音楽サブスク150%急成長、市場を後押し | ダウンロード不振もスマートスピーカー普及でストリーミング活況

「モノ消費」から「コト消費」への移行が指摘されて久しい。しかし、意外にも音楽市場は好調で、たとえば米国の音楽販売は前年比27.4%増だ。確かにCD販売は減少したが、それを補って余りあるペースでストリーミング・サービスが伸びている。今後は、スマートスピーカー(AIスピーカー)普及と連動して、定額制のサブスクリプション・タイプの急成長が期待される。

音楽サブスク150%急成長、市場を後押し | ダウンロード不振もスマートスピーカー普及でストリーミング活況

音楽販売は27.4%増と意外に好調

消費者の嗜好は、物を買う行為に楽しみを見いだす「モノ消費」から、旅行や食べ歩きといった体験そのものを楽しむ「コト消費」へ移行してきた、との見解がある。この流れは音楽市場にも存在すると指摘されており、CD販売の減少、ライブ収益の増加という結果につながっているとのことだ。

ところが、Border City Mediaが発表した米国の音楽関連消費に関する調査結果をみると、音楽市場でモノ消費が減少している、とは言い切れない。2018年におけるダウンロード、ストリーミング、物理メディア販売を合わせた音楽消費の指数は58億ポイントで、前年の46億ポイントに比べ27.4%も増えた。

ただし、全体の成長を主に支えているのは前年比41.8%増というハイペースで伸びたオンデマンド型の音声ストリーミング・サービスである。CDの販売は振るわず、前年から18.5%も少なくなってしまった。

そこで、音楽市場の具体的な現状をBorder City Mediaのデータから把握しよう。

明暗の分かれた米国市場

音楽ストリーミングは41.8%増

Border City Mediaは、CDなどの物理メディアによる音楽のアルバム販売、配信サービスによるアルバムおよびシングルの販売といった情報を集計し、各データに重み付けを施して消費指数を算出している。

たとえば、アルバム消費指数は、ダウンロード・サービスおよび物理メディアのアルバム販売総数と、シングル販売総数を10分の1にした値と、ストリーミング配信された回数を1500分の1にした値を足し算して導き出す。

そうして求めた2018年の消費指数は、アルバムが7億100万ポイント(前年比16.2%)、シングルが58億ポイント(同27.4%増)、オンデマンド・ストリーミングが8,095億ポイント(同35.4%)で、いたって好調だ。ストリーミングの内訳は、音楽ストリーミングが5,346億ポイント(同41.8%増)、ビデオ・ストリーミングが2,749億ポイント(24.3%)ということで、音楽ストリーミング・サービスの伸びが顕著だ。

ダウンロードとCDは減少

消費指数はいずれも増加したが、ストリーミングのデータを取り除くと状況は一変する。

アルバムの販売指数は1億2,120万ポイントで前年比18.2%減、シングルは4億110万ポイントで同28.8%減といった具合である。ちなみに、アルバムはダウンロード提供されるデジタル販売とCDなどの物理メディア販売にわけられており、前者が5,080万ポイント(同21.8%減)、後者が7,040万ポイント(同15.3%減)となり、物理メディアだけ売れ行きが悪い、ということではない。

“古い”はずのカセットとレコードが増加

物理メディア販売をメディア種で分けると、意外な結果が得られる。

CDは6,070万ポイントで前年から18.5%少なくなったが、レコードは970万ポイントで前年比11.9%増、カセットは11万8200ポイントで同18.9%増と、CDよりはるかに古いメディアの販売が増加傾向にあった。レコードはDJに好まれるため根強い人気があり、復活しても意外でない。しかし、カセットの販売増加は唐突だ。

カセットのヒットは米国に限られた現象でない。楽天の発表した「楽天市場ヒット番付2018」によると、「東の横綱」として「懐古消費」というキーワードが挙げられており、カセットのような古い商品が人気だったという。「楽天市場」における2018年1月から9月までのデータで見ると、カセットプレーヤーおよびカセットの売上は前年同期比41%増だそうだ。

