フィンテックトップ100、決済とネオバンクに脚光 日本は2社のみ

公開日:

AIなど最新技術を金融サービスに応用する「フィンテック(Fintech)」は、決済とネオバンクを筆頭に世界的に注目されている。日本だけでも市場規模は2021年度に2兆円近くまで拡大するという。ところが、注目すべき世界フィンテック企業トップ100社2018年版に選ばれた日本企業は2社だけだ。このままでは、フィンテックで改革の進む世界金融市場から日本は置き去りにされてしまう。

フィンテックトップ100、決済とネオバンクに脚光 日本は2社のみ

世界で高まるフィンテックへの期待

国内フィンテック市場は1兆円超え

人工知能(AI)などの最新技術をさまざまな事業分野へ応用し、効率化や新規事業開拓につなげる取り組みが盛んだ。教育分野へ応用すればエドテック(EdTech)、不動産取引などへの応用ならリテック(ReTech)、農業でのICT活用ならアグリテック(AgriTech)、医療ならメドテック(MedTech)といった具合である。これらは「X-Tech(クロステック)」と総称されるが、なかでもフィンテック(FinTech)に対する期待が大きい。

フィンテックとは、金融つまりファイナンス(finance)と、技術つまりテクノロジー(technology)という言葉の組み合わせからわかるように、決済や資産管理、資産運用、保険といった金融関連サービスを技術で進化させる概念。仮想通貨(暗号通貨)や、その基盤技術のブロックチェーン、ブロックチェーンを活用するスマートコントラクトやイニシャル・コイン・オファリング(ICO)なども、フィンテックの応用例といえる。

期待の高さは、フィンテック市場規模に関する複数の予測からも伺える。たとえば、矢野経済研究所は国内フィンテック市場の規模を、2017年度が1兆184億円、2021年度が1兆8,590億円と見積もった。また、 IDC Japanの予測では、国内金融機関のフィンテック関連IT支出額が、2018年に219億円、2022年に520億円まで拡大するという。

世界の注目フィンテック企業は?

フィンテックは、ビジネスに欠かせない金融サービスと連携するうえ、世界中で急成長することが確実なので、数あるX-Techのなかでも特に知っておく必要のあるテーマだ。しかし、サービスや技術の側面など関係する分野は多彩で、どこから着手すればよいかの判断が難しい。

そこで今回は、KPMGコンサルティングが公表した、注目すべき世界のフィンテック企業をランキング形式で紹介する年次レポート「フィンテック100」(2018年版)をベースにして、フィンテック市場のトレンドをみていこう。

世界フィンティック企業トップ100

トップ10は米中が半数占める

KPMGコンサルティングのレポートは、KPMGインターナショナルとオーストラリアのベンチャーキャピタルであるH2ベンチャーズが共同制作した英語版レポートの日本語簡易版である。ピックアップされた全企業の情報を得るには英語版レポートが必要だが、先に日本語版でフィンテック市場の全体像とフィンテック企業の傾向を把握してから英語版を精読すると効率がよいだろう。

レポートでは、「世界でもっとも成功しているフィンテックイノベーター」として、デジタル決済、デジタル融資、保険(インシュア)テック、ネオバンクなど、フィンテックで世界の金融サービス業界に変革をもたらしている企業100社を紹介している。

その100社は、マーケットリーダーである50社の「リーディング50」と、新しい製品やソリューションを有する新興企業50の「エマージング50」に分けられ、それぞれ1位から50位まである。

各トップ10の企業は以下のとおりだ。

リーディング50

1位:アント・フィナンシャル/Ant Financial(中国)
2位:JDファイナンス/JD Finance(中国)
3位:グラブ/Grab(シンガポール)
4位:バイドゥ(ドゥ・シャオマン・ファイナンシャル)/Baidu(Du Xiaoman Financial)(中国)
5位:ソフィ/SoFi(米国)
6位:オスカー・ヘルス/Oscar Health(米国)
7位:ヌーバンク/Nubank(ブラジル)
8位:ロビンフッド/Robinhood(米国)
9位:アトム・バンク/Atom Bank(英国)
10位:ルファックス/Lufax(中国)

エマージング50

1位:アグリ・デジタル/Agri Digital(オーストラリア)
2位:エニーフィン/Anyfin(スウェーデン)
3位:アクィード・テクノロジー/Aqeed Technology(UAE)
4位:バンクエラ/Bankera(リトアニア)
5位:ブラックムーン・ファイナンシャル・グループ/Blackmoon Financial Group(ロシア)
6位:ブロックファイ・リーディング/BlockFi Leading(米国)
7位:ブレックス/Brex(米国)
8位:キャッシャー/Cashaa(英国)
9位:セルラント/Cellulant(ケニア)
10位:クレオ/Cleo(英国)

中心は決済サービス、注目はネオバンク

全100社の分野別内訳は、決済サービスが34社、融資サービスが22社、資産運用が14社、保険企業が12社となり、フィンテックは決済の分野で広まっているらしい。

ただし、KPMGが注目しているのは、銀行という形態を取らずに既存銀行と提携するなどして金融サービスを提供する「ネオバンク」と、幅広い金融サービスを提供する「マルチ」と呼ばれるタイプのフィンテック企業である。2018年版のレポートで、ネオバンクは10社、マルチは4社がランキングに入った。なかでも、マルチ企業の中国アント・フィナンシャルは、リーディング50の1位に選ばれている。

