ダイバーシティ(多様性)とは?成功事例と組織における偏見をなくすために必要なこと

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記事の情報は2018-11-27時点のものです。

ダイバーシティとは日本企業では人材の多様性と言われ重要視されており、性別、年齢、人種などさまざま違いを持った人材がお互いに尊重し合って働ける環境のことを指します。そのためには偏見なく、公平性、客観性を持って従業員の一人ひとりがお互いの同僚を取り扱う必要があります。ダイバーシティの意味や推進するメリット、課題と対策、事例などについて説明します。
ダイバーシティ(多様性)とは?成功事例と組織における偏見をなくすために必要なこと

ダイバーシティ(多様性)とは

ダイバーシティ(多様性)という言葉はただ社会の在り方だけではなく、近年ビジネスにおいても重要な概念となりつつあります。企業の組織論におけるダイバーシティについて説明します。

ダイバーシティの意味

ダイバーシティとは英語で「diversity」と表記して日本語では多様性と訳し、多様性とは「異なる性質の存在が幅広く存在する」ことを指しています。

たとえば生物の多様性と言えば、地球上にはいろいろな生物が存在しお互いに相互関係を築きながら存在しているという意味になりますし、人種のダイバーシティと言えば白人も黒人もアジア系もヒスパニックも存在しお互いに尊重・理解合うことを意味します。

ビジネスにおけるダイバーシティとは、年齢、性別、人種、国籍、学歴、経験などさまざまな個性を持った人材が活躍できるような組織を作ろうということを指します。

日本でのダイバーシティの必要性

特に日本において、ビジネスにおける「ダイバーシティ推進」は重要な課題になっています。少子高齢化が進む中、生産年齢人口は今後減少することが予想されています。さらに、好景気により失業率は2.5%程度と完全雇用に近い状態ではないかと言われています。

つまり、労働人口は今後慢性的に不足していくと考えられているのです。女性、高齢者、外国人、障害者など多様な人々の雇用を推進するために、就労環境を整えることが求められています。

日本の企業は多様な人材を確保し、多様な背景を持つ個々人の組織へのエンゲージメントを高め、多様な背景から生まれるアイデアやコラボレーションを組織の競争力向上に役立てる必要があるのです。

企業におけるダイバーシティ推進の3つのメリット

企業が組織のダイバーシティを高めることは、そこで働く人材だけではなく、企業にも大きなメリットがあります。ダイバーシティを推進する企業のメリットについて3つ紹介します。

人材獲得における優位性向上

まず1つ目に挙げられるのは、ダイバーシティを推進し多様な人が働きやすい企業に生まれ変わることで、優秀な人材を獲得しやすくなる点です。

これまでは週8時間・週5日、均質的に働ける人材や、転勤や異動の命令にも従順に従うことが一般的でした。しかし出産や育児・介護に際して、あるいは不妊治療や癌治療などとの両立などに際して、こうした働き方ができないケースも目立ってきました。また、こうした滅私奉公での働き方が世界的な労働市場においては受け入れられません。

ダイバーシティを推進することで、採用活動における間口を広げ、応募者のパイを増やすことができるのです。また、ダイバーシティ推進企業として、多様な人々が働きやすい企業であるとの認知が広がれば、広く応募者を集めることが可能になります。ひいては優秀な人材の獲得にも功を奏するでしょう。

市場における競合優位性向上

2つ目に着目すべきは、ダイバーシティを推進することによって、サービスやプロダクトの市場優位性を狙える点です。

多様なバックグラウンドを持つ人材が組織内に存在した方が、多様な顧客ニーズや要求に着眼できます。サービスやプロダクトを多様な視点でブラッシュアップすることができるでしょう。

また、多様なスキルや経験を持つ人材が集まることで、迅速かつ的確に対応しやすくなります。組織として対応できる顧客層や業務の幅を広げるためにも、ダイバーシティは推進した方が良いでしょう。

創造性・革新性の向上

3つ目にダイバーシティの推進は創造性・革新性の向上につながります。均質性の高いチームでは価値観や業務に対する取り組み方などが似ていることが多いものです。1つの指針に従い事業を進めるのには向いていますが、イノベーションはあまり期待できません。

