経済に革新を起こす5プロジェクト - SXSW2019、New Economyファイナリスト

米国で毎年3月に開催される「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」では多くの新しいテクノロジーが紹介される。特に、革新的な取り組みを表彰する「SXSW Interactive Innovation Awards」は目が離せない。本記事では、2019年のファイナリスト13カテゴリー、全65プロジェクトのなかから、SXSWが「新しい経済」と呼ぶNew Economyカテゴリーの5プロジェクトを紹介する。それぞれ新たな経済圏を生むと期待されている。

経済に革新を起こす5プロジェクト - SXSW2019、New Economyファイナリスト

革新的なテクノロジーのショーケース「SXSW」

米テキサス州オースティンで毎年3月に開催されるイベント「South by Southwest(SXSW)」をご存じだろうか。もともとは音楽祭として1987年に始まったのだが、その後1994年に映像コンテンツの扱いを開始し、1998年にはインタラクティブ部門として各種テクノロジーも取り上げるようになった。

今や世界的なイベントであり、革新的な取り組みを表彰する賞「SXSW Interactive Innovation Awards」ではかつてTwitterやAirbnbが選ばれるなど、目を離すことなどできない。2019年の同賞では、最終選考に残った13カテゴリー、全65プロジェクトが3月9日に会場でプレゼンテーションを行い、受賞者が3月11日に発表される。

どのプロジェクトも興味深いが、Beyond(ビヨンド)では注目度の高いカテゴリーに絞って5回シリーズでみていく。第2回の今回は「New Economy」、つまり「新しい経済」カテゴリーのファイナリスト、5プロジェクトを紹介しよう。

第1回「VR/AR」はこちら

SXSW「新しい経済」ファイナリスト

SXSWのいう新しい経済とは、「商品やサービスの取引を再定義する」何かである。例として、シェアリング・エコノミーブロックチェーン技術で運用される仮想通貨(暗号通貨)、マイクロ・ファイナンス、モバイル機器による決済システムが挙げられた。

2019年のファイナリストに選出された「New Economy」カテゴリーのプロジェクトは、「CLEAR」「Branch Pay」「Hash Finance」「Open-Source Identity.com Ecosystem」「Toast Go」の5つだ。

汎用的な生体認証ソリューション「CLEAR」

CLEAR」は、指紋と虹彩による生体認証サービスを提供するソリューション。いずれも目新しい生体認証ではない。CLEARの特徴は汎用的なサービスであること。

よく見かける生体認証機能は、特定のデバイスやサービスに限定されている。たとえば、銀行のATMで使う指紋認証はATMを操作するためのものだ。これに対しCLEARは、ユーザーが指紋と虹彩のデータを登録しておくと、CLEARを導入しているさまざまな場所で生体認証が使える。つまり、指紋などを利用するサービスごとに登録する手間がかからず、あちこちでスムーズな生体認証が利用可能になる。

CLEARは米国の空港や野球場といった施設、レンタカー会社のハーツなど、全米で40か所以上に導入済みという。

認証機能だけでなく決済機能も備え、売店の代金支払いにも使われている。ユーザーの年齢確認も行えるので、年齢制限のあるアルコール飲料などの販売時にも便利だ。

出典:CLEAR / WHERE WE ARE

時間給労働者を支援する支払いシステム「Branch Pay」

企業向けの従業員管理ソリューションを提供している米ブランチ・メッセンジャーによると、時間給で働いている労働者は経済的に余裕のない人が多いという。そうした労働者の70%は友人や家族から借金をしたことがあり、75%以上は不意の出費で支払いに間に合わなかった経験があるそうだ。

このような状況を少しでも改善する手段として、ブランチ・メッセンジャーは労働者が好きなタイミングで時間給を受け取れるサービス「Branch Pay」を開始した。スマートフォンのアプリから利用可能なサービスで、振込先の銀行口座などを設定して利用する。

利用者は、所定の勤務が完了した段階でBranch Payにアクセスして給与を確認できる。そして、現金が必要な状況の場合は、支払いをリクエストすれば口座にすぐ振り込まれる。

ブランチ・メッセンジャーは、経済的なストレスが軽減されるため、労働者は精神的に安定し、仕事に対する意欲が向上するとしている。そして、雇用している企業は、結果的に離職率の低下が期待できるという。

株価に影響するツイートを自動収集する「Hash Finance」

株式投資のなかでも短い期間に何度も株を売買するデイトレードは、刻々と上下する株価を見極め、適切なタイミングで取引しなければならない。インターネットが普及し、ソーシャルメディアで情報が一気に伝搬する現在では、ツイートされたうわさが株価に大きな影響を与えることもある。そのため、デイトレーダーはニュースだけでなくSNSにも目を光らせる必要があるのだが、情報を追いかけるだけでも大変なうえ、情報の真偽を適切に判断する能力まで求められる。

そこで登場したのが、Twitterから株式に関する情報を収集するサービス「Hash Finance」である。

Hash Financeは、Twitterから株価に影響するであろうツイートを自動的に収集する。ただし、ネットに流れる情報は信頼性の低いものが多く、ツイートを集めただけでは役に立たない。Hash Financeは機械学習(マシンラーニング)アルゴリズムによる分析を実行することで、意味のある情報だけピックアップできるそうだ。

現在は15分ごとに選別した情報をウェブに掲載しているが、今後プレミアム・サービスとして契約者のスマートフォンへ60秒間隔の頻度で送信する取り組みを始める予定だ。

出典:Hash Finance / About

ブロックチェーンでユーザー認証「Identity.com」

Open-Source Identity.com Ecosystem」は、ブロックチェーンとスマートコントラクトを利用して提供する、分散型のユーザー認証システム。スマートフォンを使って一度認証しておくと、買い物やホテルの宿泊、各種アカウントの作成などの際に身元を保証してもらえる。

SXSWでファイナリストに残ったオープンソース版は2018年第4四半期にリリースされたばかりで、これからが楽しみなプロジェクトである。

レストラン向けハンディ決済端末「Toast Go」

Toast Go」は、レストランでの利用を想定した、ハンディタイプのPOS機能付き決済端末。注文の受付から始まり、クレジットカードによる決済などまで、レストランの接客業務で必要とされるさまざまな作業を、スマートフォンを大きくしたようなデバイスで処理できる。

レストラン向けPOSシステムの構成要素であり、レジスター用の端末、厨房用のオーダー表示画面、来店者用のセルフオーダー端末などとも連携する。Toast Goを提供している米トーストは、作業効率が向上することで売上が増え、顧客の満足度も高められるとしている。

出典:Toast / Toast Go

新たな経済圏を生むと期待

注目New Economyプロジェクトとして選ばれた、5つのファイナリストをみてきた。いずれのプロジェクトも、それ自体に大きな可能性があるだけでなく、新しい大きな経済圏を生じさせる力を持っているように感じる。

おそらくSXSWはその点を評価しており、だからこそ新しい経済カテゴリーに分類したのだろう。

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