FABRIC TOKYO 森雄一郎「徹夜で仕事、貯金ゼロ、借金。それでも支えてくれた母へ」【母の日連載】

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記事の情報は2019-05-12時点のものです。

5月12日(日)は母の日。普段言えない感謝を伝える日として、浸透しています。そこでBeyondでは、起業家や業界をリードする方、ユニークなキャリアをお持ちの6人に依頼し、お母さまへのお手紙を綴っていただきました。育ってきた環境や母とのエピソードは、今の自分の生き方にどのような影響を与えたのか。原体験を前向きに受け入れながら、今をイキイキと生きる6人の物語。連載最終日は、FABRICTOKYO代表の森雄一郎さんです。
FABRIC TOKYO 森雄一郎「徹夜で仕事、貯金ゼロ、借金。それでも支えてくれた母へ」【母の日連載】
手紙を書いた人:森雄一郎FABRIC TOKYO代表取締役社長。1986年生まれ、岡山県出身。大学在学中に国内外コレクションのメディアを立ち上げ、卒業後はファッションプロデュース企業に就職。大手アパレル企業や海外ブランドのコンサルティング・プロデュースに従事。その後、不動産ベンチャー、フリマアプリ「メルカリ」の創業期に参画し、事業開発に携わる。2012年、株式会社FABRIC TOKYO(旧ライフスタイルデザイン)を創業。自身が洋服のサイズで困っていた経験から、2014年2月にカスタムオーダーのファッションレーベル「FABRIC TOKYO(旧LaFabric)」をリリース。(オーダースーツは37,000円〜) 【FABRIC TOKYO公式サイト】

オーダーメイドを身近な存在にしたい

今話題のビジネスモデル「DtoC」で急成長するファッションブランドがある。ビジネススーツやシャツのカスタムオーダーサービスを提供する、FABRIC TOKYOだ。

代表の森雄一郎さんがこのサービスをはじめたきっかけは、自身の体形のコンプレックスだった。森さんは腕が長く、既製品のサイズが合わないことがほとんど。洋服選びには苦労したという。

「はじめてオーダーメイドの洋服を着たときは、感動しました。自分と同じような悩みを持っている人に、もっと気軽にオーダーメイドをしてもらえたら、課題を解決できるのではないかと考えたんです。」

FABRICTOKYO銀座店での採寸の様子

誰もが一度は憧れるオーダーメイドスーツを、ITを活用し身近な存在へ。使命のために走り続けてきた森さんだが、これまでのすべてが順風満帆というわけではなかったようだ。

いつも迷惑をかけてばかりだったというお母さまへ、手紙を綴っていただいた。

母さんへ

大学にもろくに行かず、就職活動もしなかった

変わらず元気にしていますか?
ぼくが東京に上京して、丸10年になりました。

10年前のことを思い返してみると、ぼくは本当にわがままで(今も変わっていないかもしれないけど)心配ばかりかけていたなって思います。

大学まで行かせてもらったのにろくに学校にも行かず、趣味やバイトばかりしたり、海外をふらふらしていたり。

しまいには就職活動もせずに「上京する」と言ってくる息子は、なかなかいないよね。笑

でも上京する当日は、不安そうな顔をしながらも笑顔で温かく見送ってくれて、いまの今まで孤独を感じることは本当に無く、いつも救われていました。

もしかしたら何を言っても聞く耳を持たないから、諦めてたのかもしれないけど。笑

25歳で起業、貯金ゼロ、母からの借金

この10年はぼくにとって激動の期間でした。

夢であり目標でもあったファッション演出家になる道を歩むのを止め、ベンチャー企業を興すことを一念発起し、会社を創業したのが25歳のとき。

銀行口座の中身はほとんどゼロでした。

いろいろ事業を試すもなかなかうまく行かず、岡山の実家に泣きついたこともあったね。深夜はおろか早朝までパソコンの前に座って作業していて、朝起きてきた母さんを何度も驚かせてしまいました。

迷惑ばかりかけていたし、ぜんぜん軌道に乗らない情けないぼくの姿を見ていたのに、FABRIC TOKYOを始めたときはすごく応援してくれて、お金も貸してくれたり。本当に頭が上がりません。(無事に全部返すことができてよかった!)

これまでの10年間、知らない東京という土地でもなんとかやってこれたのは、いつもエネルギッシュでタフな母さんに産んでもらい、育てられたからだと思っています。

風邪を引いたのは10年間で1回だけで、病気知らずの丈夫な身体に産んでくれたことにとても感謝しています。

自分の人生という旅を、とことん楽しみたい

最近、ぼくは母さんと父さんが仲良く海外旅行に出かけるのを見るのがとても大好きです。

父さんが定年退職するまで、二人はろくに海外にも行ったことがなかったのに、今ではすっかり熟練の旅人になっていて。

そんな、人生を楽しもうとする両親の姿勢を、ぼくはとても誇らしく思っています。また久々に家族で揃って旅行に行きたいね。

健康であることに何よりも感謝して、お互い人生をどんどん楽しいものにしていきましょう。
ぼくも自分の人生という旅を、今後もとことん楽しみたいと思います。

これからも、元気で。そしてよろしく。

2019年4月27日 旅先の中国にて
息子 森 雄一郎より

(企画・編集/安住久美子)