投資家から見たCo-Living(コリビング)市場 - 世界に住み放題のHafH、本登録開始

「世界を旅して働く」をコンセプトとする定額制居住サービス「HafH(ハフ)」が、4月1日よりスタートする。日本におけるCo-Living(コリビング)サービス展開の先駆者となるであろうサービス。ミレニアル世代を中心に熱い視線を集めており、代表の砂田氏は、関連市場を世界で3,000兆円規模と見込む。事業説明会で開催されたトークセッションより、投資家視点から見たCo-Living市場を紹介する。

投資家から見たCo-Living(コリビング)市場 - 世界に住み放題のHafH、本登録開始

注目され始めたCo-Livingサービス

日本でも、暮らしをシェアする「Co-Living(コリビング)」サービスが本格的に始まろうとしている。2018年後半に相次いでサービスが発表され、熱い視線を浴びている。

その一つが、4月1日にスタートする「HafH(ハフ)」。月額8万2,000円で世界のネットワーク拠点に「住み放題」となるサービスを提供する。HafHはクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」で、目標額を大きく上回る1,000万円以上を408人から集めた。1月には、1号拠点「HafH Nagasaki SAI」をオープン。3月20日21時より、専用ウェブアプリ「Happli(ハプリ)」上で会員(ネイバーと呼ぶ)の登録受付を始める。

HafHでは、住み放題プランだけでなく、月額3万2,000円で10日使える「ときどきハフ」など主に5つのプランを用意。

HafH(ハフ)のプラン。利用状況に応じてHafH Coinが付き、個室予約などに利用できる

自社運営拠点に加え、全国のゲストハウス、東南アジアやアフリカなど海外にある7施設とも提携しており、日本を含めて7か国53拠点を利用できる(2019年3月20日時点、開始時期は施設によって異なる)。

海外でも6か国7拠点を用意。順次拡大していく

3月19日、本会員の登録開始を前に事業説明会を開催。Makuakeでの出資者や全国の拠点関係者など約100名が一堂に会し、会場は熱気に包まれた。

運営会社KabuK Style(カブクスタイル)代表取締役の砂田憲治氏は、外資系証券会社の第一線で活躍してきた人物。数々の企業を見る中で培った市場への確かな視点から、HafHのターゲットとなる関連市場を国内で100兆円、世界では3,000兆円規模だと話す。

HafHには投資家も熱視線を送る。説明会では、KabuK Styleへ出資したベンチャーキャピタルiSGSの代表2名が登壇、代表の砂田氏を交えたトークセッションが行われた。投資家はCo-Livingという市場、HafHというサービスを、どう捉えているのだろうか。

投資家視点で見るCo-Living市場

【ゲストプロフィール】
iSGS代表取締役/代表パートナー 五嶋一人
銀行、ソフトバンク・ファイナンスを経て、2006年ディー・エヌー・エー入社。投資およびM&A責任者として横浜DeNAベイスターズなど多数の投資、買収を主導。2014年コロプラ入社後引き続きベンチャー投資およびM&Aに従事、2016年6月より現職。

同 取締役/代表パートナー 菅原敬
アーサー・D・リトル(ジャパン)で戦略コンサルタントに従事する傍ら、創業時からアイスタイルに参画、2004年より常務取締役に。CTOや複数子会社の代表取締役を経て、現在は取締役兼CFOを務める。2016年6月より現職。

左:菅原氏/右:五嶋氏

砂田 まず、HafHのどこに競争優位性があると思い投資されたのですか? 私も聞いてみたくて。本当にいいんですかと(笑)。

菅原 私は砂田さんが前職のとき一緒に仕事をしていて。私が知る外資証券マンの中で一番くらい、ハードワーキングで優秀な人間でした。最初に投資の相談を受けたとき、「会社辞めるから転職させてもらえないか」みたいな話かと思っていたら、「実は起業するんです」って(笑)。砂田さんが本気でプライベートも投げ売って取り組んでいると聞いていたので、五嶋に案件を伝えました。

五嶋 そうでしたね。僕らはベンチャーキャピタルなのでベンチャー企業に投資をするのですが、前提として、やはり対象のマーケットを見ます。マーケットが伸びるなら、ただ仕事をするだけで会社も一緒に成長してくれるので。

Co-WorkingやCo-Livingのマーケットを見ると、まず物件確保の面で、人口減少からクリアできるだろうというところが一つ。加えてライフスタイルの変化ですね。ミレニアル世代といわれる「持たざる世代」の人たちがこれから増えていく。たとえば日本の20〜30代だけでも1,100万人くらいの見込みがあって、その中の1%でも11万人。十分ですよね。

それだけではなく、やはりLCCで飛行機代が安くなった、モノを預けられるサービスが充実したなど、さまざまな「社会のパーツ」が揃ってきたこともあります。なので、2年くらい前にHafHのビジネスアイデアを聞いても投資しなかったかもしれません。

