「Apple TV+」で動画配信市場に参入、アップルのしたたかな戦略 - Netflix、アマゾン、ディズニーと何を武器に戦うのか

アップルは「Apple TV+」で定額制の動画配信サービスに参入することを発表した。NetflixやHulu、Amazon Primeといった競合サービスのひしめく市場だ。またフォックスとHuluのコンテンツを手に入れたディズニーも、ストリーミングサービスで消費者の可処分時間を奪おうとしている。Apple TV+は何を武器に戦うのだろうか。

「Apple TV+」で動画配信市場に参入、アップルのしたたかな戦略 - Netflix、アマゾン、ディズニーと何を武器に戦うのか

映像コンテンツの楽しみ方は多様化

娯楽の選択肢が増えたとはいえ、家庭で手軽に楽しめるテレビの人気は今も高い。特に最近は、テレビでも映画に引けを取らない本格ドラマが見られるし、地上波だけでなく衛星放送、ケーブルテレビ(CATV)、ネット配信など動画の視聴手段は多彩だ。

たとえば、調査会社のNPDグループが実施した調査によると、米国消費者はさまざまな娯楽のなかで映像視聴にもっとも多くの時間を割いていた。具体的には、娯楽に費やせる時間の27%がテレビ番組や映画などの映像コンテンツ消費に使われ、音楽(19%)とゲーム(16%)を上回った。残る38%には、読書やSNSが含まれる。

映像コンテンツを見る方法は、テレビ放送/録画済みテレビ番組/有料オンデマンド放送が48%で最多。これに、NetflixやHulu、Amazon Primeのようなインターネット経由でストリーミング配信されるオンデマンド動画サービス(SVOD)が22%で続く。そのほかに利用されている視聴方法は、DVDやブルーレイといったディスクメディアの12%、無料ストリーミングサービスの8%、映画館の4%、購入型サービスおよびオンデマンドサービス(EST/VOD)の4%という状況だった。

出典:NPDグループ / Watching Movies and TV Topped US Entertainment Options in 2018, The NPD Group Says

映像サブスク「Apple TV+」今秋開始

多様化が進む映像コンテンツの楽しみ方だが、アップルも映像作品を定額で配信するサブスクリプション型サービス「Apple TV+」の2019年秋開始を発表した。Apple TVと動画ストリーミングを組み合わせたサービスだ。

アップルの動画サブスクリプションサービス提供は予想されていたが、サービスの内容や提供方法をみると、アップルの本気度が伺える。

出典:アップル / Apple TV+

スピルバーグら大物揃えオリジナル作品配信

Apple TV+のポイントは2つ。1つ目はサブスクリプション型であり、コンテンツが広告なしで見放題になること。

2つ目は、ほかのサービスで提供されないアップル独自の作品が用意されること。つまり、Apple TV+を契約しないと見られないオリジナル作品を武器にする。制作陣には、オプラ・ウィンフリー、スティーヴン・スピルバーグ、ジェニファー・アニストン、リース・ウィザースプーンなど大物を揃えた。

視聴には、iPhoneやiPad、Apple TV、Macといったアップル製ハードウェアのほか、家電メーカーが販売している各種スマートテレビやセットトップボックス(STB)にインストールできる「Apple TVアプリケーション」を使う。好きなときに好きな作品をオンデマンドで見られるし、動画をダウンロードしておけばインターネット接続できないオフライン環境でも視聴できる。

出典:アップル / Apple、Apple TV+を発表 - 世界で最もクリエイティブな才能たちが集う場所

アプリで他社動画も管理できる機能

強敵がひしめく動画サブスクリプション市場へのアップル参入は、それ自体が大きなニュースである。ただし、アップルの本気度が強く反映されているのは、Apple TV+よりも視聴用アプリのApple TVアプリケーションだ。

Apple TVアプリケーションの肝は「Apple TVチャンネル」という機能にある。多種多様なテレビ番組、映画、スポーツ、ニュースなどの映像コンテンツを管理するアプリであり、ユーザーはApple TVチャンネルに見たい「チャンネル」を登録して動画を視聴する。Apple TV+も、Apple TVアプリケーションのチャンネルに登録したうえで見る。チャンネルには、アップルが「iTunes Store」で提供してきた映画やテレビ番組も登録できる。

驚くのは、アップル以外の動画サービスもチャンネルに登録しておける点だ。さらに、HuluやAmazon Primeのような人気サブスクリプションサービスも含め、多くのCATVや衛星放送などから動画作品を購入、レンタルして楽しめる。

Apple TVアプリケーションを使えば、アップルの一貫性があるUIでApple TV+にとどまらず、膨大な映像作品にアクセスできてしまう。

Disney+はフォックスやHulu作品をカバー

映像コンテンツの視聴手段としては、先ほど紹介したNPDの調査で22%にとどまっているSVODサービスだが、Netflix、Hulu、Amazon Primeなどの人気は高く、テレビ放送を上回るのも時間の問題だろう。そんな競合サービスが多数存在する厳しい市場へ飛び込むアップルは、魅力的な独自コンテンツと、動画サービスを多数束ねるApple TVアプリケーションのカバレージで、食い込む作戦をとった。

同市場には新たなライバルも登場する。エンターテインメント界の巨人、ウォルト・ディズニーが、VODサービス「Disney+」を開始するのだ。ディズニーは自社コンテンツの強さを最大限いかすため、Netflixと結んでいる動画配信サービス契約を見直し、Netflixへの新作提供を打ち切るとした。

しかも、ディズニーは21世紀フォックスの映画やテレビ、CATV関連事業を買収し、膨大なコンテンツを手に入れた。もともと強力なディズニーの伝統的コンテンツだけでなく、「スター・ウォーズ」「ピクサー」「マーベル」「ナショナル・ジオグラフィック」など、幅広い分野をカバーできることなる。それどころか、この買収でディズニーはHuluの経営権まで取得する。

出典:ディズニー / Disney’s Acquisition of 21st Century Fox Will Bring an Unprecedented Collection of Content and Talent to Consumers Around the World

ただでさえ激しい競争の繰り広げられる市場の覇権争いに、アップルとディズニーまで加わった。

「見たい作品」の充実が成功のカギを握る

1人の消費者が娯楽に使える可処分時間は、当然限りがある。その一部である動画視聴時間というパイを、Apple TV+とDisney+は、先行するNetflixやAmazon Primeなどと奪い合うわけだ。

動画サービスは、料金が安く使い勝手が優れているだけでは選ばれない。見たくなる作品が提供されるかどうかが、極めて重要な選択条件となる。NetflixとAmazon Primeは以前から独自作品の制作に力を入れてきたし、新サービスのApple TV+とDisney+もその点を理解している。

映画やドラマ好きにとっては、眠る時間がとれないほど楽しい時代になりそうだ。

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