音楽マーケット全体からすると小さな数字だが、レコードとカセットの人気は興味深い。

出典:Border City Media / 2018 YEAR-END REPORT -- U.S. MUSIC INDUSTRY CONSUMPTION

50%以上も伸びた音楽サブスク

それでは、改めて好調だったストリーミング・サービスの内容をみてみる。

Border City Mediaによると、2018年第4四半期の音楽とビデオを合わせたストリーミング・サービス消費指数は、前年同期に比べ44.7%増えていた。この種のサービスは、無料で利用できるが広告表示のあるタイプと、有料で広告が表示されなかったり機能が増えたりする定額制のサブスクリプション・タイプに大別できる。そして、広告表示タイプが前年から18.2%成長し、サブスクリプション・タイプはなんと50.5%も伸びていた。

出典:Border City Media / 2018 YEAR-END REPORT -- U.S. MUSIC INDUSTRY CONSUMPTION

サブスクリプション音楽サービスが好調なのは、間違いないらしい。アップル関連情報を発信しているPatently Appleによると、サブスクリプション・サービス「Apple Music」による2018会計年度第4四半期(2018年7月から9月)の売上高は100億ドル(約1兆826億円)あり、前年同期の79億円から27%の増収だという。

サブスクリプションを含めたストリーミング・サービスが好調なのは、日本も同様だ。日本レコード協会がまとめた2018年1月から9月までの音楽配信サービスの売上高は、以下のとおり。かっこ内の数字は前年同期比。

ダウンロード・サービス

  • シングル:121億6,600万円(96%)
  • アルバム:71億5,000万円(92%)
  • 音楽ビデオ:1億9,800万円(84%)

ストリーミング・サービス

  • サブスクリプション(音楽):225億9,000万円(129%)
  • サブスクリプション(音楽ビデオ):4億100万円(92%)
  • 広告(音楽):2億2,400万円(450%)
  • 広告(音楽ビデオ):21億400万円(164%)

ダウンロードが軒並み落ち込んでいるのに対し、ストリーミングは音楽ビデオ以外すべて増収した。特に、広告タイプ(音楽)の前年同期比450%という急成長が目立つ。日本では、無料で使える広告タイプで使用感を確かめているユーザーが多いのだろうか。

スマートスピーカーが貢献

ストリーミング・サービスの隆盛は、家庭向け常時接続ネットワークの存在と、高速モバイル通信が可能なスマートフォンの普及が大きく影響しているはずだ。

さらに、音楽メディア「Rolling Stone」の日本版は、「Amazon Echo」「Google Home」などのスマートスピーカー(AIスピーカー)を含むスマートホーム機器の増加が要因、とする全米家電協会(CTA)の分析を紹介した。こうした状況が、Apple Musicのほか、「Spotify」「Pandora」といった音楽サービスの収益底上げにつながっている、という。

確かに、以前紹介した調査レポートで、スマートスピーカー利用者の半数が音楽聴取を用途として挙げていた。音楽再生機能を売りにしたSonos(ソノス)製スマートスピーカーが注目されているのも、音楽とスマートスピーカーの相性がよいからだろう。

Rolling Stone日本版の記事には、「音楽ストリーミングにアクセスする人口が増えると、スマートホーム機器に興味を持つ人口も増えるというフィードバックループを小売企業は期待している」ともある。つまり、スマートフォンやスマートスピーカーで音楽ストリーミングを使い始めた人がスマートスピーカーをさらに購入し、場合によってはサブスクリプション・タイプへ移行する、というポジティブ・フィードバックがかかる可能性があるのだ。

そうなれば、サブスクリプション・サービスの市場規模はこれまで以上のペースで拡大する。かつて、ソニーの「ウォークマン」は音楽聴取スタイルに革命を起こした。これと同じように、スマートスピーカーで音楽サブスクリプション・サービスを利用するのが当たり前になるかもしれない。

平成最後でカセット売れた - 楽天市場ヒット番付2018発表、キャッシュレス普及で売れたのは? | ボクシルマガジン
楽天は11月26日、楽天市場の購買データをもとにした「楽天市場ヒット番付2018」を発表した。“平成最後”に関連し...
普及期に入ったスマートスピーカー  「宿題の調べもの」に使うスマスピ・ネイティブたち  | ボクシルマガジン
米国ではスマートスピーカーの普及率が18%に達し、当たり前の情報機器になりつつある。その可能性はまだ引き出し切れて...
上場で注目「Sonos(ソノス)」とは、市場でアマゾンとグーグルに迫るスマートスピーカー | ボクシルマガジン
オーディオ機器メーカー「Sonos(ソノス)」のIPO申請が話題になった。「Sonos One」というスマートスピ...