持しておけばよい項目ということになる。

「改善検討項目」は、仕事の満足度への影響が低く、満足度も低い項目である。

改善度指数からみる改善すべき優先度

この分析では、重要度偏差値と満足度偏差値をもとにして「改善度指数」も算出している。改善度指数の数値が大きいほど、「仕事の満足度」向上のための改善優先度が高いということになる。

出典:プレスリリース

この結果を受け、改善度指数は「仕事の適性」や「上司の支援」、「仕事の裁量」に関するものが高く、「仕事の量的負担」や「仕事の質的負担」、「技能の活用」に関するものは低いことが明らかになったと、同社では分析している。

制度づくりだけでは働く人は支えられない

働き方改革の追い風を受け、職場の環境づくりや長時間労働の是正など、各企業が取り組みを進めている。

しかしこの分析から見えたことは、どんなに労働時間を削減し、仕事の量を減らしたところで、仕事の満足度向上には直結しないという事実だ。

働きがい、仕事への適正、上司との信頼関係など、形にならないことにこそ、仕事の満足度を向上させる種が埋め込まれているのだ。

その種を芽吹かせ、伸ばすことにこそ、企業は注力すべきである。

そしてまた、働く人自身も、それを企業任せにしてはならない。どこに自分の成長を支える種があるのか、知っているのは最終的に自分だけである。

専門家の間では、今後ストレスチェックは、大規模事業場のみならず、中小の事業場においても義務化される日が来る、と言われており、メンタルヘルス対策はますます重要な課題になっていくだろう。

企業としても、また働く個人としても、本質的な部分に真剣に向き合うべき時なのかもしれない。