AR企業向け伸長で市場急拡大、2022年11兆円超 新ハード登場が追い風に

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AR(拡張現実)およびVR(仮想現実)に対する企業の期待が高まっている。2019年以降はARの業務利用が増え、2022年のAR/VR市場規模は11兆円を超えるという。IDCは、2019年に新たなARハードウェアが市場に登場し、ARは実験段階から実用化段階へ移行すると予測している。

AR企業向け伸長で市場急拡大、2022年11兆円超 新ハード登場が追い風に

AR/VR関連支出は2022年に11兆円超へ

拡張現実(AR)および仮想現実(VR)に対する期待が高まっている。VRゲームやVRビデオのようなエンターテインメント・コンテンツにより消費者向けVR市場が先行し、大規模な導入へつながる企業向け市場はこれから、との印象だった。しかし、状況は変わりつつあり、産業分野でARの本格導入が始まることで企業向け市場の拡大が期待される。

調査会社IDCの最新予測では、ARおよびVRに関するハードウェア、ソフトウェア、サービスを含む市場規模が、全世界で2018年に121億ドル(約1兆3,594億円)、2019年に204億ドル(約2兆2,919億円)となり、順調に成長する見通しだ。2017年から2022年までの年平均成長率(CAGR)は69.6%としており、このペースが続けば2022年には1000億ドル(約11兆2,350億円)規模に達する。

どのような分野でAR/VRの利用が拡大するのか、大きな成長が予想されるのはどんな領域なのか、IDCの予測内容をみていこう。

AR/VRはどこで、何に使われているのか

消費者向けにしろ、企業向けにしろ、ARやVRはどのような目的で使われているのだろうか。

急速に拡大していく企業向けAR/VR市場

企業向け市場が拡大することから、IDCは「企業がAR/VR関連支出をけん引する形になる」としている。具体的には、2019年時点で企業が支出全体の64.5%を占めるのだが、2022年には80%以上へと拡大するそうだ。

2019年に支出の多い分野としては、16億ドル(約1,798億円)の個人および消費者向けサービス分野、15億6,000万ドル(約1,752億円)の小売分野、15億4,000万ドル(約1,730億円)の組立製造分野を挙げた。また、CAGRが100%を超え、毎年2倍以上ものペースで成長するとみられる分野は、政府関係(123.7%)、資源業界(120.9%)、卸売業界(120.9%)だという。

企業のAR/VR導入は拡大するが、消費者向け市場の存在感はまだ大きい。2019年時点の消費者によるAR/VR支出額は72億ドル(約8,088億円)あり、企業向け市場の各分野を大きく上回る。ただし、成長ペースは企業向け市場に比べ遅く、CAGRは36.6%に過ぎない。この予測から、今後は企業による支出がAR/VR市場をけん引していくとわかる。

ユースケースは消費者向けVRゲームが目立つ

AR/VRのユースケースでは、VRゲーム関連支出が多く、2019年の支出額を40億ドル(約4,494億円)と予想する。これに、ビデオ視聴の20億ドル(約2,247億円)、ARゲームの6億1,600万ドル(約692億円)が続く。これらは、いずれも消費者による支出であり、エンタメ用途である。

企業による支出額がもっとも多いのはトレーニングの18億ドル(約2,022億円)。ほかには、オンライン通販における商品確認の5億5,800万ドル(約627億円)、工業製品メンテナンスの4億1,300万ドル(約464億円)といった分野が確立するという。

用途別では消費者による利用が目立つものの、企業で本格的に使われ始めると、順位は逆転していく。たとえば、工業製品メンテナンスのCAGRは119.2%と高く、2022年にARゲームと並ぶ見込み。企業向け市場のユースケースはほかにもCAGRの高いものがあり、研究/実験、オンライン通販における商品確認、医療における診断などが100%超のCAGRで拡大すると予想した。

