なぜ私たちは行動できないのか?寄付をめぐる議論が活発化|「誕生日寄付」のプラットフォームも登場

「他にもどこかで倒れてるおばあちゃんがいるかもしれないから、目の前のおばあちゃんだけ助けたら不平等になるから助けないの?」ZOZOの前澤社長がツイッターで問いかけた言葉が、反響を呼んでいる。心臓病を患う子どもへの支援活動をはじめたことへの、さまざまな声に答えたものだ。博報堂研究開発局「2017年 生活者の社会意識調査」によれば、7割の人が社会のために役立ちたいと考えているという。しかし実際に行動を起こせる人はわずかなのだ。なぜ、私たちは行動することへ二の足を踏んでしまうのだろうか。

なぜ私たちは行動できないのか?寄付をめぐる議論が活発化|「誕生日寄付」のプラットフォームも登場

ZOZO前澤社長の「寄付」をめぐり議論

寄付はどうあるべきかの議論が、ツイッターで活発に行われている。きっかけとなったのは、ZOZOの前澤友作社長のツイート。

拡張型心筋症を患う、上原旺典くん(愛称:おうちゃん)の渡米費用、治療費などの寄付を呼びかけたものだ。1月15日10時の時点で482,325件リツイートされ、賛同を集めている。

 
(出典:Twitter)

一方で、コメントでは批判の声も見られた。ツイッターで呼びかけることへの批判、たまたま目にとまった一人が助けられ、そうじゃない子は助けられないのか?という趣旨のものだ。

●「世の中おうちゃんと同じ様な子が沢山います。そんなお子さんの親がこの記事を見たらどんな気持ちになるでしょう。誰にも言わず前澤さん個人からしてあげたら良いかと思います。」(出典:Twitter)

●「私は、おうちゃんだけを救うより難病の子供達みんなに、子供達のための募金支援財団などを設立してあげて欲しいです。」(出典:Twitter)

そしてこうした声に対し、前澤社長がしたツイートはこれだ。

 
(出典:Twitter)

前澤社長の行動は、影響力があるからこそ賛否の議論が巻き起こりやすい。しかし批判の声をよく見ていくと、寄付を募る手法への批判は多いが、「助けたい」という想いが根底にあることに変わりはないようだ。

社会の役に立ちたいが、行動を起こせないのはなぜ?

博報堂研究開発局「2017年 生活者の社会意識調査」によれば、7割の人が社会の役に立ちたいと考えているという。

また、社会・環境問題に積極的に取り組む企業に好感を持つ人も7割を超え、こうした企業のサービスや商品に対する消費意欲も高い。

しかし、社会貢献活動を普段から行っている人は約2割という回答だ。関心があるのに、どうして私たちは行動を起こせなくなってしまうのか。いくつか原因を考察してみよう。

自分のことに一生懸命

現代は「個の時代」と言われる。働き方も、性別も、生き方も、自分の価値観に従い生きる時代だ。ただ、厳密に言えばまだ完全に社会の準備が整っているわけではなく、ときに戦わなければならないし、潰されそうになることもある。

そんな社会の過渡期で、みんなが自分のことに一生懸命なのだ。問いかけられれば、だれかの役に立ちたいという想いは同じなのかもしれない。

ただ、どこかにいる誰かを助ける、そこに時間やお金を割くという行動まで至らないのが現状だろう。

寄付は偽善という人もいる

近年、Twitterなどで著名人が災害支援の寄付を表明すると、売名行為だと叩く風潮がある。わざわざ公に言う必要がない、と考える人もいるのだ。しかしメディアから勝手に報道された場合は、称賛される傾向だ。

インターネット社会で、自分のことを自分で発信するのは当たり前になった今。自分の価値観で行った行動について、発信するのは何もおかしいことではないはずだ。

しかし、事が「人助け」になった瞬間に、自分で発信する=売名、偽善ととらえる人もいる。

こうした空気感が、何かしたいと思っている人の足元を重くしているのかもしれない。

真面目さゆえのジレンマ

前澤社長を批判する人のコメントにもあった「一人だけではなくみんなを助けたい」という想いを持つ人がいる。これは、真面目に考えるがゆえのジレンマなのかもしれない。

助けたい、だけどたった一人の人を救うだけで何が変わるんだ。他にも困っている人はたくさんいるじゃないか、社会は変わらないじゃないか。課題感ばかりが膨らみ、具体的な手段が見つけられずにいるケース。感受性が強く、正義感が強いのだ。

「課題解決のためにどんな手段があるのか」については、未来を担うこどもたちにも、大人として教えてあげたいことのひとつだ。

個人の価値観を自由に表現できる今だからこそ

仕事、病気、育児、介護など日々の生活で一生懸命な私たちは、誰もが前澤社長にはなれない。しかし、目の前でおばあちゃんが倒れていたら、やっぱり助けるのが私たちだ。

社会課題を解決するために起業する、NPO法人で働く、ボランティア活動をする、寄付をする。

こうしたわかりやすい社会貢献活動ができなくてもいいのだ。家族、友人、仕事の仲間、Web上でつながるだれかが助けを求めるときに、まずはその声に耳を傾けるだけでもいい。

ほんの少しの行動が、何かを変えるかもしれない。

また、個人の価値観を自由に表現できる時代だからこそ、そこに影響を受ける人がいることも事実。ほんの少しの気遣いや優しさが、必要なのかもしれない。

自分の誕生日だけ、寄付してみる?

より手軽に、何か行動を起こしてみたいと思う人におすすめしたいのが「誕生日寄付」だ。

日本フィランソロピー協会は、1月11日に「誕生日寄付」事業を開始すると発表した。誕生日寄付とは、自分の誕生日=いのちを授かった日にいのちに感謝し、それを寄付という形で表すという提案である。

瀬戸内 寂聴さん、日本サッカー協会の川淵 三郎さん、慶応義塾大学教授 前野 隆司さん、シンガーソングライターの加藤登紀子さんらが賛同人となっている。

川淵氏は自分の誕生日に25年以上、寄付を続けているという。

1年に1回の誕生日だけなら、自分が普段しないことをしてみるのもいいのではないだろうか。