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2018年の国内スマホ市場
スマートフォンは毎日の生活に欠かせないデバイスで、誰もが当たり前のように使うガジェットになった。裏を返せば、すっかり行き渡ってしまい、スマートフォン利用者がこれ以上増えることは期待できない。
日本だけでなく、先進国は同じ状況にある。スマートフォンのメーカーは手のひらサイズの小型デバイスや折りたたみ式(フォルダブル)スマートフォンといった目新しいデザインに挑戦し、需要喚起を図っている。
このような取り組みが奏功するかは分からないが、日本のモバイル通信市場は2019年に大きく変わる。次世代の5G通信サービスが始まり、楽天が自社通信網を整備して携帯電話キャリアとしての事業を開始するのだ。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3大キャリアとその他の仮想移動体通信事業者(MVNO)という構図のまま変化のなかったモバイル市場で、事業者の勢力図やスマートフォン販売状況などが様変わりする可能性もある。
そうした変化に備えるため、デロイト トウシュ トーマツの「世界モバイル利用動向調査 2018」を参照し、前回は各国内キャリアのシェア、MVNOユーザーの傾向、5Gサービス利用意向などを確かめた。今回は、国内ユーザーのスマートフォン利用状況をみていこう。
日本におけるスマホの用途
肌身離さず持っているスマートフォンは、一体どのような用途に使われているのだろうか。デロイトは国内スマートフォン所有者1,363人のデータを集計した。
若者はSNS、年配は天気予報など限定的
調査結果からは、18歳から34歳のユーザー層はソーシャルネットワーク(SNS)に多く利用しており、55歳以上だと天気の確認やニュースの取得といった用途に限定される、という傾向が浮かび上がった。65歳から75歳になるとウェブブラウザの使用頻度が下がり、スマートフォンの汎用性をあまり必要としていないらしい。
スマートフォンで1日に少なくとも1回使用するアプリを答えてもらったところ、各年代で20%以上の使用率となった項目は以下のとおり。
18歳~24歳
- SNS:43%
- ブラウザ:35%
- 天気アプリ:27%
25歳~34歳
- SNS:44%
- ブラウザ:39%
- 天気アプリ:32%
- ニュースまとめ読み:21%
35歳~44歳
- 天気アプリ:38%
- SNS:32%
- ブラウザ:31%
- ニュースまとめ読み:25%
45歳~54歳
- 天気アプリ:32%
- SNS:26%
- ブラウザ:26%
- ニュースまとめ読み:26%
55歳~64歳
- 天気アプリ:42%
- ニュースまとめ読み:31%
- 新聞/ニュース番組:23%
- ブラウザ:20%
65歳~75歳
- 天気アプリ:44%
- ニュースまとめ読み:27%
- 新聞/ニュース番組:25%
全世代で増えるメッセージング利用
もともとは電話として携帯電話から発展してきたスマートフォンだが、音声通話だけに使っている人はほとんどいないだろう。デロイトが週1回以上スマートフォンで利用されているコミュニケーション手段を調べたら、確かに音声通話の利用率は全体的にやや減少していた。
これに対し、「LINE」「Facebookメッセンジャー」などのインスタントメッセージ(IM)はすべての年代で増え、SNSも若い層で増加している。デロイトは「いずれの年代においても、コミュニケーション手段は従来の通話、メールから、インスタントメッセージアプリ、SNSに軸足が移りつつある」とした。
各コミュニケーション手段の年代別利用率は以下のとおり。かっこ内は前年の数値。
音声通話
- 18歳~24歳:52%(42%)
- 25歳~34歳:58%(57%)
- 35歳~44歳:57%(55%)
- 45歳~54歳:62%(65%)
- 55歳~64歳:62%(73%)
- 65歳~75歳:72%(78%)
インスタントメッセージ(IM)
- 18歳~24歳:84%(77%)
- 25歳~34歳:75%(72%)
- 35歳~44歳:71%(65%)
- 45歳~54歳:64%(60%)
- 55歳~64歳:68%(56%)
- 65歳~75歳:53%(49%)
SNS
- 18歳~24歳:78%(73%)
- 25歳~34歳:69%(58%)
- 35歳~44歳:57%(42%)
- 45歳~54歳:46%(37%)
- 55歳~64歳:36%(37%)
- 65歳~75歳:31%(29%)
急成長するストリーミング・サービスは?
続いて、スマートフォンの用途のうち急成長中といわれる音楽ストリーミング・サービスと、関連性の高い動画ストリーミング・サービスの利用状況をみる。
若年層は日常的に使用
音楽や動画のストリーミング用アプリを1日に少なくとも1回使う人は、若年層ほど高く、以下のような割合だった。デロイトは「24歳までの若年層では写真/動画、音楽ストリーミングアプリが日常的に使用されている」とした。
18歳~24歳
- 音楽ストリーミング:17%
- 動画ストリーミング:15%
25歳~34歳
- 音楽ストリーミング:11%
- 動画ストリーミング:11%
35歳~44歳
- 音楽ストリーミング:7%
- 動画ストリーミング:9%
45歳~54歳
- 音楽ストリーミング:6%
- 動画ストリーミング:8%
55歳~64歳
- 音楽ストリーミング:5%
- 動画ストリーミング:3%
65歳~75歳
- 音楽ストリーミング:2%
- 動画ストリーミング:1%
サブスク契約者が少ない
若年層のストリーミング・サービス利用率をみると、ユーザー自体は多いように感じる。ところが、「NHKオンデマンド」などの「見逃したテレビ番組のストリーミング視聴」サービス、「Netflix」「Hulu」「Abema TV」などの「映画とテレビ番組のストリーミング視聴」サービスは、他国ユーザーより利用している人が相当少ない。
「Apple Music」「Spotify」「LINE MUSIC」といった「音楽ストリーミング聴取」サービスの利用率は、動画より高かった。ただし、比較対象の英国、中国、オーストラリア、カナダからは見劣りする。なかでも中国ユーザーは、動画も音楽も際立ってストリーミング利用率が高い。
さらに他国と異なるのは、月額制や年額制で契約するサブスクリプション・サービスの利用率だ。Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Spotifyの契約率を比べると、日本は以下のようにほぼケタ違いに低い。例外は、オーストラリアでAmazonプライム・ビデオが苦戦しているくらいだ。
Netflix
- 英国:36%
- 日本:2%
- オーストラリア:38%
- カナダ:44%
Amazonプライム・ビデオ
- 英国:25%
- 日本:13%
- オーストラリア:2%
- カナダ:12%
Spotify
- 英国:20%
- 日本:4%
- オーストラリア:20%
- カナダ:17%
日本は、LTEモバイルネットワークが普及しており、家庭でもブロードバンド回線経由のWi-Fiが利用しやすい。スマートフォンでストリーミング・サービスを気軽に楽しめる環境が整っているのだが、利用率がこれほど低いのは何が原因なのだろう。特に、サブスクリプション・サービスを契約している人の少なさは驚くほどだ。
他国ユーザーの利用状況との相違を分析すれば、国内でも動画および音楽のサブスクリプション・サービス契約数を急増させる方策が見つかるかもしれない。