「日本の有給休暇取得率」世界最下位、2019年4月に迫る義務化を徹底解説

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記事の情報は2018-12-14時点のものです。

12月10日、エクスペディアが【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】発表しました。これによると、日本の有給休暇消化率は3年連続で世界最下位。一方、2019年4月からは有給休暇取得の義務化がスタートすると話題ですが、未だ、具体的にどのように対応していくかは未定という会社が多く、働く方の多くは義務化自体をよく知らないことがほとんどです。ここではなにがどう変わるのかを取り上げます。
「日本の有給休暇取得率」世界最下位、2019年4月に迫る義務化を徹底解説

日本の有給休暇取得率は50%

エクスペディアが発表した【世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018】によると、日本の有休取得率は3年連続で世界最下位を記録したことが分かりました。有給取得率は、2位 オーストラリアの70%にも大きく引き離された50%。有休取得日数は世界最少の10日間でした。

引用:プレスリリース

ちなみに、日本人の有給休暇取得率は、3年連続で50%。同調査では、有休取得率 最下位なのに、多くの日本人が「休み不足」と感じていない現状を指摘しています。休むことへの罪悪感や、上司の協力のなさなどの"特徴"も、各国との比較より浮き彫りになっています。

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一方で騒がれる、「有給休暇取得の義務化」

世界の国々では、多くの国が取得率70%以上、フランスのように100%取得が当たり前の国もあります。日本の50%という取得率はずば抜けて低い状況です。

それどころか、1年間で1日も有休を取得できていない方が15%程度存在するというデータもあり、世界一有休が取りにくい国といっても過言ではありません。

この状況を脱するために、2019年4月から有給休暇取得の義務化がスタートすることになっています。正しくは、従業員に有給休暇の取得の義務化付けるのではなく、有給休暇取得について雇い主である企業側に時季指定を義務付けるもの。

有給休暇を取得しづらいと感じている方でも確実に取得できるよう、企業に5日の義務を課すことで有休取得のハードルを下げ、日本も70%超えを目指そう!というのが今回の義務化の要点です。

2019年からは順次、働き方改革関連法が施行されます。経営者がインパクトが大きいと考えている2位はこの有給休暇の義務化で、1位は残業時間の上限規制です。工数削減を迫られることに頭を抱える企業の実態が伺えます。

有給休暇取得の時季指定の義務化とは

2019年4月からスタートする「有給休暇取得の時季指定の義務化」とは、年10日以上の有給休暇が付与される場合は、そのうち5日の時季指定が義務付けられるという制度です。労働基準法の第39条に追加された内容で、最低5日は従業員に有休を取得させなければ労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります。

対象となるのは?

義務化の対象となるのは、勤めている企業の規模を問わず、年10日以上の有給休暇を付与されている方です。役職や雇用形態、勤続年数も問いません。

労働基準法の規定通りに有休を付与している場合、フルタイム勤務の方であれば入社半年後に10日付与されますし、パートタイム勤務の方も勤続年数が長くなれば付与日数が10日を超える可能性があります。

なお、あくまでも新たに付与された有休が10日以上の場合が対象となりますので、前年の繰り越し分に新たに付与された分を加算した日数が10日を超えるケースは対象とはなりません。

対象期間は?いつから1年間?

有休を付与した日を基準日とする1年間となります。労働基準法の規定通りに付与を行っている場合、入社日ごとに有休付与日は異なるので、会社には個人ごとの管理が求められます。

なお、労働基準法の規定より前倒しで、例えば入社と同時に有休を10日付与している場合も付与した日が基準日となります。

そのほか、入社時と2年目以降で付与ルールが異なるケースの取扱いについても、細かい基準が設けられていますので、以下の資料をご参照ください。

資料:年次有給休暇の時季指定義務

「5日」のカウント方法

平均消化率が70%を超える、平均取得日数が10日を超えるという会社もあるかと思いますが、今回の義務化の日数カウントは平均ではなく働く方ひとりごとであることに注意が必要です。自社における有休の平均取得日数が5日を超えているからといって安心はできません。

平均取得日数が5日を超えていても、たくさん取得できている人とまったく取得できていない人が混在していることが多いのではないでしょうか?

以前、取得状況の調査に携わった際に、単年度の取得日数が異常に多い会社の内訳をみると、どの社員も在職中はまったく取得できず、退職時にまとめて消化しているケースもありました。

会社は、在籍している方ひとりひとりの取得日数がそれぞれ5日を超えるように、取得を促進しなくてはいけないのです。

有給休暇取得を義務付けられるのは、個人ではなく企業側

「5日の取得義務」と表現することが多いですが、実際には働く方に取得する義務が課せられるわけではなく、会社に対し取得時季を指定する義務が課せられる制度です。

働く方が自発的に有休を5日以上取得した場合あるいは毎年5日以上の有休の計画的付与を行っている場合を除き、会社は働く方に有休の取得希望日を確認し、働く方の希望にできる限り沿った有休取得日を指定する必要があります。

働く方の自主的な有休取得に任せきりにしてはいけません。冒頭でお伝えしたとおり、有給休暇を取得しづらい、休む必要はない、と考えている人は多いのです。会社からアクションを起こして最低5日の有休取得を実現しなくてはならないのです。

有給休暇取得の希望日確認はいつ行う?

4月以降の新たに有休を付与した日を基準日とする1年間で5日以上の取得が必要なので、会社が対象となる方に取得日を確認する時季は複数パターン考えられます。

(1)有休付与と同時に確認・・・有休付与時に、対象となる方それぞれに取得希望日を確認する
(2)有休の取得状況をみて確認・・・付与後数か月経過したタイミングで、5日以上の取得が難しいと思われる方にのみ確認する
(3)一定期間ごとに確認・・・例えば2か月に1日以上といった期間と日数を設定し、対象となる方全員に期間ごとに確認する

実際には(1)のタイミングで確認する企業はそれほど多くないでしょう。もともと有休は男性と女性で有休取得率には10%程度開きがあり、その理由となっているのが子育てと言われています。

子育て中の女性の多くは、子供の体調や行事にあわせて有休を取得することが多く、事前にむこう1年の予定が経っていることは稀だからです。働く方の都合に合わせて柔軟に取得できる余地を残しておく方が社内の受けはよさそうです。

義務化にあたり、必要となるTo Doは?

2019年4月からの義務化スタートにあたり、会社には新たに有給休暇管理簿を備えつけ、3年間保存する義務も発生します。

今のところ、どういった形で達成状況の確認が行われるかはわかりませんが、労働基準監督署の調査が入った際には、管理簿の提出が求められるものと思っておいた方がよいでしょう。

調査により、5日取得が達成できていないことが判明した際には、労働基準法違反となり、会社には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

ちなみに罰金の金額について法律上は、未達成の方ひとりごとにとも、会社単位でとも明示されていません。1事案ごとに30万円以下の罰金が科せられるという解釈が広まっていますが、あくまでも5日取得達成を義務付けるものではなく時季指定を義務付けるものなので、1事案=ひとりとは限らないという見解もあります。