住む場所も自由に、自分らしく - 多拠点生活を実現する3つの定額制居住サービス

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記事の情報は2019-03-31時点のものです。

デュアルライフ(二拠点居住)、多拠点居住など、一つの家にとらわれない暮らしを楽しむ人が増えてきた。関心を寄せる人の多くは20〜30代、俗にいうミレニアル世代だ。デジタルネイティブともいわれ、多様性を尊重し“モノよりコト”型の消費を好むとされる。これが住まいにも訪れようとしている。複数拠点での生活を実現する、3つの定額制居住サービスを紹介する。
住む場所も自由に、自分らしく - 多拠点生活を実現する3つの定額制居住サービス

多拠点生活を叶える3サービス

家を持たない暮らしに関心を持つ人や、複数拠点での生活を楽しむ人が20〜30代を中心に増えてきた。リクルートは「2019年のトレンド予測」で、都心と田舎の二拠点生活(デュアルライフ)を積極的に楽しむ「デュアラー」を挙げ、2018年には約17万人がデュアルライフを開始、意向者は1,100万人に及ぶと推計する。

デュアルライフ、はたまた多拠点生活を実現するには、まず「家」の問題は外せない。従来は、持ち家にせよ借家にせよ一つの家にある程度長く住むのが当たり前だった。ところが、これを覆す新しいサービスが登場した。「定額住み放題」でより自由な暮らしを実現できる住まい方だ。

“モノからコトへ”という消費の流れが、住まいにも訪れようとしている。この記事では、定額でいくつもの家に住める、「XROSS HOUSE(クロスハウス)」「ADDress(アドレス)」「HafH(ハフ)」の3サービスを紹介する。

3000物件を移動し放題「XROSS HOUSE」

出典:XROSS HOUSEホームページ

シェアハウス運営のXROSS HOUSE(クロスハウス)は、定額制の居住サービスを提供している。どんな理由でも、移動したいときに物件を移動できるのが最大の魅力。

日本の賃貸住宅は、契約したら数年住み続けるのが一般的である。しかし近隣住民とのトラブルや、急な転勤、ライフスタイルの変化など、引っ越ししたい理由は随時発生するもの。そんな不自由さを解決するのが、XROSS HOUSEのサービスだ。

XROSS HOUSEでは、初期費用と物件の家賃を支払えば、都内を中心とする首都圏の3,000物件が1か月単位で移動し放題になる。人気駅などエリアの選択肢が広げられるのも嬉しい。

部屋タイプはドミトリー、セミプライベート、個室、家具付きアパートメントの4つで、部屋タイプを変更したい場合も無料で対応してもらえる。

出典:XROSS HOUSEホームページ

定額料金とシンプルな手続き

家はシェアハウスとアパートメントの2形態があり、初期費用としてシェアハウスで30,000円、家具付きアパートメントで50,000円がかかる。その他、日割りの家賃と鍵の保証金が必要だ。

シェアハウス

シェアハウスは部屋タイプにより料金が異なり、月額料金のほかに、共益費10,000円が必要。

家のタイプ 月額料金
ドミトリー 29,800円
セミプライベート 9,800円
個室 30,000円~

アパートメント

家具付きアパートメントの家賃は物件によって異なり、ガスや電気などのライフラインは個別で契約が必要。

なお、手続きはWEB上で完結でき賃貸貸借契約などが不要。首都圏周辺で、仕事の状況や気分に応じて自由に住まいを選びたい人には使いやすいサービスである。今後海外にも展開予定で、2026年までに全世界で10,000室の物件提供を目指していくという。

世界のゲストハウスで暮らしをシェアする「HafH(ハフ)」

出典:HafHプレスリリース


 
多様性を尊重し「世界を旅して働こう」というテーマを掲げているのが、KabuK Style(カブクスタイル)が運営する定額制住居サービスHafH(ハフ)だ。

2018年11月にクラウドファンディングサイト Makuakeでサービスを発表。400人以上の支援者から1,000万円以上を集め、2019年1月には長崎に初拠点をオープンした。4月の本格的なサービス開始にあわせて各地のゲストハウスと提携を進め、7か国に53の拠点を用意した。

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最短5日から利用可能な4プラン

宿泊をともなう料金プランは、日数に応じて4タイプ。気軽に月5日だけ体験できるプランから、完全に多拠点生活を送る人向けのプランまである。

光熱費、インターネット費、敷金・礼金・保証金は料金に含まれており、1か月単位での契約が可能。気軽に多拠点生活をはじめてみたい人や、インバウンドの外国人利用も見込んでいる。