ピースが揃ってきたこのタイミングで、長崎のSAIの構想を聞いたときに、シンプルに「住んでいることを自慢したくなる施設だな」と思ったんです。

ほかの施設、特に都心のシェアハウスだと節約したいからという声が多い。それは決して友達に自慢できる物件ではない気がするのですが、HafHはおそらく、「ここすごくない?」「遊びに来てよ」って自慢したくなるような物件を一つひとつ丹念に作っていくだろうという期待があります。そういったものが最終的には競争力になって、勝ち抜いてくれるんじゃないかなと。

菅原 その「イケてる」みたいなものがすごく大事で。なぜかというと、日本のCo-WorkingやCo-Livingは、芽は出ているけど社会のメインストリームにはなっていません。事業を拡大する勝負どころに「いま無いものを創造する」という要素が多く入って来ていて、勝つためには、いかに先端ケーススタディを作るかが非常に大事。類似サービスが出てきた中でも、憧れを生むような世界観を作れるのは、KabuK Styleではないかと思っています。

もう一つ、マーケット創造で勝負を決めるのは資本の力です。HafHは一番最初から資金計画がものすごいことになっていて、おそらくほかの会社の資本拡大戦略だと追いつかない。砂田さんが資金を集める仕事をしていたから実現できたことで、一般的な若い起業家にはできないでしょう。そこでも大人の本気を見たので、我々は投資しました。

五嶋 これから競合もたくさん出てくると思うのですが、これは、大歓迎。かつてNOVAという英会話学校がたくさんのテレビCMを打っていました。何が起きたかというと、ほかの英会話学校の売上が伸びたんです。で、トラブルでNOVAがCMをやめたところ、ほかの英会話学校も売上がどかっと落ちてしまった。これは、CMを見た人が、NOVAではなく「英会話学校に行こう」と想起したからなんです。一つのサービスが産業全体に影響した事例です。

(Co-Livingサービスの場合)まずは、「こういった生活スタイルがある」ということを一人でも多くの人に知ってもらうことがすごく大事。たとえば合コンで「変わった暮らし方してる人いたんだよ、ちょっとすごくない?」とか、「電車で隣に座ってる人たちがこんな話をしていた」とか、身近なところで接した瞬間にどっと広がると思うんですね。そんな形を1日でも早く作るために、競合ウェルカムですよ。

だって、ユーザーになり得る人たちは少なくとも1,000万人、普通に考えれば3,000万人くらいいる(※)わけで、その中の1%や2%なんてくれてやれ、って話なんです。そういったところが投資家から見たら魅力的ですね。

砂田 ありがとうございます、持ち上げていただいて(笑)。菅原さん、グローバル展開中のサービスでCFOをされている視点から見て、HafHってどうでしょうか。

菅原 海外の方が環境的には追い風なんじゃないですかね。私もここ3〜4年ほど、年の3分の1くらいは海外だったんですけど、たとえばサンフランシスコでは、コワーキングスペースにアパートがくっついているようなスペースをAirbnbで借ります。

Wi-Fiは飛んでいるし、カンファレンスルームもあるし、地下の駐車場にUberが来てくれるし、シェアリングカーを使えばそのまま日帰り出張もできてしまうので超便利。こういう世界観って海外の方が先行していると思って。HafHはもう海外に手を打ってらっしゃいますけど、どんどん展開してもらいたいです。

砂田 日本から、グローバルに活躍できるベンチャー企業はなかなか出ないですよね。そのあたり、我々に期待していることをコメントいただけますか。

五嶋 海外で成功できるかどうかは、最初から海外を目指してサービスを作っているかどうかだと思うんですよね。売上がなく資金も足りない中で続けられるのは、起業時の思いやサービス設計が海外を向いているからだとしておけば、やめられなくなるので(笑)。

HafHの大きな魅力は海外にも拠点があるところだと思います。そもそもの成り立ちが不動産事業とは根本的に違うと思っていて、そこが面白みだと感じているので、本当に何としても成し遂げていただきたいと期待しています。

※国勢調査による人口を基礎とした10月1日時点の推計人口(平成29年)では、20〜39歳の推計人口は約2,750万人

2019年はCo-Living元年になるか

Co-Living(コリビング)は、テクノロジーの進化で暮らしが変わり、働き方が変わり、価値観が変わりつつある今だからこそ、着実に支持を集めているのだろう。家を完全に手放す「アドレスホッピング(アドレスホッパー)」という暮らしも取り上げられ始めた。

Co-Livingには地方自治体も注目している。移住、定住者はもちろん、その土地を何度も訪れるファンが増えれば、“ゆるく”つながりを持つ「関係人口」の増加も期待できる。実際、KabuK Styleにも声がかかっているという。

「家も仕事も一つだけ」という概念が外れた日本社会はどうなるのだろうか。砂田氏は、プレゼンの最後をこう締めくくった。

「5年かかるか10年かかるかわからないけれど、絶対やり遂げたいと思っています。好きなところに住んで働けるようになると、人は何を感じるようになるのか。どんな社会になるのか見てみたくないですか。みんながこれじゃなくていいんです。でも、こういう価値観があるという多様性を体現できるサービスにしたいんです。」