ニュースのポイント
1.農業の人手不足・高齢化は加速
2.ドコモが全国農協へ技術提供で生産性向上を目指す
3.マッチングプラットフォームの実証実験もはじまる
農業の担い手不足と高齢化問題
農林水産省の農業労働力に関する統計によれば、平成22年に260万人いた農業就業人口は平成30年には175万人に減少している。また、そのうち約7割は65歳以上の高齢者だ。
担い手不足は深刻である。農業従事者の平均年齢は66.6歳。日本の農業は、生産・販売・働き方など、あらゆる過程での大きな転換を迫られているのだ。
若い人材を取り込み、法人の参入を促進するため、ICTやロボット技術などを駆使したスマート農業への取り組みは進んでいる。
また、楽天ラクマ、メルカリなどのフリマアプリでの販売など、販路の多様化は進んでいる。
しかし内閣府の資料によれば、平成28年3月時点で、全農産物流通の5割以上はJAを通して行われているという。
つまりこの流通構造をどう変革していくかは、農業全体の底上げを図るうえでは欠かせないのである。
ドコモがRPA活用ソリューションパッケージを全国JAへ提供
ドコモは、全国のJAに農業界向け働き方改革ソリューションの提供を発表した。
提供されるのは、パソコン上の定型業務を自動化できるRPA「WinActor®」と、手書き文字をデータ化することのできるOCRを組み合わせた、農業界向けのソリューションパッケージだ。
同社は2018年7月から山口県のJA下関との実証実験を行い、農家からの手書き注文書をOCRで読み取りデジタルデータ化し、オペレーターによる入力作業をRPAで自動化。これにより、職員の生産資材などの予約注文作業時間を約1,500時間、80%削減に成功したという。
また注文書帳票の改善により、水稲の予約注文数も20%増加させた。
全国の農業協同組合への提供開始は4月1日から。2か月トライアルパックで690,000円~、本契約で2,794,000円~(年間ライセンス契約)、顧客ごとにカスタマイズが必要なため、料金は一律ではない。
生産者と買い手企業のマッチングも
また同社は、生産者と買い手企業のマッチングを行う「地元を食べよう」実証プロジェクトも実施している。これは、JA横浜と生産者と買い手をつなぐ農作物取引プラットフォームを企画・開発・運用するTsunaguとの共同プロジェクト。
同実証実験では、あらかじめ指定した場所で作物の受け渡し・受け取りを行う「フード・アセンブリー方式」で、物流コストを削減し、鮮度の高い食品を地産地消するしくみの検証。
そして、売り手であるJAや生産者、買い手となる企業(食品加工、飲食店、ホテル、食堂など)が直接取引を行うプラットフォームの有用性を検証するのが狙いである。
生産者は新たな収益確保、買い手は物流コストの削減や鮮度の高い地産食品の安定確保など双方にメリットがある。
3月31日まで行われる同検証の結果で有益性が証明されれば、農業流通にとってのインパクトは大きい。