世界が注目VR/AR最新テック5選、医療や福祉支える - SXSW2019

米国で毎年3月に開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」では多くの新しいテクノロジーが紹介される。特に、革新的な取り組みを表彰する「SXSW Interactive Innovation Awards」は目が離せない。過去にはTwitterやAirbnbも取り上げられた。本記事では、2019年のファイナリスト13カテゴリ、全65プロジェクトのなかから、VR/AR分野の5プロジェクトを紹介する。医療や福祉の現場を支える技術が選出されている。

世界が注目VR/AR最新テック5選、医療や福祉支える - SXSW2019

革新的なテクノロジーのショーケース「SXSW」

米テキサス州オースティンで毎年3月に開催されるイベント「South by Southwest(SXSW)」をご存じだろうか。もともとは音楽祭として1987年に始まったのだが、その後1994年に映像コンテンツの扱いを開始し、1998年にはインタラクティブ部門として各種テクノロジーも取り上げるようになった。

今や世界的なイベントであり、革新的な取り組みを表彰する賞「SXSW Interactive Innovation Awards」ではかつてTwitterやAirbnbが選ばれるなど、目を離すことなどできない。2019年の同賞では、最終選考に残った13カテゴリー、全65プロジェクトが3月9日に会場でプレゼンテーションを行い、受賞者が3月11日に発表される。

どのプロジェクトも興味深いが、Beyond(ビヨンド)では注目度の高いカテゴリーに絞って5回シリーズでみていく。第1回の今回は、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)に着目し、これらに複合現実(MR)を合わせたカテゴリー「VR, AR & MR」のファイナリスト、5プロジェクトを紹介しよう。

SXSWで注目、5つのVR/ARプロジェクト

2019年、SXSWファイナリストに選出された「VR, AR & MR」カテゴリーのプロジェクトは、「Fundamental Surgery」「HaptX Gloves」「AVEnueS」「Lens.io」「True AR SDK」の5つだ。

低コストなVR手術シミュレーター「Fundamental Surgery」

Fundamental Surgery」は、外科手術トレーニング用のシミュレーション・システム。VRゴーグルを装着し、触覚フィードバック対応のコントローラを操作して疑似手術を行うシステムで、実際に執刀する際の映像や音、手触りをリアルに体験できるという。医学生が手術の練習に使ったり、外科医がリハーサルなどで利用したりすることを想定しており、提供元のファンダメンタルVRは「外科手術用のフライト・シミュレーター」と称している。

同様のシステムは以前から存在し、多くのメリットがあることも認められているものの、極めて高価で導入が難しい。これに対しFundamental Surgeryは、特別なハードウェアを使わず、市販されている民生用のPCとVRゴーグルでシステムを構築。

具体的には、一般的なWindows搭載PC、「Oculus Rift」「HTC Vive」といったVRゴーグルなど6,000ドル程度(約67万円)のハードウェアを用意すれば、本格的な手術シミュレーションが使い始められる。

これだけ低コストであれば、導入は容易だ。医師の育成や技術向上に多大な貢献をするはずだ。

リアルな触覚が得られるVRグローブ「HaptX Gloves」

HaptX Gloves」は、リアルな触覚フィードバックが特徴のVRグローブ。これを装着すると、VR空間内でも実在する物に触ったような感覚が得られるそうだ。

フィードバックは細かく制御され、VRオブジェクトの形だけでなく、質感や動きまで感じられるという。また、指を引っ張るパワード外骨格の働きでVRオブジェクトの重さを体験したり、ぶつかった衝撃を受けたりもする。さらに、磁力を利用したモーション・トラッキング機能を備え、1mm以下の精度で手の位置を検出できるとしている。

ソフトウェア開発キット(SDK)も用意されており、HaptX Glovesは既存の各種システムと連携させることが可能だ。すでに、自動車や航空機、医療などの業界に導入され、設計業務や訓練といった作業で活用されているという。

リアルな対面トレーニングを実現する「AVEnueS」

続いては、何らかの事情で保護を必要とする子どもの暮らす家庭へ出向き、保護者と話し合って支援方針を決定する、という生々しい体験ができるVRシステム「Accenture Virtual Experience Solution(AVEnueS)」だ。VRゴーグルを装着すると実写ベースの映像が現れ、散らかって殺伐とした部屋で被支援者と向き合う。恐ろしいほど没入感の高い世界に放り込まれる。

自治体の福祉部門に勤務するケースワーカーなどを対象とするシステムであり、現場で学んでいくしかなかった被支援者とのコミュニケーションを、安全な環境で訓練できるという。ケースワーカーだけでなく、教師や警官などのトレーニングにも効果があるとしている。

誰もがARを制作できる「Lens.io」

ARは魅力的で、使い方によっては実用性も高く、商品の紹介などにうってつけだ。しかし、ARコンテンツの制作は手間がかかるうえ、消費者に専用アプリのインストールを要求するといった高いハードルもあり、採用は簡単でない。こうした問題を解消し、誰でもARを活用可能にするソリューションが、「Lens.io」である。

Lens.ioを利用すると、専用アプリを使う必要がない。あらかじめ用意しておいたARコンテンツのURLへウェブブラウザでアクセスすれば、ARが体験できる。たとえば、ソファーやテーブルを部屋に置いた状態をスマートフォンで確認可能な家具通販サイト、といったサービスが実現可能だ。スマートフォンをかざすと楽しげなアニメーションが再生されるような商品パッケージも作れる。

ウェブサイト運営や販促施策などに大きな予算を割り当てられない企業にとって、強力なツールとなるだろう

フロントガラスが画面になる「True AR SDK」

スイスのウェイレイは、自動車のフロントガラスが表示デバイスとして活用できると考え、フロントガラスへ投影するARコンテンツの開発フレームワーク「True AR SDK」をリリースした。同ツールを使うことで、フロントガラスをARディスプレイ化するアプリの開発から試験、デバッグまでが、一貫して行えるという。

ナビゲーション・システムと連携させてルート案内用の映像を出すほか、注意を促す警告の表示にも使える。運転の必要がない自動運転車になれば、純粋に楽しむためのARコンテンツを投影できるかもしれない。

VR/AR市場は2022年11兆円規模へ

全世界で2022年には11兆円を超える規模へ拡大するとみられるVR/AR市場への期待は高い。これに超高速かつ超低遅延の次世代移動通信方式である5Gが組み合わされば、地球の反対側と通信回線を結び、離れた相手とVRゲームをプレイすることや、AR遠隔手術をすることも夢でなくなる。

SXSWでは、そうした未来の一端を覗き見できるのだ。

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