プラン名 月の利用日数 月額料金 特徴
ちょっとハフ 5日 16,000円 月に5日だけ、多拠点生活を体験できるプラン
ときどきハフ 10日 32,000円 月に10日多拠点生活体験。外国人のインバウンド対応
いつもハフ(風) 30日 82,000円 月に30日多拠点生活可能。アドレスホッパー向け
いつもハフ(土) 30日 82,000円 1拠点に30日間ベッドを確保しながら、10日の多拠点利用も可能

出典:HafHプレスリリース

住み放題で空き家活用「ADDress(アドレス)」

出典:ADDressホームページ

HafHと同じくクラウドファンディング Makuakeで優先会員を募集し、1,000万円以上の支援を集めたADDressは、国内外の空き家や遊休別荘と泊まりたい人をマッチングするCo-Living(コリビング)サービスだ。

出典:ADDressプレスリリース

4月1日のサービス開始時には、東京都心から1~2時間程度の物件11か所の提供を予定している。また法人会員も募集しており、第1弾法人会員にはガイアックス、CAMPFIRE、NPO法人フローレンス、リクルート住まいカンパニーなどが参加している。

空き家問題や地域活性化など社会貢献にもつながり、社員の福利厚生や新しい働き方を体験できる。同サービスへの企業の関心も高い。

年会員、月会員、法人会員の3種

会員のタイプによって料金は異なるが、基本的に光熱費込み。空き家はリノベーション済みで、wifi、アメニティ、家具・家電も完備されている。

1個室の連続予約は1週間まで、一度にできる予約の上限日数は14日間となっている。

会員タイプ 料金
年会員 480,000円(40,000円/月)
月会員 50,000円/月
法人会員 80,000円/月〜※同時利用不可。1アカウントを企業内で共有利用

※一部地域物件は光熱費別途。表示価格は予定

さらに「泊まり放題」パートナーとして、月5万5,000円でハンモサーフィン、Little Japanが運営するゲストハウスも泊まり放題となるサービス、また日帰りの1dayメンバーシップも設定予定だという。

出典:ADDressプレスリリース

住まいの自由化がもたらす暮らし

定額でいくつもの家に住める3つのサービスを紹介した。これ以外にも、海外を中心にサブスクリプション型居住サービスを展開予定の「トークンハウス」や、ADDressとも提携するLIttle Japanが手がけるホステル泊まり放題パスなど、住まいを自由化するサービスが注目されている。

インド発のユニコーン企業がソフトバンクと展開する「OYO LIFE」も話題だ。敷金、礼金、手数料なしで、家具家電つき。1か月から借りられて、スマートフォン一つで手続きを済ませられる。

関心を持つ多くはミレニアル世代

東京都心への人口集中が進む一方で、地方移住や田舎暮らしに興味を持つ人は多い。とりわけ20代は移住する側、受け入れる側ともに関心が高く、国土交通省の調査では、三大都市圏の24.8%、5万人未満市町村の25.2%が地方移住推進を希望している(国土交通白書2018)。

田舎へ移住したい気持ちがあっても、仕事との兼ね合いや金銭的な問題は大きく、本格的な定住はハードルが高い。しかし、ワークライフバランスを重視する人や企業が増加し、テレワークなど多様な働き方も広まるなかで、状況は変わりつつある。

さらに、空の移動を手軽にしたLCC(格安航空会社)、日常で着る服をレンタルできるサブスクリプションサービス、クルマを手軽に借りられるカーシェアリングなど、多拠点生活を支えるサービスも相次いで登場し、ハードルは確実に下がった。

こういった新しいライフスタイルを積極的に享受しようとするのがミレニアル世代。デュアラーの6割近くを20代と30代が占め、また約半数が世帯年収800万円未満だという(リクルート住まいカンパニー「デュアルライフ(2拠点生活)に関する意識・実態調査」2018年)。

「住む」が体験になる未来

シェアリングエコノミーの浸透や民泊合法化、また地方物件の価格低下などを背景に、スタイルの幅が広がった。月1万5,000円からホステル泊まり放題となるサービスが話題を集めたり、地方の古民家を共同購入して週末だけ集まり空いている日は民泊として貸し出すスタイルが注目されたりと、住むことも家そのものも、流動性が高まった。

一つの家に住み、一つの職場で働くという日本の暮らしは、大きく変わりつつある。