対ハード支出が過半数を占める

ハードウェア/ソフトウェア/サービスをまとめてAR/VRソリューションとし、全体の支出額と成長率をみてきたが、ここで内訳を確認しておく。また、世界のどの地域でAR/VRの利用が進むかもみてみる。

ARが急拡大、VRを超える

支出額はハードウェアが圧倒的に多く、今回IDCが予測した2022年までの期間中、全支出額の半分以上をハードウェアが占める状況が続くという。2番目はソフトウェアで、サービスがもっとも少ない。

ハードウェア支出のなかでは、ARゴーグルが128.3%という高いCAGRで支出額を増やす。また、ARソフトウェアに対する支出額も121.8%のペースで増加し、2021年には対VRソフトウェア支出を超えるという。

サービス支出においてもAR関連支出は成長率が高く、CAGRはARカスタム・アプリケーション開発が133.0%、ARシステム・インテグレーションが130.4%、ARコンサルティング・サービスが121.9%といった具合だ。

このようにARはハードウェア、ソフトウェア、サービスがそろって急成長するため、2022年にはAR関連支出がVR関連支出を抜いている、とIDCは予想した。やはり、VRよりもARを活用することの多い企業が本格的に導入を始める影響だろうか。

世界2大市場は米国と中国

地域別で2019年のAR/VRソリューション支出額をみると、1位が米国の66億ドル(約7,414億円)、2位が中国の60億ドル(約6,740億円)で、大きく離されて3位が日本の17億6,000万ドル(約1,977億円)、4位が西欧の17億4,000万ドル(約1,955億円)という順番。西欧は日本より成長ペースが速く、2020年に3位へ上昇すると見込む。

一方、CAGRのトップはカナダの83.7%で、2022年には支出額の4位になる予測。支出額トップの米国は77.1%、2位の中国は76.2%といずれも高く、下位陣営との差が広がりそうだ。

ちなみに、西欧は75.9%、中欧/東欧は66.4%で、日本のCAGRは高くないらしくその他(38.8%)にまとめられている。

企業のAR利用は実用化段階へ

IDCがリリースしたAR/VRヘッドセット出荷台数の調査レポートのなかで、同社のデバイス&AR/VR担当プログラム・バイス・プレジデントを務めるトム・マイネリ氏は、「VR市場は、成熟の新たな段階へ入り始めた。この段階になり企業は、爆発的な勢いで成長する市場という非現実な期待をひとまず無視し、継続する可能性の高い業務に注力している」と分析した。

そして、ARに関しては「ハードウェアの成長は控え目な状況が続く一方、多くの企業が強い関心を抱いている。2019年に市場投入されるであろう新たなARハードウェアの影響で、ARが実験や試験の段階から実運用の段階へ移行する」と予想している。こうした状況の変化が、AR/VRソリューションへの支出増大、特に対AR支出の増加をもたらすのだろう。

事実、企業はARのさまざまな活用方法を検討している。以前紹介した、倉庫業務でARゴーグルを活用するアマゾンの特許出願は、その一例だ。

そのほか、米食品医薬品局(FDA)の認証を取得したAR手術支援システム「OpenSight」、がん組織発見を支援するグーグルのAR顕微鏡「Augmented Reality Microscope(ARM)」、ステルス戦闘機「F-35」内から機体を“透かして”外部を目視できるARヘルメット「F-35 Gen III Helmet Mounted Display System」など、実用化されている技術も多い。民泊サービスのエアビーアンドビー(Airbnb)は、宿泊先の部屋情報をAR/VRで提供するサービスを検討している。

出典:Novarad / OpenSight

出典:Collins Aerospace / F-35 Helmet Mounted Display System featured on the cover of Popular Science

出典:Airbnb / Developing the Next Realities for Travel

今のようなペースで企業による導入が進めば、東京オリンピックが開催される2020年ころには、街のあちこちで当たり前のようにAR/VRが使われているかもしれない。

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