イノベーションとは、異質性の高い組織において、個々が能力をフルに発揮している前提で、多様なアイデアや、異質な人材同士のコラボレーションから発生するものです。多様な小さな変化を繰り返すことが、大きな変革をもたらします。

変化が激しく不確実な経済環境に柔軟に対応できるイノベーティブな組織を作りたいのならば、ダイバーシティの高い組織を構築するべきです。

ダイバーシティの課題と対策

ダイバーシティを組織として許容するためには課題があって、対策を練る必要があります。企業がダイバーシティを高めるための課題と対策について説明します。

異質性の高さによる課題

端的に説明すれば、異質性の高い組織ほど組織内での軋轢や誤解が発生しやすくなります。年齢差や性差、人種などさまざまな属性の人材が増えれば増えるほど、習慣の違いや価値観の相違も多様になってゆくのです。ある人にとっては何気ない普通の言動や行動でも、特定の相手に対して不快感を抱き、軋轢や誤解が生じてしまいます。

多様な人材を組織に抱えることによる軋轢や誤解によって組織が崩壊しないように配慮しながら、コミュニケーションを活性化させるためにはどうすれば良いのか、ダイバーシティ推進における永遠の課題といえるでしょう。

課題への対策

では、ダイバーシティ推進のためにはどのような対策が考えられるのでしょうか。ダイバーシティにおける課題は、啓蒙や教育が非常に重要です。

多様性に対する反発は大抵、管理職や古参社員から発生しがちという側面もあります。「自分の時代はこのような仕事はしていなかった」という感覚は業歴が長いほど強くなりがちですし、ヒラ同士ならばお互いに妥協点を探せても、上司と部下という関係になれば、そこにハラスメントが発生しやすくもなるでしょう。

ダイバーシティ推進の鍵は、マイノリティを孤立させないこと。マジョリティの長をつとめる管理職層を中心に、ダイバーシティを推進に理解を持ってもらえるように啓蒙と教育が必要です。

ダイバーシティの例

では、ダイバーシティの推進によって成果を上げている企業は存在するのでしょうか。平成24年に経済産業省が民間業者に委託して研究した「ダイバーシティと女性活躍の推進~グローバル化時代の人材戦略~」という資料では日産の事例が紹介されています。

その報告書によれば、日産では女性を中心とした設計グループを2006年に作り、今まで男性向けにデザイン、マーケティングされることが多かった自動車において、女性の視点を取り入れました。その結果、たとえば自動車のマーチに新色の「サクラ」を投入して、女性向けに細部にこだわる宣伝手法を行ったことによって、販売台数が増加したという事例があります。

ダイバーシティ推進を組織としての継続な活動にすることで、マーチ、セレナ、キューブなどの「女性の
目線」に立ったプロダクトイノベーションに貢献していると報告されています。

他にも経済産業省が発表した「外国人の活用好事例集」という資料によると、産業用特殊ポンプを製造している本多機工という会社では、技術顧問を務める大学教授からチュニジア人留学生を紹介されたことをきっかけに、外国人採用を始めて、現在では外国人社員が独立して、現地パートナーとして販路開拓に協力してくれているようです。

大企業、中小企業問わずにダイバーシティの推進は企業にとって新しい商品開発や販路開拓の効果が期待できます。

ダイバーシティを推進する、マイノリティへの理解に向けて

ダイバーシティを高めるにあたって必要なのは、現場で働く個々の従業員が、自分と異なる背景や常識を持つ人といかに向き合えるようにするかということです。

たとえば、ライフイベントによって働き方やキャリアに大きな影響を受ける女性や、外国人、障害者、LGBT、高齢者など、マイノリティと呼ばれる人は一般的な日本人の男性の働き盛りの従業員のような働き方はできない、希望していない場合が多々あります。

個々に経験やスキルを持つマイノリティの人たちが働きやすい環境を作れば、マイノリティの能力を活用してより良い組織ができるはずです。そのためには、従業員一人ひとりがマイノリティと呼ばれる方たちへの理解を深めて、無意識のバイアスを意識して是正する必要があります。

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