障がい者雇用に問われる事業者の姿勢
中央省庁や障がい者用水増し問題や、全国都道府県の精神障がい者雇用差別問題などが、次々と報道されている。民間企業に手本を示すべきはずの省庁や自治体のこうした態度は、批判されて当然だろう。
しかし、この事象の背景にある本質の課題を、置き去りにしてはいけない。障がい者雇用のどんなことに、事業者は課題や不安を感じるのだろうか。
そこで野村総研とNRIみらいが発表した「障害者雇用に関する実態調査」「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」から、事業者の意識について実態をみていきたい。
同調査は、2018年8月~10月にかけて、上場企業と特例子会社を対象に行われたもの。4回目となる今年は「障がい者雇用におけるIT活用への考えや活用状況」などについてまとめられている。
※特例子会社:障がい者の雇用に特別な配慮をし、法律が定める一定の要件を満たしたうえで、障がい者雇用率の算定の際に、親会社の一事業所と見なされるような「特例」の認可を受けた子会社のこと。
障がい者雇用におけるIT活用への期待と不安
まず、障がい者の業務におけるITの活用について訪ねた結果が、以下の図である。
これによると、全体の5割以上がITの活用で業務効率や質の向上に期待しているほか、新しい領域の拡大などへも期待する声が多かった。
一方で、ITを活用における障がい者間の格差や、情報漏えい・誤作動などへ不安を感じるという声も2割程度あがっている。
また障がい者が今まで取り組んできた業務が、ITによって奪われると考える人もいることがわかった。
プレスリリース「図1 働く障がい者の業務におけるITの活用についての考え」
不安に感じる項目は、企業がIT化において本質的に抱える問題であり、何も障がい者だけに限ったことではなさそうだ。
しかし、こうした「不安」を、まずは一つひとつ丁寧に取り上げていくことが、障がい者雇用の促進には必要なのだろう。
8割の企業で障がい者の業務にITを導入
次に、障がい者の業務におけるITの活用状況を訪ねた。これによると、8割以上の企業が活用していることがわかった。
もっとも多いのは、データ入力や入力内容のチェック(エクセル・ワード・パワーポイントなど)で7割。
また働き方を変革させるような利用法として、テレビ会議などによる会議や打ち合わせや、テレワークなどは、まだ少数ながら導入企業も出てきている。
プレスリリース「図2 障がい者の業務におけるITの活用状況」
また、以下の図は、出社から退社までの流れの中で、ITがどのように障がい者の活躍に寄与しうるかを例示したものだという。
プレスリリース「図3 ITの活用による障がい者活躍の可能性(例示)」
同社では、ITの導入によって障がい者雇用の領域拡大や、業務効率化に期待できるととも、マネジメント円滑化などさまざまな可能性が広がると分析している。