KPMGによると、ネオバンクは旧来のテクノロジー資産という重荷がないため、従来のインフラを一気に飛び越すことが可能で、迅速な商品イノベーションと顧客獲得を進められる。ゴールドマン・サックスが提供しているオンライン金融サービス「Marcus(マーカス)」の場合、預かり資産が米国でのサービス開始後18カ月で200億ドル(約2兆2,246億円)を超えるほどの快進撃だ。ネオバンクに対する投資も活発に行われているという。

出典:KPMG International、H2 Ventures / 2018 FINTECH 100

フィンテック企業への投資も急増

フィンテック企業への投資は、ネオバンクに限られない。フィンテックという分野への資本投資が増加し、資金調達総額が急激に増えているそうだ。

100社に対する投資額は、この12カ月間だけで280億ドル(約3兆1,144億円)近くに達し、1年間で366%もの増加だった。調達資金の総額は520億ドル(約5兆7,840億円)を超えている。

リーディング50の上位4社はいずれも1年間で10億ドル(約1,112億円)以上を調達しており、1位のアント・フィナンシャルが145億ドル(約1兆6,128億円)、2位のJDファイナンスが19億ドル(約2,113億円)、3位のグラブが20億ドル(約2,225億円)、4位のバイドゥが19億ドル(約2,113億円)という状況だ。

著名な出資企業としては、米国のセコイア・キャピタル、ソフトバンク、グーグル親会社のアルファベット、スペインのメガバンクBBVA、中国のテンセント・ホールディングスの名前が挙げられた。

トップ10の4社が中国、米国を上回る

フィンテック企業100社を国別でみると、最多は米国の18社で、2位が英国の12社、3位が中国の11社となった。トップ10のうち米国企業は3社だが、中国企業はそれを上回る4社が入った。

また、2016年版では22カ国、2017年版では29カ国、2018年版では36カ国から企業が選ばれており、フィンテック市場はグローバル化が進んでいるという。2018年版の約半数に相当する41社が新興国で設立され、現在も新興国市場で活動を続けるなど、世界への広がりが感じられる。地域別では、アジア太平洋地域は前年の31社から37社に増え、台頭が目立つという。

出典:KPMG International、H2 Ventures / 2018 FINTECH 100

日本からのランクインはたった2社

2018年版フィンテック100について、KPMGグローバル・フィンテック部門共同リーダーのイアン・ポラリ氏は、決済と融資が引き続き主要なサービス領域とする一方、資産運用関連サービス14社とインシュアテック12社のランク入りにも着目し、「世界のフィンテック市場の多様化と規模の拡大を端的に示しています」と分析した。そして、ネオバンク10社のランク入りを、「デジタルバンクの世界的な急成長を予想してきましたが、こうしたネオバンクの動きはその始まり」としている。

なお、日本企業で選ばれたのは、29位の仮想通貨/ブロックチェーン技術ベースのサービスを手がけるQUOINEと、44位の資産運用サービスを提供すFOLIOという2社のみ。1兆円規模を超えるといわれる国内フィンテック市場だが、お寒い限りだ。

アクセンチュアの調査によると、日本で実施されたフィンテック投資の対GDP(国内総生産)比は、米国や英国、インドの30分の1程度に過ぎないという。同社は、日本においてもフィンテック・スタートアップが多数起業し、金融機関や一部の大企業との協業が増加しているものの、日本の潜在力を引き出しきれていない状況、と分析している。このままでは、フィンテックで一気に改革の進む世界金融市場から、日本は置き去りにされてしまう。

KPMGコンサルティングでフィンテック推進支援室長を務める東海林正賢氏も、「フィンテックはもはや大きく産業構造を変えつつある存在になってきています。これから日本の経済が大きく発展するためには、日本のフィンテック企業のグローバルな活躍が欠かせません」と指摘した。

フィンテック(FinTech)とは何か?注目が集まる私たちの生活を変える金融サービス | ボクシルマガジン
近年注目されている分野「フィンテック(FinTech)」なぜフィンテックは全世界的に注目されているのでしょうか。本...
国内フィンテック市場は1兆円突破、次に超えるべき「3つのハードル」とは | ボクシルマガジン
7月4日、矢野経済研究所は国内フィンテック市場を調査し、現況、領域別の動向、および将来展望を明らかにした。ついに1...
日本のフィンテック投資額は米英の1/30しかないという事実 | ボクシルマガジン
アクセンチュアは5月29日、2017年のフィンテックベンチャー企業への投資額の調査結果を発表した。それによると、グ...
スマートコントラクトとは? ブロックチェーン活用の仕組みとKDDIの実証実験を紹介 | ボクシルマガジン
スマートコントラクトとは、ガートナーが発表した2018年10大技術トレンドにも選ばれており、ブロックチェーンを活用...
ブロックチェーン「無視」が、すべての企業にとって危険なワケ  | ボクシルマガジン
ガートナー ジャパンは4月5日、ブロックチェーンへの取り組み状況に関する調査結果を発表した。それによると、ブロック...