2019年リーダーが知っておくべき5つの技術トレンド - 拡大続けるITインフラ運用のカギは

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記事の情報は2018-12-20時点のものです。

ガートナーが、IT分野のインフラおよび運用(I&O)に関する2019年の注目トレンドを発表。AIやサーバーレス・コンピューティング、エッジ・コンピューティングなど5つの技術をピックアップした。I&Oリーダーは急速に拡大していくITインフラの運用技術をどう利用するべきなのだろうか。カギは、考え方を変え、事業戦略の実現につながる製品とサービスを提供することにあるという。
2019年リーダーが知っておくべき5つの技術トレンド - 拡大続けるITインフラ運用のカギは

ガートナーがピックアップした注目トレンド

調査会社のガートナーが、IT分野のインフラおよび運用(I&O)をテーマとして、2019年に注目して対応を検討すべき10件の技術トレンドを発表した。そのなかで、ガートナー上級調査ディレクターのロス・ウィンサー氏は、企業が各トレンドから受ける影響を説明した。

以下では、特に技術分野への影響が大きいトレンド5項目を紹介する。

AI導入とインフラ強化が欠かせない

まずはAI(人工知能)。AIの能力は目覚ましい勢いで向上しており、企業における業務利用も本格化してきた。ガートナーはAIを含むICT活用に関する2つのトピックを挙げている。

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1.AIは440兆円超えの事業価値をもたらす

AIを有効活用するには膨大なデータが必要になるため、ITインフラの強化が求められる。たとえば、IT専門調査会社のIDC Japanによると、「AI導入済み・導入計画あり」とした企業の7割が「ストレージ支出はAIに大きく影響される」と考えているそうだ。さらに、7割超が「AIをITインフラ管理に利用している、または利用する計画」だという。

ガートナーのウィンサー氏もAIの重要性を強調しており、技術トレンドの1つとしてピックアップした。拡大し続けるインフラの管理をIT担当スタッフの増員なしで実行しなければならないI&O部門のリーダーにとって、AIの価値が高くなる、としている。ガートナーは、AIのもたらす事業価値が2022年には世界全体で3兆9,000億ドル(約442兆5,720億円)弱に達すると予測した。

2.ICT活用にはグローバルなインフラが欠かせない

AIに限らずICTのパワーを十分活用するためには、かなり困難なことではあるものの、場所を問わず利用可能なインフラ、つまり、インフラのグローバル展開を意識した取り組みが欠かせないという。

予算などが限られる状況でI&Oリーダーにできることは、ネットワーク業者の賢い選択だそうだ。ウィンサー氏は、「既存のネットワーク・パートナーをじっくり検討し、求めるハードルの高さを上げなければならない」として、「2020年から2023年にかけての最重要テーマになる」とした。

データはオンプレミスからクラウド、そしてエッジへ

続いてはデータ、そしてデータセンターを巡るトレンドだ。ITインフラがカバーする領域の変化について3つのトピックを挙げている。

3.オンプレミス・データセンターは終焉へ

ガートナーは、2025年時点で企業の80%がオンプレミス(自前の)データセンターを完全に捨て、クラウド・サービスへ移行するとみている。そうした状況から、ウィンサー氏はI&Oリーダーに対して「(オンプレミス・データセンターのような)物理的な場所に縛られることなく、事業の必要性に応じた処理能力を用意できるようにすべき」とアドバイスした。

しかし、それでも企業が自社でデータセンターを運用しなければならない状況もあるだろう。その場合は、I&Oリーダーが必要性を戦略的な面から検討し、投資に見合う価値があるかどうか考えなければならないという。この大きな変革は2021年から2025年にかけて進むため、ウィンサー氏は今すぐ対応に着手する必要がある、とした。

4.FaaS、サーバーレスへの移行

ITシステムは、オンプレミスからクラウド環境へ移行するだけでない。クラウド・サービスの分野でも、サーバーレス・コンピューティングという大きな変化が起きている。

サーバーレス・コンピューティングとは、クラウド環境においてITリソースをサーバー単位で提供するのではなく、実行されるアプリケーションで必要とされるリソースを動的に割り当てるサービス提供方式だ。アプリケーションで実行される機能に着目しており、企業などの利用者はサーバーを意識しなくなる。そのため「サーバーレス」と呼ばれるが、当然サーバーは存在している。そこで、サーバーレス・コンピューティングではなく、ファンクション・アズ・ア・サービス(FaaS:Functions as a Service)と呼ばれることもある。

サーバーレスになるとITリソースが隠ぺいされ、需要予測に応じたインフラの準備や管理をする手間が省ける。一方でI&Oリーダーは、従来の物理的なインフラを中心とする発想でなく、アプリケーション・セントリックな取り組みを導入しなければならない。しかも、仮想マシンを置き換えるものではないので、使うべき用途と領域をきちんと学ぶことが大切だという。

5.エッジ・コンピューティング拡大

オンプレミス・データセンターの終焉や、サーバーレス・コンピューティング(あるいはFaaS)への移行と相反するようだが、これまで以上に現場で情報を処理する概念「エッジ・コンピューティング」が広まる。なぜなら、増加していくIoTデバイス、高性能なスマートフォン、コネクテッド・カーなどにより、情報処理をデータの得られる場所で済ませる分散コンピューティングが増えるからだ。

こうして、ITインフラはカバーする領域をオンプレミスからクラウド、サーバーレス(FaaS)、エッジへと広げていく。その結果、I&Oリーダーは、インフラの配備や管理を見直す必要に迫られる。ウィンサー氏は、このトレンドへの対応が2020年から2023年に重大な局面を迎える、とした。

「事業戦略実現」につながる製品提供がカギ

今回のトレンド発表は、ガートナーが12月初めにラスベガスで開催した技術カンファレンス「Gartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference 2018」の概要といった位置付けである。

現代の企業が置かれた環境について、ウィンサー氏は「I&Oの関与する分野が以前とまったく異なる領域にも広まりつつあり、I&Oリーダーは技術および運用サービスの提供だけに注力していれば済む時代でない」と指摘している。そして「事業戦略の実現につながる製品とサービスを提供することにも、力を入れる」よう求めた。

ただし、具体的にどうしたらよいのだろうか。ウィンサー氏も「急速に拡大するインフラを支え、業務の要求をカバーするのに、人工知能(AI)やネットワーク自動化、エッジ・コンピューティングのような技術をどう利用すればよいのか」と問いかける。

一朝一夕で答えが見つかる問題ではないし、状況や目的によって正解は異なる。適切な解答を導き出せるために、I&Oリーダーは常に情報を取り入れ、準備しておこう。

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